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ICTソリューション紹介

-株式会社情報通信総合研究所-
人手不足時代に期待されるICT 記事ID:D10039

2024年問題が多くの話題を集める今年も、ビジネス環境の改善や課題の克服のため、ICTに活路を求める企業が増えそうです。特に人手不足問題への対応は多くの企業にとって喫緊の課題となっており、ICTの有効活用が求められています。そこで人手不足問題の緩和につながると期待される「協働ロボット」「IOWN」「Web3.0※1」の現状と可能性を、株式会社情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部の山崎 将太氏、三本松 憲生氏にうかがいました。

人手不足の問題を解消するICTキーワードに注目

 「生成AI※2」「メタバース※3」「ブロックチェーン」「NFT」「スマートマシン※4」「スーパーアプリ※5」など、2023年はテクノロジーの進化に伴い、ビジネスシーンや日々の暮らしの中でさまざまな変化が見られる年となりました。2024年もこの流れは続くと思われますが、特に物流・運送業界ほか多くの分野で問題となっている 「労働力不足」「人手不足」、いわゆる「2024年問題」への対応が、企業の重要課題として注目されそうです。
 パーソル総合研究所と中央大学が出した「労働市場の未来推計2030」(図1参照)によると、2020年には384万人だった労働人口の不足数が、2030年には644万人に達すると予測されています。そこで、今回は労働力不足の問題を解決するためのヒントとなるICTキーワードとして、「協働ロボット」「IOWN」「Web3.0」に注目しました。

【図1:労働市場の未来推計2030】出典:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場未来推計2030」

キーワード①:協働ロボット

人と同じ環境で働き人を助ける「協働ロボット」

 協働ロボットとは、工場の生産ラインなどに配置され、人に代わって単純作業や反復作業を行う軽量、省スペース型のロボットで、自動車や電子部品、食料品など、さまざまな製造現場で導入が進んでいます。安全柵で隔離されている産業ロボットと違い、人間と同じ生産ラインに立って一緒に作業することが可能なため、人とロボットの間で材料のやり取りを行うなど、より人と協調した柔軟な活用を実現しています。現在は、サービス業の接客ロボットや飲食店の配膳ロボットなど、日常生活に身近な協働ロボットの活用例がよく見られるようになっています。まさに人と協調しながら共同作業を行う可能性を持つロボットだと言えるでしょう。

ICTリサーチ・コンサルティング部
IOWN推進室 山崎 将太氏

 「協働ロボットは軽量、コンパクトなため、小規模な生産ラインにも導入が容易です。作業内容のインプットの変更で、今日は部品の挿入作業、明日は組み立て作業に従事させるといったフレキシブルな運用が可能で、多品種少量生産の企業との親和性が高いことも魅力の一つです。これまで大企業での活用に限定されているイメージのあるロボットの世界ですが、今後は中小企業でも協働ロボットの導入を検討する企業が増えていくと思われます」(山崎氏)

  産業ロボットに比べたら、少ない予算で導入可能な点も協働ロボットの特徴だと山崎氏は指摘します。

 「協働ロボットの価格は性能や大きさによってさまざまですが、本体価格が100万円程度のロボットも登場しています。しかし初期投資からランニングコストまでを含めれば、決して安い買い物ではありません。中小企業庁の『ものづくり補助金※6』、経済産業省の『事業再構築補助金※7』などの活用や、レンタルによる導入を視野に入れてはいかがでしょうか」(山崎氏)

成熟した果実のみをAIが判定した上で収穫する「収穫ロボット」(画像提供:立命館大学・農研機構)

 このほか、AIを活用した協働ロボットの開発にも期待が集まっています。特に高齢化が進み、人手不足が深刻化している農業のような分野では、人の代わりを務められるロボットの開発は、待ったなしの状況にあると山崎氏は語ります。

 「農業の従事者数は、『2020年農林業センサス』によると2020年が約136万人で、対2005年比で約40%も減少しました。このような状況の中、農業では協働ロボットの先進的な活用が進んでいます。例えば、果実を収穫する人間の後を自動的に追従し収穫物を運ぶ『収穫運搬ロボット』、収穫時期をAIが判断しロボットが自動的に果実のみ収穫する『収穫ロボット』などが開発され、実用段階に入っています。このようにAIの搭載でより人間に近づいた協働ロボットの開発は、人手不足に悩む業種を中心に、今後ますます盛んになると思われます」(山崎氏)

