企業ICT導入事例

-八面六臂株式会社-
プロの料理人たちが新鮮食材をスマートフォンで仕入れる時代 その道を開拓した創業5年目のECベンチャー

物流システム

公開日:2016/06/27

鮮魚などを中心とした「業務用生鮮食品」を飲食店に提供し、食品流通の需要と供給をICTで処理、最適な物流網を展開している八面六臂株式会社。スマートフォンやタブレットなどから発注できる手軽さが魅力です。

【導入の狙い】ICT活用による魚市場からの効率的な仕入システムの実現
【導入の効果】鮮魚にとどまらない仕入食材、及び顧客飲食店舗の拡大

「市場に通って仕入れる」という従来の常識に風穴を開ける

▲代表取締役・松田 雅也氏

一流の割烹や寿司屋の料理人ともなれば、毎朝、築地市場や大田市場に通って目利きし、材料を仕入れる。それが常識のように思われてきた時代が長らく続いていました。しかし、2011年に八面六臂株式会社が始めた仕入サービスが、その常識を変えました。同社のサービスについて代表取締役の松田氏は次のように説明します。

「私どもは、築地や大田など中央卸売市場ルートの仕入だけでなく、全国各地の産地市場や生産者からの独自仕入を組み合わせることで、鮮魚から加工品、精肉、野菜、酒まで豊富な商品ラインナップを持ち、さらに商品種別ごとの専任担当者が毎日、品質を管理しています。これまでお店が仕入に費やしていた手間を省き、複雑な流通過程でかかるコストを抑えることができるのです」(松田氏)

同社では翌日扱い分の商品を16時からサイトに掲載し、翌日午前2時まで注文を受け付け、都内と近隣の3県(一部を除く神奈川、埼玉、千葉)に自社のトラックか宅配便で配達しています。「アジ1本、トマト1個からでも注文でき、『カツオの4分の1フィレの背側を』とか、「使いやすい“入り口”が重要だ」と気づき、プロたちに教わる『タイのウロコ落としを』などといったご要望にも対応できます」と松田氏。この効率的で経済的、かつきめ細かいサービスが、現在約3,000店もの飲食店などから支持されています。

「使いやすい“入り口”が重要だ」と気づき、プロたちに教わる

▲端末からの簡単な注文で、市場の新鮮な食材が届くサービスを実現

食品流通の需要と供給をマッチングするサービスを、EC(電子商取引)のシステム上に実現したことにより、同社は2015年には日本ビジネスモデル大賞を、2016年にはJVA(Japan Venture Awards)のeコマース推進特別賞も受賞しています。単なる食品流通ECサイトなら山ほどある中で、同社が受賞した理由は、スマートフォンやタブレット端末から注文できる抜群の使いやすさ、便利さを実現したことにあります。

「一般に、飲食店の方々のITスキルは高くありません。手軽で、身近なデバイス(端末)で使えるようにすることは、お客さまから見た“入り口”対策の一つでした。創業の頃は、普及し始めたiPadが使えそうだと考え、端末を配布して利用してもらうことも始めました。しかし、すぐにスマートフォンが急速に普及して、現在は8割近くのお客さまがスマートフォン利用です」(松田氏)

松田氏の“入り口”対策は、デバイスだけではありません。料理人の立場に立って商品情報を編集し、素材の吟味(目利き)までサポートできなくてはならないと考えています。現在、同社サイトの鮮魚情報には、水揚げ日から漁法、産地、目方、締め方まで、写真つきの情報が公開されています。

「改善レポート」に残る試行錯誤の足跡

こうした工夫の積み重ねに「ほとんど不眠不休の日々が続いた」という松田氏。「一流のお店の料理人たちに会って話を聞き、仕入の要点を教わった」とも語ります。同社サイトには、そのインタビュー記事やお客さまの声が掲載されていますが、中でも「改善レポート」にはさまざまな試行錯誤の足跡が残っています。例えば、せっかくの活クルマエビが流通過程で傷んでしまった原因を突き止め、温度管理と包装材を改善した事例や、納品履歴が画面で確認できるようにした、配送品質向上の事例などが詳細に書かれています。

「商品の品質管理は科学的に分析され、再現性を持たなくてはならない」というのが松田氏の信念。「ICTをフル活用し、分析や情報共有、配送管理そしてサービスまで、自社でも行うことで他社の追随できないレベルを目指しています」と語る背景には、大学卒業から30歳での起業までに、銀行マンや流通システム会社、電力ベンチャー運営などを経験した知見やスキルがあるのです。

  • ▲食材の詳細な情報が写真つきで確認できる同社サイト

  • ▲サービス改善のさまざまな取り組みを紹介する
    「改善レポート」

自分が通いたくなるお店や料理人のためにできることを

最後に、松田氏が思い描く同社の将来像についてうかがいました。

「数字的には、2018年に取引店数を1万軒にという目標があります。でも商品が生鮮品ですし、変化も激しくチャーン(移り気)なお客さまも多い。その変化に追いつき、捕捉できるスピーディで高度かつローコストな経営体質にしなくてはならないのです。ECで先行する優秀な企業には、学ぶことばかりです。だから、部下たちにはかなり厳しい要求をするイヤな社長ですよ(笑)。でも、その一方で、日本の食文化がもっと多様になって、心が豊かになるように、とも願っています。今すぐは無理ですが、自分が通いたくなるお店作りや独立開業を目指す料理人の方々のために、何かサポートできないかとも考えています。やはり、自分自身が美味しいものを食べることが好きなんです」(松田氏)

会社名 八面六臂株式会社
設立 2007年(平成19年)5月14日
所在地 (本社&フルフィルメントセンター)東京都中央区豊海町2-24
代表取締役 松田 雅也
事業内容 EC事業
URL https://hachimenroppi.com/

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