企業ICT導入事例

-株式会社アイティーエム-
高齢化社会をICTの活用で安心・安全な社会に

群馬県高崎市にある株式会社アイティーエムでは、高齢化社会における福祉・医療・セキュリティ分野での「安心・安全」を実現するため、ICTを利用したさまざまなシステムを開発。多角的な面から、暮らしのサポートを実現しています。

▲代表取締役・細谷 勤氏

少子高齢化が進む日本では、高齢者をサポートするためのICT活用が活発化しています。そんな中、独自の発想でユニークな商品群を次々に世に送り出している企業が、株式会社アイティーエムです。

「私はそもそも、NTT東日本で技術者として働いていました。起業のきっかけは、ICTを通じて社会貢献したいというかねてからの考えと、窓口でうかがうお客さまの悩みを解消したいという思いからです。当時、通信関係の保守でお客さまのビルを訪ねても、電気や水道の保守を担当する会社が立ち会わないことで作業が進まないケースが、しばしばありました。そこで、ビル管理をワンストップで担う会社を立ち上げ、その仕事で体力を蓄えたのち、ICTの分野に踏み出そうという青写真を描いたのです」(細谷氏)

商品開発は、高齢者を見守るICTソリューションから

設立は、2001年。「インテリジェント・トータル・メンテナンス」の頭文字をとったITMという社名に、細谷氏の理想が込められていました。

「予想どおり、ワンストップでのビル管理サービスは、ご好評をいただきました。今では単なるビル管理の枠を超え、国立病院の電子カルテや院内LANまで含めたサポートを提供するなど、会社の屋台骨としての事業に成長しています。ただそれでも、ICT分野での商品開発には、創業から7~8年が必要でした」(細谷氏)

満を持して商品開発に乗り出した細谷氏がまず手がけたのが、一人暮らしの高齢者を見守るICTソリューションでした。

「緊急通報ボタンで助けを呼ぶソリューションはすでにありましたが、そのボタンを押せずに孤独死してしまう高齢者もいらっしゃいます。つまり“ボタンだけ”では高齢者を見守ることができないのです」(細谷氏)

細谷氏は、利用者の「トイレ」「外出」に着目しました。そして「トイレに行かない」「外出から戻らない」という異常時に、家族や緊急通報先に連絡する「定期便メール『安心』」を開発し、発売したのです。

「この商品は、高崎市の支援により市内の独居高齢者宅1万500戸すべてを対象に、設置工事を進めています。すべての高齢者を人の目で見守るには、費用的にも人員的にも無理があります。しかしICTなら、より少ない費用で実現可能です。高崎市には、そこを評価いただいたのだと思います」(細谷氏)

犯罪防止のため、指定した電話番号以外はつながないシステム

▲「安否確認システム」に利用する端末には、GPSと緊急通報ボタンを搭載。右の自社開発製品は従来品(左)よりさらに小型化を進め、徘徊の恐れがある高齢者の靴底にも内蔵できるサイズとしています

次に細谷氏が着目したのは、「振り込め詐欺」など、電話を使った特殊詐欺や悪質商法から高齢者を守ることでした。

「代表的な対抗策として『通話が録音されています』と相手に告げる留守番電話が挙げられますが、詐欺師はそれに『用事があるから電話をくれ』と吹き込み、折り返しかけてきた高齢者に詐欺を働くなどのケースがあり、その効果には疑問が残ります。仕方なく広がったもう一つの策が『電話に出ない』というものでした。しかし高齢者、特に一人暮らしの方にとって、電話は安否を気遣う別居の家族や、火事や水害を伝える近隣の方とつながる、情報の生命線です。『出ない』という対抗策では、それが機能しないのです」(細谷氏)

細谷氏は悩みました。詐欺に使われた番号のデータを着信拒否の対象にしても、詐欺師は一度成功した携帯電話を捨ててしまう。電話番号による着信拒否では、必要な電話かどうか区別できない。たどりついた結論は、指定した電話番号以外からの電話を別居の家族などに伝え、通話元に確認できるシステムでした。

「着信を許可した番号からの電話は高齢者宅につなぎ、それ以外の電話は電話番号情報をサービスセンター経由で家族などにメールでお知らせします。家族がその電話番号を確認し、知人や友人、公的機関などからであると分かれば、高齢者に電話があったことを伝え、着信許可番号にも追加するというイメージです。また着信のうち、犯罪や、悪質な電話セールスが疑われるものは、関係機関にも情報共有します。着信許可は、個別の番号登録のほか、市外局番での指定や公衆電話以外の固定電話なら可といった指定もできます」(細谷氏)

これからもICTを活用したさまざまなシステムで社会に貢献を

▲腕時計タイプのものは高齢者の肌にやさしい素材を利用。手軽に身に着けることができます

こうして設立当初の「ICTを通じての社会貢献」という細谷氏の考えは大きく実を結び、現在では地元群馬県以外の地方自治体からも多くの問い合わせが寄せられるなど、同社の力強い成長を実現することとなりました。そして細谷氏はこれとは別に、高齢者の命を守る商品の開発も進めています。

「尿漏れセンサーにより目視確認なしに生存確認ができ、おむつ交換時期も知らせるなど、人手不足に悩む介護現場での労力を軽減する『安否確認システム』、認知症などで徘徊行為が心配される方の行動を監視し、保護活動にあたる警察の負担軽減と家族の安心を実現する『はいかい高齢者救援システム』の二つをリリースする予定です」(細谷氏)

最後に細谷氏に、日本電信電話ユーザ協会への要望をうかがいました。

「日本電信電話ユーザ協会は、会員企業誰もが、業種や規模に関わらず、本音で情報交換できるすぐれた会員組織であると思っています。この“場”を活用し、会員企業が互いに有益で、かつ自由に交流できるよう、どんどんサポートしていってほしいと思います。期待しています」(細谷氏)

会社名 株式会社アイティーエム
設立 2001年(平成13年)12月4日
所在地 群馬県高崎市下之城町584-70
代表取締役 細谷 勤
資本金 1,000万円
事業内容 通信機器のシステム開発と販売、工事とメンテナンス、情報通信サービス
URL http://www.itm-group.co.jp/

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