キーワード②:IOWN

「IOWN」だから可能になるより高度なロボット操作

 総務省は令和5年版の「情報通信に関する現状報告の概要」の中で、通信インフラの高速化や動画のさらなる高画質化、メタバースなどの仮想空間などのデジタルサービスの普及により、今後ネットワーク上のデータ流通量が爆発的に増大すると分析しています。
 そして、2028年には2023年の約4倍のデータ流通量が発生すると予測しています。

 「この数字は今後相当な規模の電力需要が発生することを意味しており、省電力化が叫ばれている日本にとって、大変悩ましい社会課題だと言えるでしょう。課題の解決には、現在の通信ネットワークに代わる、処理能力が高くかつ省電力で利用可能な通信ネットワークの構築が必要となります。現在NTTグループが推進している次世代情報通信技術IOWN(アイオン)は、その要求に応えるべく開発された、フォトニクス(光)をベースとしたネットワークシステムです」(山崎氏)

 IOWNとは「Innovative Opticaland Wireless Network」の略称で、革新的な光と無線のネットワークを意味します。回線部分だけでなく、端末内まで光ベースの技術で処理することで、「低消費電力」「大容量・高品質」「低遅延※8」通信の実現を目指しています。目標達成値は従来のインターネットとの比較で、消費電力が100分の1、伝送容量が125倍、遅延200分の1で、2023年3月に、まず「低遅延」の目標値をクリアした「IOWN1.0」がリリースされ、2030年の完成を目指して研究開発が進んでいます。

 「『IOWN1.0』では伝送の際の遅延が抑えられるために、立地場所が異なる拠点間の通信がスムーズに行えることになります。医療の世界では、120㎞離れた場所から、手術支援ロボットを操作した手術が可能になりました。術中も医師同士が同じ手術室にいるようなコミュニケーションが可能なため、医師不足に悩む地域や病院にとって心強い味方になると期待されています。ほかにも車の自動運転や交通制御など、遠隔操作が必要な分野や、わずかな遅延が取引の公正さを左右する金融取引の世界などからの需要も想定されるでしょう。また、農業分野でも無人トラクターの走行実験が行なわれるなど、『大容量・高品質』『低遅延』を実現するIOWNは、人手不足解消のために開発された技術ではありませんが、人手不足が深刻なさまざまな分野からも大きな期待が寄せられています」(山崎氏)

 また、現在IOWNを支える光技術を取り入れたスマートフォンの開発が進んでいます。このスマートフォンは一度の充電で1年間使用が可能な省電力設計で、充電を意識しない生活をもたらしてくれるでしょう。より高度な情報社会をより快適に堪能できる時代は、着々と近づいてきているようです。

キーワード③:Web3.0

次世代インターネット「Web3.0」が実現する社会とは

【図2:インターネットの世界の進化】

 今後のネット社会の中で最も話題を集めそうなのは、Web3.0です。Web3.0とは、次世代のインターネットのあり方を提唱する新しい概念です。これまでインターネットの世界は「Web1.0」「Web2.0」の時代を経て進化してきました(図2参照)。Web1.0の時代は、インターネットが世の中に姿を現した1990年代を指します。Windows95の爆発的ヒットなどにより、インターネットが世の中に一気に普及した時代ですが、当時のユーザーは基本的に情報(テキスト)を閲覧するだけの時代でした。ところが、2000年代に入るとブログやSNSなどを通して誰でも簡単にテキストや画像といった情報を発信でき、双方向のコミュニケーションが楽しめる時代になりました。これがWeb2.0の時代で、スマートフォンがデバイスの主役に躍り出ました。情報の伝達はGoogle、Facebook、X(旧Twitter)などのプラットフォーマーのサービスを通じて行われるため、Web2.0は中央集権型のインターネットと認識されています。
 中央集権型のネット環境はさまざまな恩恵をユーザーに与えましたが、膨大な情報がプラットフォーマーに集まるため、経済的恩恵がプラットフォーマーに集中する現実を生みました。また、ある程度の個人情報や属性を預けることになるので、プライバシーに関する不安はぬぐえません。そんな状況を変え、人と人のコミュニケーションの形に大きな変革をもたらす可能性をもつのがWeb3.0だと、三本松氏は解説します。

