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ICTソリューション紹介

テレワークマネージャーに聞く「テレワーク導入の重要性とツールの選び方」

IOT

公開日:2020/06/25

新型コロナウイルス感染症との戦いは長期化が避けられない情勢で、対策としてテレワークを導入する企業数は右肩上がりを続けています。今回はテレワークマネージャーの湯田健一郎氏に、「一過性では終わらないテレワークの重要性」と、特に在宅ワークに不可欠なウェブ会議などのコミュニケーションツール、パソコン作業を可能とするリモートデスクトップツールの選び方、さらに今後のテレワークの展望についてうかがいました。

「テレワークマネージャー」は、テレワークの相談に乗る専門家

テレワークについて具体的なお話をうかがう前に、まず湯田氏の肩書きである「テレワークマネージャー」について、ご案内をいただきました。

▲株式会社パソナ
リンクワークスタイル推進統括
テレワークマネージャー
湯田 健一郎氏

「テレワークマネージャーは、総務省によるテレワーク導入推進事業において、『テレワークを導入したいんだけどどうすればいいか分からない』といったお悩みを持つ事業主さまなどに、主にICT面について無償でコンサルティングする役割を持っています。通常であれば面談も含める形で3回までを無償支援の範囲としていますが、新型コロナウイルス問題により、2021年3月31日まで、ご相談はウェブ(ビデオ会議)や電話での対応とさせていただく一方、相談時間や回数については制限を設けない形での運用となっています」

そのコンサルティングの対象は広く、企業規模は問わないのが特徴です。

「ご相談のお申込みは、事務局であるNTTデータ経営研究所のウェブサイトにあるフォームで受け付けています。テレワークマネージャーは基本的に総務省のテレワークエキスパートという講座を受講した人、もしくはテレワーク関連の業務で実績のある人が選ばれていますが、ITコーディネーターや社労士の資格を持つ方もいて、相談内容に応じて事務局が適切と思われるテレワークマネージャーをマッチングする仕組みになっています」

こうしたマッチングについては、相談する事業者側からの希望や指名にもできる限り対応してくれるとのことです。

現在のテレワーク導入動機はほとんどが「事業継続」のため

では実際の相談では、どのような内容が多いのでしょうか。

「かつては『離職を希望する人がいるのだが、会社としてはぜひ働き続けてほしい。そうした人をテレワークでつなぎとめるにはどうすればいいか』『優秀な人材がいるが、遠距離通勤がネックになっている。テレワークで解決できないか』といった、“福利厚生”を念頭に置いたテレワークのご相談が多く寄せられていました。しかしテレワークが企業の生産性を高めるために有効だという意識が高まってからは、事業改善、効率化を求めたご相談が増えてきました。そして現在はBCP対策、つまり新型コロナウイルスの伝染が広がる中、どのように事業を継続していけばいいのかという観点による導入、つまりBCP(事業継続計画)対策を主眼としたテレワークの相談が多くなっています」

ではそうした“事業継続のためのテレワーク”を導入する場合、どのような手順をご案内するのか、おうかがいしました。

「テレワークは『テレ=離れたところ』、『ワーク=働く』で『オフィス以外の離れたところで働く』という意味になります。その類型は所属オフィス以外の施設を利用して働く『サテライトオフィス型』、移動中の時間などを利用して働く『モバイルワーク型』、そして在宅のまま働く『在宅勤務型』の三つです。ただ今回のBCP対策のためのテレワークは、外出や他人との接触を避け、感染のリスクを減らすということが目的になりますから、必然的に『在宅勤務型』が選ばれることになります。通常、出社しての業務をテレワークに移行するには、『テレワークでの業務は何ができるかを考える』『ルールの整備や見直しを行う』『ICTを導入する』『テレワークに向けての社内の意識改革を行う』といった四つのステップが必要になります。ただ今回はあくまで“事業継続のため”ですので、そうしたステップを踏む時間はとれません。そのため、『どのようなICTを使えば、どの業務がテレワーク化できるか』を考えることが、まず求められます」

「部分的な在宅勤務」からのスタートでハードルを低く

ただこの時注意しなければならないのは、いきなりすべてをテレワーク化し、在宅勤務だけで業務をこなすような仕組みを考えないことだそうです。

「会社にかかってきた電話に応対する、郵便物を受け取るまたは差し出す、判子の必要な書類を処理するといった業務は、どんな会社でも日常的に発生しています。そしてこの業務をすべて在宅だけでこなすのは困難です。そのため、スムーズに在宅勤務に移行するには、最初から『100%の在宅勤務』を目指すのではなく、出社しなければできない業務と在宅でもこなせる業務を切り分け、必要のある時だけ出社するという、『部分在宅勤務』です。そもそもBCP対策での在宅勤務の目的は、先ほどお話ししたように、他者との接触を少なくすることにあります。部分在宅勤務を取り入れて在社する時間を短くし、かつラッシュ時を避けて移動することで、社員同士及び通勤での他者との接触機会を減らすことができます」

