企業ICT導入事例

-株式会社西村金属-
めがねフレーム作りで培った技術力を基に、ICT活用でチタン超微細加工の大きな市場を開拓

衰退する地場産業を再生するには、自分たちの経験と技術を活かせる新市場を開拓するしかない。そのツールにICTを活用し、成功した企業が北陸の地にあります。

【導入の狙い】ウェブマーケティングを通じた新規顧客の開拓、受注の拡大
【導入の効果】従来の受注分野にとどまらない顧客の増大、業務分野の拡大

「めがねの町 鯖江」が「チタン加工の町」に生まれ変わる

▲代表取締役社長・西村 憲治氏

福井県北部の山間の盆地にある人口約6万9,000人の町・鯖江は、戦前からめがねフレームの生産で栄え、最盛期には国内シェアの9割を占めていました。しかし新興国に押されて年々衰退し、現在の産業規模は往時の半分ほどになっています。そんな環境の中、厳しいサバイバルに挑戦している企業があります。

1968年創業で、めがねの小ねじや丁番を作ってきた株式会社西村金属は、「脱めがね、チタン加工特化」を図り、現在ではめがね部品以外が売上の6割を占めるようになりました。それも企業、医療機関、大学、研究所などから発注されるチタンやステンレスの超微細加工部品で、毎月約200件もの受注があり、特に2003年に同社がホームページを開設してからは360社を超える新規顧客を獲得しているのです。

「もう“めがねの部品屋”ではなく、チタンやステンレスなどの精密微細部品加工屋である、という考え方に徹しています」(西村氏)

鯖江全体の再生と活性化にこの発想転換が必要だと考えた西村氏は、同市内でチタン加工ができる同業7社とともに、2010年から「チタンクリエーター福井」という協業型の組織も立ち上げています。

「チタン」の持つ可能性こそ自分たちの将来性

鉄や銅などと比べて実用金属としての歴史が半世紀に過ぎないチタンは、軽量で、強度が高く、磁界に影響されない非磁性金属で、耐食性、耐熱性も高いといった特長を持っています。航空・宇宙産業、化学プラント、真空装置、医療部品、装飾産業など、用途は多様化。世界中がその可能性、将来性に注目している一方で、工具への負荷が大きく、たわみやすく、切り粉が燃えやすいなど、加工上のデメリットもあります。鯖江には、チタン加工の難しさを克服し、世界で初めてめがねフレームに実用化した歴史があります。特に同社は、その微細加工に20年の経験を持つ草分け企業。先代社長(現会長の西村 忠憲氏)時代からチタンの可能性に注目し、技術を磨いてきました。ホームページに“チタン加工の駆け込み寺”とあるのも、その自信の表れと言えます。

現場の試行錯誤を重ねてこそICTが使いこなせる

▲若い技術者を育てながら、自らの技術力も磨き続けています

同社が、潜在力の大きなチタン加工ニーズと出会えたきっかけは、2003年に開設したホームページでした。

「ホームページは、弟(現、株式会社西村プレシジョン社長の西村 昭宏氏)が、自分で勉強して作りました。すべて試行錯誤で、SEO対策※1さえできていませんでした。現在は、『チタン加工』に関連する言葉で検索すると、ほとんどの場合、当社名がトップページに掲載されるようになり、毎月100件以上の相談もここからきます」(西村氏)

そう語る西村氏もエンジニア気質で、多くの製造機械や測定器などを使いこなすだけでなく、ICT全般にわたって活用の勘どころを熟知しており、同社のICT環境を年々進化させてきました。2006年からパソコンで工程管理や進捗管理を実現、ウェブマーケティングシステムを稼働、2011年からは製造現場の図面管理システムも組み込みました。

「現在は、NTTのVPN※2を導入し、クラウドサービスにも移行させ、“(ハード資源を)持たない経営”を進めています。またホームページだけでなくFacebookなどのSNSも使っています」(西村氏)

モノ作りとICTを結びつけたこれらの実績から、経済産業省の「中小企業IT経営力大賞」のほか、権威ある賞を多数受けています。

「ICTというツールを使いこなすには、リアル(現実の経営・製造現場)でのいろいろな失敗や成功が必要です。問い合わせ対応ができ、信頼してもらい、製品で結果を出せることが大切なのですから」(西村氏)

画期的なデザインを生み出す「やってみよっさ」のチャレンジ精神

西村氏のみならず、一家そろってチャレンジ精神旺盛であることを示すものに、2003年の「ペーパーグラス」の開発があります。畳むと厚みがわずか2ミリという老眼鏡で、おしゃれなケースも添えられています。この画期的なデザインは、会長の忠憲氏がフレームとレンズをつなぐ構造を考え、社長の憲治氏がしなやかなカーブのステンレスフレームを作り、全体のプロモーションは西村プレシジョンの昭宏氏が行うという、一家での役割分担から実現しました。また、研磨技術を活用して開発した100%チタン製の「逆さコマ」も、「ペーパーグラス」とともにメディアで取り上げられました。

「会長はよく『知ったかするな』(福井弁で『知ったふりするな』)と言いますが、私も、何でも『やってみよっさ』(同、『やってみようか』)の精神で、若い人と一緒に現場で経験することが好きなのです」(西村氏)

西村氏のチャレンジ精神に、「チタン加工の町」として生まれ変わっていく、「めがねの町 鯖江」の未来像が見えました。

  • ▲数々のアウォードを受賞し、高い
    評価を受ける「ペーパーグラス」

  • ▲デザインも多様で、ギフトとして
    人気の高いチタン製「逆さコマ」

※1 SEO(Search Engine Optimization)対策:検索エンジンで、特定キーワードで検索した際に上位表示される対策。
※2 VPN(Virtual Private Network):公衆回線を利用して構築された仮想的な組織内ネットワーク。簡単かつ低コストで導入できる。

会社名 株式会社西村金属
設立 1968年(昭和43年)4月
所在地 福井県鯖江市丸山町3-5-18
代表取締役社長 西村 憲治
資本金 1,500万円
事業内容 眼鏡部品製造販売、その他精密部品加工
URL http://www.nsmr.jp/

関連記事

入会のご案内

電話応対教育とICT活用推進による、
社内の人材育成や生産性の向上に貢献致します。

ご入会のお申込みはこちら