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企業ICT導入事例

ICT導入事例 -有限会社瑞穂-

プロモーション

公開日:2016/07/26

世界的ブランド「熊野筆」メーカーのサバイバル、ICT活用による経営革新と市場開拓の戦略

世界のメイクアップアーティストに愛用されている「熊野筆」※1ですが、経営環境は厳しさを増す一方。その状況下、生き残りの道をICT活用に賭けた有限会社瑞穂は、経営数値の「見える化」を実現して経営基盤を固めるとともに、海外市場開拓や自社ブランド開発も進めています。

日本を代表する伝統工芸品ブランド しかし、現実の経営環境は厳しい

▲専務取締役 事業統括部長・丸山 長宏氏

広島市の南東隣、四方を山で囲まれた盆地にある熊野町は「筆の町」。約180年前から始まった筆の生産・販売は町の基幹産業であり、書道、絵画、化粧などに使われる筆は国内最大の生産量を誇ります。「熊野筆」の名は、ハリウッドのメイクアップアーティストが愛用していることや、2011年に女子サッカー日本代表「なでしこジャパン」に国民栄誉賞の副賞として贈られたことで広く知られるようになりました。今や、日本を代表する伝統工芸品のブランドです。しかし、町内に約100社あるという筆作り事業所の一つ、有限会社瑞穂の専務取締役・丸山氏は、「経営環境はめまぐるしく変わり、その対応力が肝要」と語ります。同社は丸山氏の義父にあたる尺田 泰吏社長が1980年に会社設立し、従業員34名、売上高3.7億円の業界中堅企業です。

「筆は用途に応じて毛質を選び、熟練した職人技で、数多くの工程を経て作る伝統工芸品ですから、手間もかかり、生産力には限界があります。そこに中国などから廉価品が入ってくるようになり、業者間の競争が激しくなっています。化粧筆でいえば、これまでは国内大手化粧品メーカー向けのOEM生産の比重が大きかったのですが、粗利率は低い。それに依存していたら生き残れません。といってあれこれ手を出したら動きが取れなくなる。限られた生産力をどのように振り分けるかが問われるようになったのです」(丸山氏)

この危機感と問題意識から、ICTを活用した同社の改革がスタートしました。

経営数値の「見える化」を進めて次世代に確固とした経営基盤を渡す

▲熟練の技術に裏づけられた手作りの熊野化粧筆

まず動き出したのは尺田社長でした。2011年に地元中小企業の交流会で知り合ったITコーディネータの慶徳 晴司氏に、「次世代にそろそろ経営をバトンタッチしたいが、しっかりした経営基盤にして渡したい」と打ち明けたのです。そのためには、生産と在庫の管理など経営数値の把握が不可欠でした。慶徳氏は、ICTの活用で経営数値を「見える化」することを提案し、丸山氏など若手役員らを含めた「IT経営導入プロジェクト」が立ち上がりました。生産現場の整理・整頓といった改善と、事業ごとの利益率の洗い出し、進捗度の把握といった、簡単で基本的なことから始めたプロジェクトは、すぐに結果が出ました。感覚的に行いがちだった生産管理業務や経営数値が「見える」ようになり、現場がそれを共有してすぐに対応できるようになったのです。

このプロジェクトは翌2012年からICTツール導入により本格化しました。生産管理ツール導入で、納期に対する進捗を3段階の優先度に分けて生産計画の最適化を図るようにし、さらに2013年からは「経営ナビシステム」導入によって、OEMや自社ブランドなど事業・顧客ごとの利益率が見えるようになり、利益目標達成への的確な判断が可能になったのです。この成果として、若手役員が継承する事業基盤が確固としたものになっただけでなく、ICT導入過程で現場の社員とも議論を重ねたことが、仕事への参加意識を向上させたのです。これらの取り組みにより、同社は中小企業IT経営力大賞2014で全国商工会連合会会長賞を受賞しました。

新世代経営陣は、海外と新・自社ブランドの販路開拓に注力

  • ▲伝統技術と高いデザイン性が融合した自社ブランド「SHAQUDA」


  • ▲口金を使わないメイク用ブラッシュ「UBU」

  • ▲繊細な穂先のスキンケア用ブラッシュ「SUVÉ」

その後も、表計算ソフト(マイツール)を導入し、生産・売上など直近データの集計や検索も行えるようにして、常に経営状態を把握するなど、同社のICT活用は今も続いています。また「良いと思ったことはどんどん挑戦しなさい」と尺田社長に励まされた丸山氏ら新世代の経営陣は、マーケティング戦略と新ブランドの販促にも力を入れました。そこには社員たちのアイデアや意見も活かされました。

それをまとめたのが2015年から開始した5カ年計画「Mizuhoビジョン2020」であり、その内容は「2020年までに売上高を5億円に、うち海外比率を26%以上に」というものです。

「いろいろなチャンスを捉えては、見本市への出展やフィジビリティ・スタディ※2を重ね、海外市場の開拓と自社ブランドの販促に注力しています」(丸山氏)

この努力も実り始めており、2008年に立ち上げた海外事業と自社ブランド事業は当初の0から直近では各々2割強の事業シェアに成長しています。後者においては、2015年11月から立ち上げた新自社ブランド「SHAQUDA(シャクダ)」がけん引役を果たしています。

「このシリーズは、メイク用とスキンケア用の2ラインからなるもので、その軸や持ち手に金属を使わず、全体がウォールナット材で作られていることが特長です。ドイツの『レッドドット・デザイン賞プロダクトデザイン2016』を受賞するなど、国内、海外から好評を得ています」(丸山氏)

問題点を見つけることで始まった改革、その挑戦に学ぶことは多い

  • ▲上質なデザインが目を引く、「SHAQUDA」ブランドの公式サイト http://shaquda.jp/

  • ▲「UBU」シリーズが「レッドドット・デザイン賞」を受賞

筆作りだけでなく経営まで、経験と勘に頼る職人的体質に限界を見出したことが、同社における経営改革の出発点でした。ICTを活用して、限られた生産力を合理的、効率的に割り振ることができるようになりました。しかし、改革への挑戦を終えたわけではありません。尺田社長は、「ICTにできることをさらに追求して、企業を成長させる発想で」と若手経営陣を励まし、彼らは、自社ブランドの価値を高め、海外市場開拓も進めることで、ビジョンに掲げた目標を達成すべく全力をあげています。同社の社員たちも、職場改善を徹底したことで自分の作業が経営数値とどう関係するかを明示的に理解できることが、仕事のやりがい、参加意識の向上につながっています。

同社のこの挑戦と成果は、世界に冠たる伝統技術を持ちながら、後継者不足や市場縮小などに悩む全国の伝統的工芸品産業や企業や自治体にも、ヒントと勇気を与えてくれます。

※1 熊野筆:2004年12月、熊野筆事業協同組合として「熊野筆」の団体商標を取得。
※2 フィジビリティ・スタディ(feasibility study):プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討すること。

会社名 有限会社瑞穂
設立 1980年(昭和55年)12月23日
所在地 広島県安芸郡熊野町萩原2-7-35
代表取締役 尺田 泰吏
資本金 1,000万円
事業内容 化粧筆・洗顔筆・ネイルデザイン用筆・画筆などの生産・販売
URL http://www.mizuho-brush.com/

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