そして「現場の仕事があるから」「工場だから」テレワークは無理という事業者の方には、業務内容により部署ごとのテレワーク化をおすすめしているそうです。

「例えば製造業でも、企画や人事といった部門はデスクワークが中心ですから、比較的容易にテレワーク化しやすいと思います。また製造現場でも、オフィスから工場をリモート監視して、何か支障があった場合は携帯端末にアラートが出るような仕組みを導入している場合、その端末を持つ人が現場に指示を出せるのであれば、在宅でもOKになるかもしれません」

このような考え方を紹介すると、「テレワークはそもそも無理だろう」と考えていた事業者さまでも、「うまく業務を切り分ければ採り入れることが可能ではないだろうか」と、より積極的な姿勢に切り替わることも少なくないといいます。

参考になるのは同業他社。社内のパソコン環境もICT選択の手がかりに

加えてテレワーク導入において参考になるのが、同業他社、同規模の事業者さまの実例とのことです。

「まず何から手を付けていいか分からないという事業者さまには、飲食業ではこうやってます、宿泊業ではこうやってます、また同じような規模の事業者さまはこのようなICTを導入していますといったご案内を差し上げます。そうした実例は、特にどのICTを組み合わせるかという部分でも、非常に参考になります」

また「今どのような環境でパソコンやICTを使っているか」も、テレワークに向けてのICT選択や導入において大きな手がかりになるそうです。

「現在のオフィスのICT環境で、パソコンを単独で使っている例は少なく、サーバーやNAS(ネットワーク上のHDD)で情報を共有しながら使っているケースが多く見られます。またそうした情報共有に、オンプレミス(社内にあるサーバー)ではなく、クラウド上のサービスを使っている場合もあります。例えばNASを使って業務を進めているのであれば、オフィスのパソコンを自宅に持ち出しても、ふだんどおりの業務は困難です。逆にデータをクラウドに保管してあれば、自宅からでもクラウドにアクセスできる環境があれば、いつものような業務が可能ということになります。また詳しくはのちほどご案内いたしますが、Microsoft365を使っている、Google G Suiteを使っているといった場合には、それぞれ親和性の高いウェブ会議ツールがあります」

セキュリティを守るために、安全なリモートデスクトップの導入を

さて、では在宅勤務を始める際、具体的にどのようなソリューションを選べばいいのでしょうか。
今回は在宅勤務で行う業務のうち、特に需要が高いと思われる業務用ファイルの利用方法、会議などコミュニケーションに活用できるツールについてうかがいました。

「業務で使うファイルをテレワークで行う、いわゆる“ファイル持ち出し”のもっとも簡易な方法は、ファイルをUSBメモリーに入れたり、ファイルが入ったパソコンを単純に自宅に持ち帰り、仕事するという方法です。ただこの方法はファイルそのものを持ち出すことになるため、紛失、盗難による業務情報の流出など、セキュリティがまず課題になります。また会社にあるファイルとは別のファイルを自宅で更新するため、ファイルそのものの世代管理も難しくなります。さらには先ほど申し上げたように、オフィスではサーバーやNASにつながった状態で仕事をしている場合、パソコンだけを持ち出してもいつもどおりの業務が遂行できません」

こうした場合に、自宅などオフィスの外にいてもオフィスのパソコンを使えるようにする仕組みが「リモートデスクトップ」というICTです。

「リモートデスクトップには無料、有料を含め、いくつかの種類があります。有料のもので多くの企業さまでお使いいただいているのが『magicConnect』で、『導入例が多いICTを安心して使いたい』というお客さまにはおすすめです。ただmagicConnectは外部からリモートで操作される側、つまりオフィスのパソコンがWindowsである場合にのみ対応しています。もしオフィスにあるパソコンがMacの場合は『スプラッシュトップ』をおすすめしています。またより安価にリモートデスクトップを実現する『リモートワークス』も、Macに対応しています」

Windowsの一部にも標準装備。規模の大きな導入にはVDIの検討を

これらのほか、Windows10 Pro以上に標準で搭載されおり、無料で使える『Remote Desk Top』というツールもあります。

「ただオフィスでお使いのパソコンのWindowsのバージョンがHomeの場合、リモートデスクトップは使えないので、有料のものを使うという流れになるでしょう。最終的にはオフィスで使っているパソコンの台数やソフトの種類も含め、総合的に判断することになります。このあたりは、できれば使っている業務アプリや社内の環境を具体的に専門家にお示しいただき、アドバイスをお求めになるほうがが最適解が出てくると思います」

さらに大きな規模で在宅勤務をする場合、候補に挙がるのがVDIです。

「VDIはサーバーの上に仮想的にパソコンを用意し、そのパソコンにOSをインストールして、利用者はそのパソコンを外部から操作する仕組みをとります。このサーバーをクラウド上に置くことで、オフィスからでも在宅でも同じように利用できる構成とすることも可能です。一括管理しなければならないデータが多い場合などにおすすめめしますが、構築にコストがかかるので、少なくとも100人規模、200人規模で使うような事業者さまでないと導入のメリットが生かせないとお考えください」

