企業ICT導入事例
-株式会社ハッピー-ICTの利点を最大限に活用し、衣服を再生する現代版“着だおれ”戦略
衣服を復元する独自の「ケアメンテ」サービスを全国展開し、着実に収益を上げる株式会社ハッピー。自社開発の「電子カルテシステム」を活用することで、業務全体の最適化と“見える化”、モノと情報とお金の一元管理を実現しています。
【導入の狙い】モノと情報とお金の一元管理、業務の最適化・効率化、サービス品質の向上を図る
【導入の効果】業務効率・生産性の向上、利用者満足の向上、収益の向上、“人財”育成を実現
独創的な水洗い洗浄法を確立し、衣服を復元するサービスを展開
日本全国のクリーニング店は1998年の11万5,010店をピークに、2014年はピーク時に比べ33.6%減の7万6,341店に減少※1。クリーニング市場規模は1992年の8,171億円をピークに、2014年はピーク時に比べ51.8%減の3,937億円に縮小しています※2。
こうした中、従来のクリーニングと一線を画し、京都の“着だおれ”文化を背景に見た目や着心地を新品同様に復元させる「ケアメンテ」サービスを提供して、ここ5年間で収益を約2倍にした企業があります。京都・宇治を拠点に、専用ウェブサイトと宅配便を使って無店舗で全国展開する株式会社ハッピーです。
同サービスは、通常のクリーニングに比べ衣服1点の平均単価が15倍の約6,000円、平均客単価は20倍の約2万円。その価格にも関わらず50%以上の高いリピート率を維持し、口コミなどで毎月平均約300名の新規顧客を獲得、総顧客数は現在約6万名にのぼります。
これを支えるのが、自社開発の水洗い洗浄法「無重力バランス洗浄技法」と仕上げ技法、さらにはICTを活用した「電子カルテシステム」。「無重力バランス洗浄技法」は、水溶性と油性の汚れを落とす基本洗浄技術「水油系アクアドライ」、黄ばみやシミなどを改善する再生技術「リプロン」、素材本来の風合いを引き出す「レシリアン」などを結びつけた技術・技法。これを利用したのが「無重力バランス洗浄装置」で、もともと機械系エンジニアの橋本氏が京都・鴨川の「友禅流し」に着想を得て開発したものです。仕上げ技法では、本来のシルエットを復元させる「シルエットプレス」の技術が活かされています。
人が介在せず、事実に基づき、必要な“解”を導くICTシステム
▲代表取締役・橋本 英夫氏
このような衣服を復元する技術を活かし、効率良く同サービスを提供するのが「電子カルテシステム」。全工程をICTで“串刺し”にしてフロントオフィスとバックオフィス、会計、労務関係をつなぎ、リアルタイムに連動してモノと情報とお金を一元管理する仕組みを構築しました。
人が介在することなく、自動的に各作業現場に必要な“解”が導き出され、業務全体の最適化と“見える化”を実現しています。情報の一元管理を実現する上で、「診断」と「カウンセリング」の工程は不可欠になります。「診断」では、衣服1点ごとに150科目3,000項目に準じて状態をチェックし電子カルテを作成。社員で情報共有し作業を行います。
「カウンセリング」では、オペレーターが電子カルテを基に、利用者へ情報開示を行い説明責任を果たすと同時に、会話中に気づいた点はすべて情報として蓄積しています。利用者が聴き取りにくそうに対応すれば「この方は耳が遠く、声の雰囲気から年配の方と思われます」、子どもの泣き声や叫び声が聴こえれば「この方はママさんのようです」と入力。こうして蓄積されたデータベースは、ターゲットを絞り込んだ利用者への販促活動に活かされています。
「お客さまに了解を得るために『袖口が擦り切れています』『脇の下のところが黄ばんでいます』と伝えてはダメ。『大切になさっているのですね』と一声かけて、修繕方法を提案する配慮が必要なのです」(橋本氏)
このような配慮と応対が高いリピート率を支えています。
“見える化”では、従来経験や勘に頼ってきた接客サービスやメンテナンス工程の技能を社員自ら習得できるように平準化・標準化し、現場での技能全体のレベルアップを図っています。社員自らが、作業の録画を再生し見直しできる「検品教育システム」なども整備し、自発的に学べる環境を提供しています。
ケアメンテを海外にも展開 ICTの可能性を広げ新たな事業へ
同社では現在、高級ブランドメーカーや大手百貨店、大手セレクトショップを中心に「ケアメンテ」サービスに関する業務提携を実施しています。背景には、ブランド衣服に同サービスをセットにして販売につなげようとするメーカーや小売店の意向があります。
こうした中、2015年10月には同サービスで仕上げた前後の画像がウェブ上に自動掲載される専用アプリケーション「ケアメンテ検索エンジン“さがす”」を本格的にリリース。ドイツを中心に海外でもリリースされています。検索エンジン機能により、利用者は自身の衣服のビフォー・アフターの画像だけでなくほかの利用者の衣類も閲覧でき、同様のアイテムの洗浄・仕上がりをイメージすることができます。
この機能は、今後、商品管理のためのバーコードをICチップへ替える際に内蔵される予定。これが実現すると、アパレルメーカー、販売店・小売店、個人利用者、同社の4者でリアルタイムの情報を共有し、ICチップを通じて“メンテナンスが可能な衣服”を訴求することで、衣服の購買につなげることも可能になります。
「今後、衣服はブランド品を中心にメンテナンスがなければ、売れにくくなるとみています。専用アプリケーション、さらにICチップが加わることでどのようなことがもたらされるか――それを見守りながら、次の事業展開を構想していきます」(橋本氏)
※1:厚生労働省「平成26年度衛生行政報告例の概況」より
※2:1世帯当たり年間クリーニング支出額(厚生労働省「衛生行政報告例の概況」)に全国世帯数(総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」)を掛け合わせた数値
会社名 | 株式会社ハッピー |
---|---|
設立 | 2002年(平成14年)1月21日 |
所在地 | 京都府宇治市槙島町目川70-1 |
代表取締役 | 橋本 英夫 |
資本金 | 5,350万円 |
事業内容 | 衣類再現加工 |
URL | http://www.kyoto-happy.co.jp |
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