企業ICT導入事例

-ダイヤ工業株式会社-
“通心販売”を合言葉にICTで顧客情報共有と業務効率化を実現

コルセットやサポーターの開発と製造販売を行うダイヤ工業株式会社は、電話による受注時のミスや、出荷日確定の遅れなどを解消するためにICTを活用。本格的な顧客管理システムは全社での情報共有だけでなく、新製品開発にも活かされ、事業分野の拡大も進めることができました。

顧客対応力の弱さを反省し、通信販売から全社で取り組む“通心販売”へ

▲代表取締役・松尾 正男氏

スポーツをする人や腰痛などで悩む人を助けるコルセットやサポーターの製造・開発と全国の整骨院・接骨院を中心とした柔道整復業界※1に通信販売を行っているのが、岡山市にあるダイヤ工業株式会社です。同社の売上の8割が通信販売によるものです。

同社の転機のきっかけとなったのは、外部環境の変化や同社のビジネスモデルを真似た競合他社の出現などが原因で、1997年に初めて売上高が前年を下回ったことでした。初の減収減益により代表取締役の松尾氏は今後の会社経営について、切実に考えを巡らせ、全社的な業務プロセスの見直しと改革へのアクションプランを立てました。その一環が、2000年から始めたICT活用でした。

まず手がけたのは当時先駆的なCTI※2システムとそれに連動する販売管理システムの導入でした。それらは電話による受注業務を迅速にしたのみならず、電話の先のお客さまに満足を届けることにも成功しました。その後独自のショッピングサイトも立ち上げ、お客さまの利便性を高めるための施策を次々実現しています。社内のICT化を担ったIT推進室の北口氏は、ITコーディネータの資格を持ち、システム設計、運用、保守作業も自社内で行う体制を整えています。

▲IT推進室 Vice Chief Engineer・北口 政浩氏

「社長からは、『単なる通信販売でなく、お客さまと心が通う“通心販売”を目指そう』と言われました。個々のお客さまのご要望、取引実績などもすぐ分かるようにし、おすすめの新商品があれば、それもご案内できるようにと工夫をしています。併せてショッピングサイトの改善も進め、ほしいものがより見つけやすくなるようにしました」(北口氏)

現在、同社のコンタクトセンターは40席。コミュニケーターは電話を受けながら受注内容を確認し、それぞれのお客さまへの案内情報もアウトバウンド※3していました。単なる電話応対システムではなく、ワン・トゥ・ワン・マーケティングのツールにしているのです。

「このCTI・コンタクトセンターシステムは、2017年には新システムへの移行を予定しており、さらに顧客満足度を高める準備を進めています」(北口氏)

顧客管理システムの整備から全社的な業務効率化へと発展

顧客に向き合う経営姿勢を明確にし、顧客管理情報を整備することは、ICTによる販売管理や在庫・発注管理、物流管理などの全社的なシステム整備にもつながりました。営業部門では顧客応対履歴を情報共有し、誰もが質の高い一貫性のある対応ができるようになったのです。

そうした成果として、2000年当初と比較して現在の売上高は6倍、顧客数は3倍に伸び、過去5年間に限っても売上と経常利益は1.3倍となっています。業績の向上に伴って社員数は1.6倍となりましたが、増員された社員のほとんどが新卒です。

「QOL※4を向上させ、活力を回復させる医療器具を扱うことに誇りを持ち、働きがいのある会社、入社したくなる会社にしたいのです」(松尾氏)

同社は平成27年度の経済産業省「グッドカンパニー大賞」を受賞しており、製品・サービスの独自性が評価されました。

大学との共同研究の成果を踏まえ製品開発の拠点を開設

  • ▲本社1階にコルセットやサポーターを製造するファクトリー、また隣接するR&Dセンターには製品の展示スペースと人体の各部位の動きを計測する分析装置を備えています

    さらに大きな成果として、松尾氏は「製品開発力が向上したこと」をあげています。その拠点が、本社が入る「ロコステ」(ロコモーティブステーション)と道を挟んで隣接する「R&Dセンター」です。「ロコステ」は健康をテーマとした複合施設で、スポーツジムやショップ、カフェなども入っています。なお、ロコモーティブとは、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のことで、コルセットやサポーターで支えられる部位のことです。また「R&Dセンター」の1階には最先端の各種解析機器を備え、岡山大学とスポーツ医学の研究などで提携しています。

開発されたオリジナル製品としては、コルセット、サポーターの概念をサポーティングシステムへと進化させ、全身を覆う“筋肉スーツ”こと「DARWING」や、人工筋で動作する「パワーアシストグローブ」、電動義手「Finch(フィンチ)」などがあります。

「患者一人ひとりが求める形状や機能は異なります。治療のプロたちのパートナーである私たちは、どうすれば効果的に機能するかを科学的に検証して製品に活かしていくことが使命だと思っています」(松尾氏)

サポーティングシステム市場の拡大 将来を見据えた新ツールも導入

現在、日本には4万2,000を超す接骨院・整骨院があり、ほかにも鍼灸院やカイロプラクティック業者が多数あり、10年前より大幅に増えています。そのうち、同社の取引先は3万5,000院にも上ります。

「国産の良質品にこだわって治療のプロたちの信頼を得ていますが、本社1階のショップに来られるお客さまを見ていてもサポーティングシステムの需要が多様化しながら拡大していることを実感しています。すべての原点はお客さまを知ることで、それにはICTが欠かせません。全社の機能を支え、地方というハンディもなくなり、若い社員もすぐ活躍できます」(松尾氏)

参考までに今後のICT投資構想を北口氏に教えてもらいました。

  • 「顧客管理、営業戦略、物流管理の各システムは有効に機能しています。現在進めているのがメーカーとして生き残るために必須となる戦略的な生産管理システムの構築です。併せて、CTI・コンタクトセンターシステムの刷新計画を進めています。

その後は今注目されているAI(人工知能)、コグニティブ・コンピューティング※5なども積極的に活用していきたいと考えています」(北口氏)

※1 柔道整復業界:整骨院や鍼灸院で働く医療資格者の業界。
※2 CTI:Computer Telephony Integrationの略。コンピューターと電話を統合して利用する技術。
※3 アウトバウンド:企業側から顧客への電話による営業活動。
※4 QOL:Quality of Lifeの略。「生活の質」と訳され、人間らしく、満足して生活しているか、精神面を含めた生活の質を評価する概念。
※5 コグニティブ・コンピューティング:ある事象についてコンピューターが自ら考え、学習し、自分なりの答えを導き出すシステム。

会社名 ダイヤ工業株式会社
創立 1963年(昭和38年)4月
所在地 岡山県岡山市南区古新田1125
代表取締役 松尾 正男
資本金 1,000万円(2014年3月末現在)
事業内容 医療用品の開発及び製造・販売
URL http://www.daiyak.co.jp/

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