導入には「誰と何を話すか」「自社で何を使っているか」がカギに

続いてウェブ会議のツールについて話しをうかがいました。

「ウェブ会議用のツールも何種類もありますが、重要なのはまず『どんな使い方をするか』、つまり社内のミーティングに使うのか、お客さまをお招きしての商談に使うのか、ということで、この目的に応じて選ぶツールが変わってきます。前者の場合、例えば社内でMicrosoft365をお使いであれば、同社のTeamsが無料で使える上、Microsoft365のほかのツールとの連携も容易なので、管理がしやすいと思います。またGoogleのG Suitesをお使いの場合は、同様の理由で同社のMeetsが有力です。後者、つまり社外のお客さまとの商談が主な目的である場合は、お客さまがとまどうことなくウェブ会議に参加できることが重要です。この場合、Zoomなどが分かりやすいでしょう。ほか、テレビ会議とウェブ会議を併用するのであれば、WebEXというツールが最適です」

もう一つの切り口として、有料のものを使うか、無料のものを使うかという選択肢もあります。

「一般的には有料版のほうが高機能ですが、無料版でもある程度には使えます。有料版でも無料のトライアル期間を設けているツールがあるので、そちらで使い勝手を試してみてはいかがでしょうか」

“軽い打ち合わせ”にはチャットツールの利用が効果的

さて、会社の業務においては、きちんとした会議、商談のほか、軽い打ち合わせや立ち話も重要なコミュニケーションになります。そうしたシーンでは、これらのウェブ会議ツールよりももっと簡易的なものが適切な場合もあるそうです。

「打ち合わせ、ちょっとした会話の役割を果たすのがチャットツールです。こうしたチャットツールを使えば、メールに比べ手軽で素早いコミュニケーションが可能です。多くの人が使うコミュニケーションツールのLINEのほか、SNSであるFacebookにもグループチャットの機能がありますが、こうした一般的なツールでは業務においての情報管理がウィークポイントとなります。まず記録の保存性という部分が課題になりますし、社員が退社してしまった時、業務情報を適切に削除できません」

そのため、業務に使う上では専用のチャットツールの選択すべき、とのことです。

「ICTに詳しい人が多くいらっしゃる職場では、多機能でほかのツールとの連携も可能なslackをお勧めしています。逆に飲食店さまなど、そうしたツールに慣れていないスタッフが多い環境では、ビジネス用のLINEであるLINE WORKSをおすすめしています」

これらのコミュニケーションツールも、先にうかがったリモートデスクトップ同様にさまざまな種類があります。どれを選べばいいか分からない、導入がスムーズにできるか不安だという事業者さまは、多少のコンサルティング料金はかかっても、専門家に相談するのが早道になりそうです。

補助金、助成金適用については専門の窓口などにご相談を

ではこうしたテレワークを導入する場合、機材やICTについて、補助金や助成金の活用はできるのでしょうか。

「アプリの導入、特にクラウドで動くものについては、初期費用も無料もしくは低廉で、月々のランニングコストがわずかな場合もありますので、わざわざ手間をかけて補助金、助成金の申請をする必要がないケースもあるでしょう。ただ新たにテレワーク用のパソコンなどハードウェアを購入する、そのために費用をかけてシステムを導入するといった場合などは、活用を視野に入れたほうがいいでしょう。補助金や助成金は複数の省庁や自治体が主体となっていて、その内容もハードウェアを対象とするもの、ソフトウェアを対象とするものなどさまざまです。また手続き面でも導入前に申請するものもあれば、導入後に申請するものもあります。何がどのように使えるかは、ケースバイケースで最適なものをおすすめするようにしています。補助金、助成金の活用は複雑で難しいため、私たちテレワークマネージャーのほか、地域の商工会や商工会議所でご相談なさることをおすすめします。また現在総務省は全国にテレワークの相談窓口を設置する『テレワークサポートネットワーク』という事業を推進しています。こうした地域窓口のご活用も考えられてはいかがでしょうか」

「コロナ後のビジネス環境」に対応するためにも、今決断を

最後に在宅勤務を導入する時の注意点、さらに今後のテレワークの展望についてうかがいました。

「BCPを考えたテレワークはあくまでも速度優先になっています。そのため、それぞれの事業者さまの就業規則などと整合しないケースもでてくると思います。直ちには難しいとしても、そうした規則の見直しなどもできるだけ早めに行うべきでしょう。一部には『在宅ワークは一時期だけ。新型コロナウイルス問題が終わったら、仕事のやり方を元通りにすればいい』とお考えの事業者さまもいらっしゃるかもしれません。しかし今回の問題でBCP対策に取り組んだ事業者さまは、新たなICTの利活用も活発になっています。『問題が片付いたら、元に戻そう』という姿勢では、周囲の流れに取り残され、企業の実力差が大きく付いてしまうことにもなりかねません。この機にさまざまなICTを試し、導入して、さらなる業務の効率化を目指してほしいと思います。」

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