ICTリサーチ・ コンサルティング部
三本松 憲生氏

 「Web3.0 は特定のプラットフォーマーに依存しない、新しいインターネットの概念です。個人情報はプラットフォーマーに預けることなくユーザー自身が管理可能で、高度なセキュリティ環境でユーザー同士が直接つながることもできます。そのため、特定の管理者が存在しないネット空間に同じ目的をもったユーザーが集い、特定のグループを形成してコミュニケーションを楽しんだり、商行為を行うことも可能です」(三本松氏)

注目を集める「Web3.0」の基幹技術

 このようなWeb3.0の世界を実現する基盤技術が「ブロックチェーン」です。ブロックチェーンとは、ネットワーク上の多くの参加者(端末)同士がつながり、データを特定のプラットフォーマーではなく参加者それぞれが分散して持つ「自律分散型システム」と呼ばれています。このシステムの特徴について、三本松氏は次のように解説します。

 「ネットワークの参加者(ユーザー)間で行われた取引は、一定数毎『ブロック』にまとめられ、『チェーン』のように時系列に並べて取引台帳に記録されていきます。そしてその台帳は、ユーザーが分散して持ち合います。そのため、ユーザーの一部が攻撃を受けても全体へのダメージはほぼありません。さらに、Web2.0以前の中央集権型の場合、データは中央の管理者がすべて持っているため、その管理者が攻撃を受けるとユーザー全員に影響が出てしまいますが、ブロックチェーンの場合、データの改ざんや不正利用をしようと思うと、データを持っているユーザー全員分のデータを改ざんしなければならないため、それはほぼ不可能と言えます。このように、ブロックチェーンの技術を活用して成り立つWeb3.0の世界では、信頼できるサービス提供者( プラットフォーマー)を介さずとも、高度なセキュリティが確保された空間内でユーザー同士が直接コミュニケーションを取れるというメリットがあります」(三本松氏)

 ブロックチェーン技術により、高度なセキュリティ環境でデジタルデータを取引することが可能になりますが、デジタルデータ自体は簡単に複製可能という弱点を持っています。そこで、ブロックチェーン技術を活用してこの弱点を補う、「NFT」(Non-Fungible Token)と呼ばれるデジタルデータの形式が注目を集めています。NFTとは簡単に言うと、ブロックチェーン技術を活用してネットワーク上のユーザーによって分散保持される、固有の識別子や所有者情報などを保有した形式のデータのことです。ブロックチェーン技術によりデータが改ざんできないため、所有者などを証明する証明書のように扱えますし、例えば画像など特定のデジタルデータ(デジタルコンテンツ)を紐づけておけば、誰かが紐づけられたデジタルコンテンツを複製したとしても、それが元のオリジナルのデータとは異なることを、ネットワーク上のユーザーが証明できます。これにより、オリジナルのデジタルコンテンツの唯一性が証明できるようになり、海外ではNFTに紐づいた1枚のデジタルアート作品に数十億円もの値がついたことが大きな話題となりました。このような事例からNFTのビジネス的な利用価値に注目が集まり、国内でも地方自治体が地域創生プロジェクトに活用するなどNFTの活用事例が増えつつあります。株式会社ガイアックスの調査では、2022年のプロジェクト数は全国で111件を数え、前年比で約8倍伸びたそうです。中でもふるさと納税返礼品として、地域の特色を織り込んだNFTアート作品を提供する自治体が増えていて、地域の主要な課題である財源確保や地域の魅力発信に貢献しています。

 「鳥取市では222種類の人気キャラクターのNFT作品をふるさと納税の返礼品として用意し、寄付額3万円につき作品1種類を提供しました。また、市内の観光施設にQRコードを設置し、読み込むと絵柄が変化する特典も設け、収蔵品としてだけでなく実際に交流人口の増加にも期待を寄せています。このほか北海道の余市町ではNFTアートに名物の希少ワインの優先購入抽選参加権利を付与したところ、1枚12万円にもかかわらず、2時間で約100枚の予約が入る盛り上がりを見せました」(三本松氏)

