企業ICT導入事例

-一心堂本舗株式会社-
「歌舞伎フェイスパック」、中国のネット口コミで評判に、国境を越え日本から中国ECサイトに出店

歌舞伎の隈取りをプリントした「歌舞伎フェイスパック」で爆発的なヒットを飛ばした一心堂本舗株式会社。中国のECサイトへ越境し、日本品質をアピールしながら消費者の「心」を掴もうとしています。

誘いを受けて歌舞伎座に出店 歌舞伎にちなんだ商品を探した

▲代表取締役・戸村 憲人氏

一心堂本舗株式会社は、2011年9月、調剤薬局への食品販売を目的として設立されました。江戸時代に生まれた健康づくりの知恵である「養生」を基本コンセプトとする菓子などを販売しているうちに、リニューアルした東京・銀座の歌舞伎座から出店の誘いがあり、2013年4月、歌舞伎座地下に店を開きました。戸村氏は、これを機に歌舞伎の世界に魅せられ、関連商品の開発に熱を入れていきます。

「歌舞伎にちなんだ当社ならではの商品を開発したいと考え、調査を進めていく中で、隈取り型のフェイスパックに出会ったのです」(戸村氏)

それはデザイナーの小島 梢氏が考案した「JAPANESE FACE 歌舞伎フェイスパック」でした。歌舞伎の隈取りをプリントした美容用のフェイスパックです。戸村氏はさっそく小島氏に商品化を提案しました。

わずか半年で商品化するも店舗に置けずインターネットで販売

▲歌舞伎の人気演目である「暫く」「船弁慶」などから、本格的な隈取りを再現

商品化に取りかかったものの、フェイスパックを製造する専門メーカーからは断られ続けました。図柄のあるフェイスパック作りは、予想以上に高度な技術が要求されたのです。

「最大のネックは、隈取りの印刷インクが美容液に溶けるという問題でした。専門メーカーほど、“そんな非常識な商品”という反応でした。調査の末、フェイスパックは手がけたことはないが、この問題を解決できる技術を持った会社をようやく見つけ出しました」(戸村氏)

安全性など品質管理も万全に整え、半年程で「歌舞伎フェイスパック」の発売にこぎ着けました。商品パッケージの内側に、日本語と英語で歌舞伎と隈取りの由来についての解説を記載し、歌舞伎のみやげ物としての価値を付加。さらに歌舞伎俳優市川 染五郎氏の監修を得て、発売2週間前にはプレスリリースも配信し、万全の態勢で臨みました。

しかし、想定していた売り場から拒否されるというアクシデントに遭います。問屋や小売店への新たな販路を急遽開くことは困難です。窮余の策として、自社で通販サイトを立ち上げました。とはいえ「インターネットだけで売るのは難しいだろう」と考えていましたが、結果、4,500個の在庫を2日で売り切ってしまったのです。大々的な広告を打ったわけではありません。プレリリースによるマスコミ報道で「歌舞伎フェイスパック」を知った人たちや口コミ客たちが、商品のユニークさに引き寄せられた結果でした。戸村氏はインターネットの力を痛感したと言います。

中国の人気女優の投稿写真が評判に 一方で模造品も大量に発生

歌舞伎フェイスパックの発売は、2013年12月。動物やアニメ、映画、演劇のキャラクターなど、次々に新作の図柄シリーズを発表。自社通販サイト、歌舞伎座などの演舞場、東急ハンズ全店と販路を広げ、2014年8月には羽田空港国際線に店舗を開設しました。

この間、中国最大のSNS微博(ウェイボー)で、中国の女優などが同社のフェイスパックを自らの顔に装着した写真を次々に投稿して大きな話題となりました。それを見た人たちが、次々と「歌舞伎フェイスパック」顔の投稿を始めました。

「こちらが仕かけたわけではなく、自然発生的に広まりました。発売から1年後に中国人のお客さまがユーザーの7割に達したこともあります」(戸村氏)

インターネットで注目される「自撮り写真」を投稿したい人のニーズに、「歌舞伎フェイスパック」が合致したわけです。加えて「爆買い」に象徴される日本製品への人気が背景にあります。中国を中心に、「歌舞伎フェイスパック」が日本製のおしゃれな商品としてだけでなく、日本での観光みやげの一つとして認知され始めました。

しかし同時に、問題も発生しました。類似の模造品が大量に出回るようになったのです。模造品は、同社が苦労して開発したインクの定着や安全性の面での品質が劣る場合がほとんどです。ブランド価値を守り、本家本元の品質をアピールするために、中国でのインターネット通販に進出することを決めました。中国最大級のIT企業アリババが運営する天猫国際(Tmall Global)への出店です。

中国ではチャット対応が必須 夢は、日本を代表する観光みやげ

▲外国人向けのみやげ物店として羽田空港国際線旅客ターミナルビルの江戸小路に出店。歌舞伎フェイスパックや和菓子を販売しています

日本企業からの出店数には制限があると言われている天猫国際の厳しい審査をクリアして出店できたのは、2015年6月のこと。

「本家本元の品質を訴求したこと、一定の需要が見込まれたことなどが評価されたのではないかと思います」(戸村氏)

現在、同社は中国の消費者の心を掴むための試行錯誤を続けています。例えば、中国のインターネット通販利用者が好むのがチャット。リアルタイムのテキストメッセージのやり取りをした後に、購入に至る消費者が多いのです。商品情報の問い合わせはもちろんですが、ショッピングサイトの担当者と他愛のない会話を楽しみ、時には値引き交渉も行います。その対応如何によって店の評価が一変し、瞬時にユーザー間に拡散されます。

「アリババジャパンのサポートもあります。彼らは当然中国の消費者の機微を熟知しており、学ぶところがあります。もちろん当社としても、サイト上のやり取りをモニタリングしています。中国語に堪能な日本人スタッフを採用し、微博を使って情報を発信するなど、顧客への情報発信も積極的に行っています」(戸村氏)

同社では、この中国での人気を確固としたものにしたいと考えています。主に中国向けに、京劇をイメージしたフェイスパックも発売しました。

「売り上げも重要ですが、中国のお客さまが何を求めているのかマーケティングを繰り返しながら、今後も海外でのインターネット通販に取り組んでいこうと思っています」(戸村氏)

戸村氏の夢はさらに広がります。

「これからもさまざまなデザインのフェイスパックを作り続けたい。歌舞伎フェイスパックシリーズを日本の代表的な観光みやげに育てたいと考えています」(戸村氏)

伝統芸能と美容商品の予想外の組み合わせから生まれた「歌舞伎フェイスパック」。さらなる展開が楽しみです。

会社名 一心堂本舗株式会社
創業 2011年(平成23年)9月
所在地 東京都千代田区麹町2-3-3 FDC麹町ビル7F
代表取締役 戸村 憲人
資本金 800万円
事業内容 食品・化粧品などの開発・販売
URL http://www.isshin-do.co.jp/

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