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-公益財団法人日本生産性本部-
中小企業のDX戦略を担う「人材育成・確保」に必要なこと 記事ID:D10038

テクノロジーの進化にともないビジネス環境が激しく変化する中、企業のDX推進は必須の課題となっています。一方、その担い手となるデジタル人材は不足しており、思うようにDXの推進ができていないという企業が多く見られます。そこで今回は、公益財団法人日本生産性本部の主任経営コンサルタントである高橋佑輔氏に、DXの効率的な進め方、デジタル人材の育成と確保の方法について話をうかがいました。

売上高50億円未満の企業は約6割がDX未着手

コンサルティング部
主任経営コンサルタント
高橋 佑輔氏

 2023年はChatGPTを中心に、AIのビジネス活用が急速に進みました。同時にデータを収集・分析して、競争上の優位性を確立しようとする企業のDXが活発化しました。しかし、中小企業におけるDX推進はまだ不十分で、たとえ推進したくても、それを担うデジタル人材の不足が全国的に大きな課題となっています。

 それは、各種調査にも表れており、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)発行の「DX白書2023」によると、「DXに取り組んでいない」と回答した日本企業は2022年度で29.1%(米国では10.6%)、事業規模別にみると、売上高50億円以上100億円未満の日本企業のDX未着手は32.1%であるのに対して、売上高50億円未満の企業では58.9%と、約6割が未着手となっています。

 また、独立行政法人中小企業基盤整備機構発行の「中小企業のDX推進に関する調査」(2022年)によると、DX推進上の課題として挙げられる回答の上位2つは、従業員20人以下の企業の場合は「予算の確保が難しい」「具体的な効果や成果が見えない」であり、従業員21人以上の企業では、「DXに関わる人材が足りない」「ITに関わる人材が足りない」となっています(図1参照)。

図 1:DX を推進する上での課題

 高橋氏はこの調査結果から見えてくる中小企業の課題について、次のように見解を述べます。

 「従業員20人以下の企業では、デジタル化によるリターンについて十分な理解が及んでいない可能性があります。そのため、効果を勘案した見積もりを出せず、予算の確保が難しくなっています。つまり、デジタルリテラシーの不足が課題になっていると考えられます」(高橋氏)

少しずつ段階を経ながら取り組むことが重要

 デジタルリテラシー不足という課題も、突き詰めるとデジタル人材の不足が原因だと言えるでしょう。このような企業がDXを推進する場合の重要なポイントについて、高橋氏は「少しずつ段階を経てステップアップしていくこと」と言います。そこで、DXのプロセスを「環境適合型(DX1.0)」と「価値創造型(DX2.0)」(図2参照)に分けて捉えることを推奨しています。

図 2:中小企業におけるDX推進のポイント

 「DX1.0は、デジタル時代に企業を適合させる段階です。そこで最初に行ってほしいのが、バリューチェーン分析です。これは事業活動を機能ごとに分類・分析するもので、例えば製造業の場合、「企画」→「調達」→「製造」→「販売」→「サービス」といった工程から、効率化すべき部分や強化すべき部分を特定するものです。その上でアナログを簡単にデジタルへ置換できるものから始め、少しずつ高度なデジタル化で競争力を高め、維持し、さらにデジタル化を効率的に進めていくための組織変革を行うとよいでしょう」(高橋氏)

 高橋氏は「アナログのデジタル置換」について、手書きのチェックシートをExcelで整理するようなレベルのもので、少しでもデジタル化のメリットが感じられればそれでよいと言います。
 そして次の段階については、旭鉄工株式会社の取り組みが参考になります。

 自動車部品の製造を行う愛知県の同社では、市販の安価なセンサー部品を使用して製造ラインに自作センサーを導入し、稼働状況の見える化に取り組みました。その結果、100もの製造ラインで、2015年からの3年間で平均43%、最大280%の生産性向上を実現しています。これは稼働状況を見える化しただけで生産効率を向上させたDXの成功事例です。高橋氏はDXを成功させるために「デジタル化に取り組むべきポイントを見極め、無理なくできる範囲で取り組み、少しずつその効果を実感し、さらにステップアップしていくことが重要」と語ります。
 DX1.0を経た後は、新しい価値創造を行い大きな成長を目指すDX2.0へと移行します。この段階で重要になってくるのは「デジタル人材だ」と高橋氏は指摘します。

 「DX1.0は外部のベンダーに委託しても問題ありません。しかし、DX2.0の段階になると自社部門間のデータ連携に加えて社外との連携も求められ、重要なデータを取り扱う機会も増えますので、社内のデジタル人材の育成を加速させる必要があります」(高橋氏)

DX推進リーダーの育成他社との連携が成功のカギ

 DX2.0の段階ではDX推進リーダーが重要になります。候補者は、デジタルリテラシーが高いに越したことはありませんが、新たなビジネスを設計・展開する能力や全社的にリードできる能力が大切です。DX推進リーダーとして育成するためには、外部研修やオンラインの学習などの受講がおすすめですが、受講だけにとどまらず、さらに重要なことは、「学んだことを社内で実践できる環境を用意すること」と、高橋氏は指摘します。

 「DXを学ぶには、社外へ出て新しい知識に触れ、刺激を受けることのできる越境学習が有効です。しかし、それだけでは学んだことが社内でなかなか活かされません。その最大の理由が、学んだことを実践できる環境が社内にないことです。例えばデータ分析を学んだのであれば社内のデータで試してみる、また新しいデジタルツールの情報を得たのであれば社内の特定部門で実験・検証するといった環境です。この環境だけは、必ず作る必要があります」(高橋氏)

 以上の取り組みをしても、理想的なDXを推進するにはまだ人材が足りないという場合もあります。そのような場合、ベンダーに外注するほかにも手段はあると高橋氏は解説します。

 「デジタル人材の候補が社内に見当たらない場合は、現在とは異なる業務の遂行に必要なスキルを新たに身につけるリスキリングという方法を検討してもいいでしょう。リスキリングの候補者は、新しい取り組みなどに対して抵抗感が少なく、柔軟に対応できるような人材が適しています。そのような人材にDXの先進事例を学ぶセミナーなどに参加していただき、知識やスキルを身に付けてもらい、DX推進リーダーをサポートするパートナー的な存在になってもらうのです」(高橋氏)

 さらに、中小企業のDX推進にとってポイントとなってくるのが、社外との連携です。

 「例えば、学術機関などと連携するようなケースがよく見られます。自治体や大学、研究機関と連携して技術やノウハウを共有し、付加価値を生み出していくことは積極的に行うべきだと思います。また、アメリカでは競合他社との連携も盛んに行われています。例えば観光業では、ライバル関係にあるホテルや旅館がパートナーシップを結んで観光DXに取り組み、観光地に新たな付加価値を生み出しているようなケースが見られます。このようなケースでは、自社だけでは得られないような人材を活用することも可能になります」(高橋氏)

 今後、デジタル人材の不足はますます深刻化し、人材の市場価値はさらに高騰していくと予想されています。このような状況の中で中小企業がDXを推進するためには、やはり自社内での人材育成やほかの機関との連携がカギになってくるでしょう。

財団名 公益財団法人日本生産性本部
設立 1955年(昭和30年)3月
所在地(本部) 東京都千代田区平河町2-13-12
会長 茂木友三郎(キッコーマン取締役名誉会長取締役会議長)
事業内容 生産性をはじめとするさまざまな領域の調査研究に取り組み、提言活動を行うとともに、人材育成やコンサルティングといった手法を用いて日本の産業の生産性向上を図っている。
URL https://www.jpc-net.jp/
〔ユーザ協会会員〕  
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