地方に関係人口を増やすDAOの取り組みに期待

旧山古志村の錦鯉をシンボルにしたNFTアートraf's works「 Generative patterns NISHIKIGOI」

 NFTの唯一無二性を活かし、資格や身分などの証明に活用されるケースがあります。その一例として、参加資格を証明するNFTを発行して会員限定のコミュニティを形成する「DAO(ダオ)」(分散型自律組織)が注目を集めています。DAOは株式会社などのトップダウンで運営される従来型組織とは異なり、NFTを所有する人間が運営を議論と投票で決める、自律的に運営がなされるフラットな組織で、三本松氏は「少子高齢化に伴う人口減で活気を失った地方に関係人口を増やす取り組みとして、DAOが活用されるケースが見られる」と話します。

 「例えば、新潟県の旧山古志村は、2021年12月に当地の名物である錦鯉をモチーフにしたNFTアート『Nishikigoi NFT』を販売しました。これはデジタル村民証としての証明書も兼ねており、現在、山古志地域の居住者数800人を超える、約1,600人ものデジタル村民が誕生しています。そして、コミュニティ『山古志DAO』が形成され、地域活性化のための取り組みが行われています。
 ほかにも、鳥取県智頭町と静岡県松崎町が参加する『美しい村DAO』では、地域住民とデジタル村民が協力して地方創生を行うことで、地域貢献とビジネスの両立を模索しています。例えば『美しい村DAO』に参加する自治体のNFTを購入したデジタル村民には、村の魅力を伝えるコンテンツを企画し、そのコンテンツをNFTの形で販売することが可能であり、DAO内のデジタル村民投票で承認を得られ販売された際には、NFTの売り上げの一部がインセンティブとして関係村民に分配される仕組みになっています。スポーツの世界でも、福岡のJリーグチーム『アビスパ福岡』が、日本初のスポーツDAO『Avispa Fukuoka Sports Innovation DAO』を運営しています。発行されたNFTを購入したファンはDAOへの参加権を獲得、クラブの未来を考えるプロジェクトや新グッズ共同制作など、さまざまなプロジェクトへ参加することで運営に近い立場からチームをサポートしています。まさにファンにとってもチームにとってもwin-winのDAOだと言えるでしょう」(三本松氏)

 身近な働き手不足を解消する協働ロボット、精度の高い無人技術につながる新しいインフラIOWN、地方に関係人口を増やすなど新しいコミュニケーションの形を形成するWeb3.0など、最新のICTは企業や社会の課題である「人手不足」と向き合うための多くのヒントを与えてくれそうです。

※1 Web 3.0
本来別の概念として使われていた言葉のため、Web3と表記されることも多い。
※2 生成AI
学習データから文章や画像、音楽、デザインなど、さまざまなコンテンツを作成できるAI。
※3 メタバース
インターネットを利用した3次元の仮想空間やサービスのこと。
※4 スマートマシン
これまで人間にしかできないと思われていたことを実行する、自律型の行動マシン。
※5 スーパーアプリ
一つのアプリ内で多種多様な機能が集約された統合アプリの総称。
※6 ものづくり補助金
中小企業・小規模事業者などが取り組む革新的サービス開発や、生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援する、経済産業省・中小企業庁の補助金事業。
※7 事業再構築補助金
新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取り組みを通じた規模の拡大など、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業などの挑戦を支援する補助金。
※8 低遅延
LIVE配信などの際の音と映像のズレを抑えた通信で、IOWN1.0では既存のサービスに比べて200分の1を実現。
会社名 株式会社情報通信総合研究所
設立 1985年(昭和60年)6月
本社所在地 東京都中央区日本橋人形町2-4-10アーバンネット日本橋ビル
代表取締役社長 神谷 直応
事業内容 ⑴ 国内及び海外の情報通信に関する各種調査・研究 ⑵ 地域情報化計画の立案、策定及びコンサルティング ⑶ 情報システム構築のコンサルティング及び関連調査・研究 ⑷ 経営戦略の策定及びコンサルティング⑸ 情報通信に関する各種情報提供サービス ⑹ その他
URL https://www.icr.co.jp/
〔ユーザ協会会員〕
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