事例系トピック

遠隔操作の人型ロボットを通じて意思を伝えることで、場所にとらわれない働き方を実現

日本製ロボットは世界でもトップクラスの水準と言われ、中でも「人型ロボット」は特に開発が進んでいる分野です。英治出版株式会社では、遠隔操作ができる小型の人型ロボット「OriHime(オリヒメ)」を通じて、離れた場所にいる人が会議の場で明確に意思を伝えられるようになり、場所にとらわれない働き方ができるようになりました。

  • 【導入の狙い】ウェブ会議サービスと人型ロボットを併用することで、離れたオフィスで働く社員同士の意思疎通を円滑にする。
  • 【導入の効果】ウェブ会議サービスでは存在感が薄くなってしまう参加者の意思を反映し、遠隔参加の会議でもその場にいるような臨場感を実現。

遠隔操作ができる分身ロボット「OriHime」とは?

「OriHime」は、株式会社オリィ研究所が開発している人型ロボットで、内蔵されたカメラで周囲の様子を見ることや、マイクやスピーカーでほかの人と会話をすることができます。スマートフォンやパソコンから遠隔操作がで
きるので、子育てや入院などさまざまな理由によって、行きたいところに行けない人の分身として、自分の意思を伝えることができます。この「OriHime」を活用している英治出版株式会社は、1999年の設立以来、組織改革やリーダーシップといったビジネス書を中心に約350タイトルを発行している出版社です。「目指すのは、著者を応援する出版社」と語る代表取締役の原田氏は、絶版本を出さないという信念のもと、95 %以上のタイトルを設立以来売り続けています。

代表取締役 原田 英治氏

▲代表取締役
原田 英治

「特徴は、プロデューサー制度を導入していることです。一般に、出版社は一人の著者に対して、編集と営業に担当が分かれていますが、弊社では、プロデューサーが企画から執筆の相談、編集、そしてプロモーションまで一気通貫で担当しています。これにより、著者の意図を明確に読み手につなげることができるので、長く愛される本になっているのだと思います」(原田氏)

国内離島留学をきっかけに分身ロボット「OriHime」を導入

原田氏が、分身ロボット「OriHime」と出会ったのは、2017年の冬のことでした。

「とあるパーティーで、オリィ研究所代表の吉藤さんと知り合いになり、『OriHime』を紹介してもらいました。ちょうどその時、子どもの国内離島留学に1年半ほど随伴して島根県の離島へ一時移住することが決まったので、島と東京でコミュニケーションをとるのにちょうど良いと思って、利用させてもらいました。離島であっても通信環境は整っていましたので、問題なく利用することができました。使ってみて効果を感じたのは、会議での存在感が高まるところですね。ウェブ会議サービスですと、どうしても“ただその場にいるだけ”で、存在感が薄いのですが、『OriHime』は分身として手を挙げることができるので、ほかの人と同じように質問ができます。また、企画会議などでは賛成意見は挙手で決議をとるため、分身ロボットが挙手することで本人の意思がリアルタイムで伝わります。中でも『OriHime』の動作で一番気に入っているのは、拍手ができるところです。弊社には、企画会議で全員の拍手が起こると企画が通る、という暗黙のルールがあるので、拍手ができることはほかの動作よりも意味があります。もちろん、ウェブ会議サービスの画面上でも拍手はできますが、頃合いを見計らって『OriHime』で拍手をすると、まるでその場にいるような臨場感で企画会議に参加することができます」(原田氏)

「その場にいる」ようなコミュニケーションを実現してくれる分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」▲「その場にいる」ようなコミュニケーションを実現してくれる分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」

出版社にとって企画会議は、良質な本を生み出すスタッフたちの貴重な意思伝達の場です。離れた場所にいるスタッフの分身として、さまざまなアクションを通じて明確な意思伝達を実現してくれる「OriHime」は、同社の本作りに大きく貢献しています。

「OriHime」の活用で距離を感じさせない会議を実現

大阪オフィスで働くプロデューサーの田中氏は、「OriHime」を通じて、社内の日常的な雰囲気が遠くからも分かるようになったと話します。

「以前は、ウェブ会議サービスを利用したり、個別に電話やチャットで話した後に、接続を切ってしまうとコミュニケーションが完全に遮断されるという状況でした。今は、『OriHime』を通じて、大阪からも普段の何気ない会話を聞けるようになりました。楽しそうだなとか、今はちょっと大変そうだなと感じられるので、距離が近くなったような感じがします」(田中氏)

「社内には2台の『OriHime』があるのですが、リボンを巻いているほうは、みんなから田中さんだと認識されています。先日の会議では、ある人が『田中さーん』と呼びながら『OriHime』の頭を小突く場面がありました。田中さんも負けじと『なんでやねん』のポーズで返すなど、あたかもその場で二人が会話をしているような動きができるのが面白いですね。近い将来は、全員が『OriHime』で遠隔参加するような会議が実現するかもしれません」(原田氏)

プロデューサー 田中 三枝氏

▲プロデューサー
田中 三枝

ロボットを通じたほうが対面よりも冷静に客観的に伝わる

日々のやり取りでは、「OriHime」とウェブ会議サービスなどを併用することも多いようです。どのように使い分けをされているのでしょうか。

「共有ファイルがある時は、画面上で見られるのでウェブ会議サービスのほうが便利ですね。ただ、こちらの顔や背景が相手側に映ることはない『OriHime』のほうが気軽に参加することができます。また、対面でやり取りをするよりも、ロボットを通じたほうが意図が伝わりやすくなる面もあると思います。例えば、弊社は代表者の発言権が強い会社ではないのですが、それでも私が直接話をするよりも『OriHime』を通して発言するほうが、より冷静で客観的に伝わるのではないかと考えています」(原田氏)

通信環境が整備され、より活動範囲が広がることを期待

今後、遠隔操作の人型ロボットでどのようなことができると、オフィス内でより活用されるようになるのでしょうか。

「私は、『OriHime』が歩けるようになれば良いなと思います。今は、誰かに会議室まで運んでもらわないと参加できないので、申し訳ないと思ってしまいます。自分の意思で動かせるようになると、特定の相手に話したい時には近くに寄って小声で話せるようになるなど、よりコミュニケーションの幅が広がるのではないでしょうか」(田中氏)

「オフィスで使う場合、人型ロボットであっても一人一台ずつ用意する必要はないと思います。複数人が同じロボットにアクセスできるので、一拠点に一台配置して、誰でも使えるようにすれば便利ですね。出張先、自宅、近くのカフェなど、どこからでも遠隔で操作できるので、どんな業態の会社でも役に立つと思います。また、今後、5G エリアが拡大するなど、通信環境がより良くなれば、『OriHime』自身の活動範囲も広がるのでしょうね。昔、マンガの中で見た分身ロボットに近づくのではないでしょうか」(原田氏)

会社概要
英治出版株式会社
会社名
英治出版株式会社
設立
1999年(平成11年)
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿南1-9-12 ピトレスクビル 4F
代表取締役
原田 英治
資本金
9,032万円
事業内容
書籍の企画・編集・出版
URL
http://www.eijipress.co.jp/