企業ICT導入事例

-株式会社佐藤工務店-
土木機械の自動化やICT化にいち早く取り組みICT施工をけん引

IOT

公開日:2017/03/27

国土交通省が掲げたICTと土木技術を統合させる施策によって、生産性が低いと言われてきた土木工事の分野に変革の大きな波が生まれています。しかし、これよりはるかに早く、土木機械の自動化やICT化に取り組んできたのが宮城県の株式会社佐藤工務店。常に現場に立って発想し、ICT施工をけん引している若いリーダーの取り組みとその実績は、ポジティブな刺激を与えてくれます。

【導入の狙い】建設現場にICTを活用することで、生産性と安全性を向上する。
【導入の効果】売上も効率もアップ。若手社員の確保にも成功した。

国の新施策である「ICT施工」を先駆けて実践する企業があった

▲代表取締役・佐藤 敦氏

国土交通省は、2017年に入って「i-Construction」の、 官民共同のコンソーシアムを発足させました。この施策は、最新のICT技術を活用することで建設現場の生産性や安全性向上を図るとともに、魅力的な職場にして労働力確保にもつなげることを狙いとするものです。

宮城県加美郡に本社を置き、公共土木工事などを主たる業務とする株式会社佐藤工務店は、国の「i-Construction」コンソーシアムに参加していますが、実は、早くからこのコンセプトを先取りしたICT施工の先駆的企業でもあります。

最初に試みたのは2002年の田畑の整備工事でした。現場にレーザー応用測量機※1を持ち込み、そのデータで建設機械をナビゲートしながらブルドーザーのブレード(排土板)の油圧調整を自動化する方法でした。これによって熟練した作業員でなくても、広大な土地を微妙な勾配を持たせながら造成できることが確認できたのです。この技術はさらにGPSを活用する方式に進化し、2011年の東日本大震災後、請負った堤防の復旧工事では、位置精度をより高めるために、仮想基準点を携帯電話網の信号で通信させる方式を開発して難工事をやり遂げたのです。こうした同社のICT施工を率いているのは、3代目の経営者・佐藤氏です。

「工事で使う各種の建機を『賢く』することで省力化できないかということを、いつも考えてきました。重機や測定器メーカーの方とも相談して、一緒に工夫を重ねています」(佐藤氏)

現場に立って次の工夫を考える 新しいことを取り入れるのが社風に

▲「E三・S」(3DMG:3次元マシンガイダンス)ではオペレーターが画面を確認しながらバックホウを制御

佐藤氏の着想はいつも建設現場に立つことで生まれているようです。ドローン(無人飛行機)をいち早く導入し、堤防決壊防止工事の情報収集や工事成果の3次元測量・撮影にも活用しています。最新の事例では、掘削や盛土の法面(のりめん)※2整形に用いるバックホウ(ショベルカー)用の装置「E三・S」(イーサン・エス)の開発がそれです。バケット※3の刃先に取り付けた装置からの信号を運転席のモニターで受けながら作業できるようにしたもので、従来、標尺※4を設置・測定しながら経験と勘でこなしていた作業を大幅に時間短縮して効率化しました。また作業品質を安定させることにもなりました。

「当社の中核技術は、機械の動きをXYZの3軸で自動制御する3DMC(3次元マシンコントロール)ですが、高いレベルの作業を若手でもできる工夫でないと意味がない。ICT化が目的ではなく、現場のオペレーターが、より作業しやすいようにと考えた結果です。新しいことをまず現場に入れて使ってみるというのがうちの社風になっています」(佐藤氏)

ちなみに、この技術は高く評価され、現在、国交省の新技術情報提供システム「NETIS」のサイトhttp://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/Explanation/MainExplanation.aspでも紹介されています。

情報を「見える化」するためにはICTインフラへの投資は必要

「現場好き」を自認する佐藤氏ですが、土木工事の現場は一つではありません。そのため、本社事務所には、壁にタブレットを利用したモニターが6台配置され、現場のカメラから実況されているほか、大型モニターには工程表などが表示され、毎日の進捗管理が現場と本社で情報共有できるようにもなっています。壁のモニターで採用した遠隔監視カメラシステム「MIRUMOTTO(ミルモット)」は太陽電池と携帯電話を使ったものであり、大型モニターは同社のイントラネットを経由したものです。

「情報はできるだけ『見える化』したい。私たちの仕事は、情報を共有して、タイミングを逃さず的確な判断・指示ができないと、作業の遅延や重大な事故にもつながりかねない。ICTは効率的で安全な現場作業を支える業務の生命線なのです。また自動化や『見える化』を現場に徹底することで、仕事の無理や無駄がなくなり、働く人にとっては、新技術の吸収もできます。これが若い人の採用や定着にもつながっているので、この投資は省こうとは思いません」(佐藤氏)

参考までに、同社の試算によると①重機のICT化によって工種別で施工日数・費用が平均で約40%の削減、②売上は前年比約120%、利益は115%と向上、③人員も42名から58名に増えて定着する、など多大な効果が見られます。経済産業省の2016年IT経営中小企業百選を受賞しているのもうなずけます。

新分野の挑戦を続けなければ中小企業はサバイバルできない

目ざましい成果を上げてきた同社ですが、佐藤氏は現状に満足していません。国交省が「ICT施工」を掲げたことで業界が一斉に動き出すのは確実。でもそれでは研究開発力や資金力に勝る大手企業に先行されてしまうはずです。地方の中小企業が生き残る道はあるのでしょうか?

「新分野に挑戦するしかないでしょう。例えば当社は今、海洋土木工事へ進出すべく矢板鋼板※5の自動圧入機を購入しました。作ったのは四国のメーカーです。またこの分野の先進地域であるシンガポールなどの情報も収集しています。人材の面でもベトナムの教育機関にも投資しました。試みのすべてが成功するわけではないですが、売上の5%をめどに先行投資して、できるだけ異分野の企業や研究機関と連携するようにしています。変化を起こすには、新鮮な刺激が必要だからです」(佐藤氏)

この好奇心とチャレンジ精神、そして「現場好き」の姿勢には、業種を超えて学ぶべき多くのことがあります。

※1 レーザー応用測量機:レーザー光を受光器で受けて高さを測定する技術。
※2 法面:道路建設や宅地造成に伴い、切土や盛土によって造られる人工的な斜面。
※3 バケット:バックホウなどの建設機械で、土砂や鉱石を入れて運ぶ容器。
※4 標尺:計測点に垂直に立てて、水準儀の水平視線の高さを読み取るための目盛り尺。
※5 矢板鋼板:河川護岸、港湾岸壁、土留めなどに用いられる鋼材。

会社名 株式会社佐藤工務店
設立 1977年(昭和52年)6月1日
所在地 宮城県加美郡加美町字長檀69
資本金 5,000万円
代表取締役 佐藤 敦
事業内容 総合建設業
URL http://satokoumuten-1977.co.jp/
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