ICTソリューション紹介

業務効率化と人手不足対策の切り札、AI OCRとは?

オフィス内の事務処理には多くのICTソリューションが導入されていますが、取引先とのやりとりに紙の伝票が介在し、その入力業務が大きな負荷となっている企業は少なくありません。AI OCR※1が今、そうした“人的作業”を軽減し、人手不足対策の切り札になると期待されています。

1990年代に成熟した技術が、AIの導入でさらに発展

—OCR(光学的文字認識)のこれまでの歩みを簡単に紹介してください。

  • ▲デジタルビジネス事業本部
    ワークフローソリューションセンター
    プロジェクトマネージャ 嶋田 敦夫氏

    嶋田 OCRそのものの歴史は古く、1960年代後半には郵便番号の自動読み取り機で実用化されていました。認識の精度は年を追うごとに高まり、辞書と照らし合わせ認識精度を高める仕組みなども導入され、1990年代には技術的に成熟していました。

—そのOCRが、現在改めて注目を集めているのはどうしてですか。

嶋田 まずAI(人工知能)との組み合わせによる性能の向上です。それまでのOCRはすでに96~97%の認識率をマークしていましたが、多種多様なフォーマットが混在するような環境への対応は苦手でした。これがAIの導入により、例えば紙の請求書であれば「この部分は日付、この部分は金額を表す」と判断し、デジタルデータとして格納することが可能になったのです。RPA※2の普及も追い風になりました。手書きの伝票をAI OCRが読み取り、そのデータをRPAが処理して販売管理システムや会計システムに連携するという流れが、企業の事務作業の効率化に大きく貢献することとなったのです。

これまで必須だったエンジニアによる作業をなくし導入コストを低減

—AI OCRの業務への導入には、どのような特徴がありますか。

嶋田 これまで伝票処理へのOCRの導入には、どのような伝票が存在し、伝票のどの部分がどの項目にあたるのかという定義づけを、エンジニアがあらかじめ行う必要がありました。その行程に数十万円、時には数百万円という費用がかかっていたのです。しかしAI OCRは、導入段階ですでに他社で多くのデータを読み取り、学習を重ねています。そのため、改めての定義づけが不要で、導入時のコストが小さく、またスムーズな稼働が可能です。また弊社製品では、稼働後も学習が続き、伝票を読めば読むほど、認識精度は高まっていきます。

—AI OCRを使った業務の具体的な流れを教えてください。

嶋田 弊社製品を例に紹介いたします。まず、複合機で紙の請求書をスキャンします。次にAIがその画像から日付、金額などを適切に判断し、デジタルデータとして格納します。そのデータを人間が目視で確認し、読み取りミスがあれば訂正します。最終的にそれらのデータが、販売管理システムや会計システムに、場合によってはRPAによって引き継がれることになります。AI OCRが読み取りミスをしてお客さまが訂正した場合、AI OCRはそれが「ミスであった」と認識して、次回以降の読み取りはより正確になります。

小規模の事業者こそ、AI OCRによる負荷軽減で大きな効果を

—どのような企業に、大きな効果をもたらすのでしょうか。

嶋田 弊社製品では読み取りの対象を請求書に絞っていますが、規模の比較的小さな事業者、具体的には毎月処理する請求書の枚数が100枚から200枚くらいの事業者に大きな効果があると考えています。こうした会社では、経理部門に十分な人員を配置することが難しく、月末・月初など請求書が集まる時期に手作業で入力するのは、かなりの手間になっていると思われます。AI OCRを導入すれば、こうした負担が格段に小さくなり、場合によっては導入により浮いた人的リソースを別の業務に充てることもできるでしょう。また小さな事業者であれば、取引先の数も限られていることから、請求書のフォーマットも少なく、AI OCRによる認識もより正確になるというメリットもあります。冒頭でも申し上げたように、RPAをすでに導入していらっしゃる事業者では、より大きな効果があると考えられます。

あらゆる種類のデータを同様にハンドリングできる業務環境の実現へ

—AI OCRにはクラウド型とオンプレミス型がありますが、それぞれどのような特徴がありますか。

嶋田 クラウド型は、お客さま側にサーバーなどの設置の必要がなく、より低コストでの運用が可能です。またAI部分は複数のお客さまで共用となるため、学習の効果がより高まります。またバージョンアップもクラウド側で行うため、常に最新の機能をお使いいただけます。オンプレミス型は、セキュリティポリシーの関係で社内の業務データを外に出すことができないお客さまにご活用いただいています。ただ、クラウド型を採用する販売管理システムや会計システムなどが増えてきていることから、今後はそうしたシステムとOCR、RPAなどがAPI※3連携し、“どこで動いているか”を気にすることなくご利用いただけるようになっていくと思われます。

—AI OCRの今後の展望について、教えてください。

嶋田 認識率はかなり高まってきてはいますが、100%にすることは困難だと思います。しかしAI OCRで認識ミスがあっても、下流工程のRPAがそれを異常値と判断したり、注文書など別の証憑との突合でミスを感知したりするといったフェイルセーフ※4があれば、信頼性は大きく高まるでしょう。もう一つの発展は、企業固有の表現(固有名詞など)が多く、AIによる事前学習が不十分なために読み取り難易度の高い、注文書、納品書、契約書などほかの伝票への展開です。最終的な目標としては、OCRが介在することで、電子データ、メールの添付書類、紙の伝票をすべて同じように扱えるようになると思いますし、それが現在目指す一つのゴールであると考えております

※1 AI OCR : 紙やPDFなどの文字情報を電子化する技術がOCR(Optical Character Recognition/Reader=光学的文字認識)で、これにAI(人工知能)技術を取り入れたもの。
※2 RPA:Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、人工知能を備えたソフトウエアのロボット技術により、定型的な事務作業を自動化・効率化すること。
※3 API:Application Programming Interfaceの略で、自己のソフトウエアを一部公開して、ほかのソフトウエアと機能を共有できるようにしたもの。
※4 フェイルセーフ : 何らかの装置・システムにおいて、誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に安全側に制御すること。

会社名 株式会社リコー
設立 1936年(昭和11年)2月6日
本社所在地 東京都大田区中馬込1-3-6
代表取締役社長 山下 良則
資本金 1,353億円(2018年3月31日現在)
事業内容 オフィス機器(複合機など)や光学機器の研究、開発、製造、販売およびサービス提供
URL http://www.ricoh.co.jp/
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