ICTソリューション紹介

電話での話し言葉をリアルタイムでテキスト表示し、聴覚障がい者の“会話”を実現

モバイル

公開日:2019/10/29

ICTの発展とスマートフォンの普及は、コミュニケーションのスタイルに大きな変革をもたらしました。その変革は、これまで「電話を使うことが難しかった方々」の生活の質の向上に、大きく貢献しています。

SNSだけでは解決できない聴覚障がい者の日常生活を支援

スマートフォンの普及はコミュニケーションの多様化につながり、特にSNSは、話すこと、聞くことに障がいを持つ方々のコミュニケーションの活性化に大きく貢献しています。しかし、社会生活において、音声通話によるサービスはまだまだ必要とされています。

「現在の日常生活において、病院の予約、宅配便のドライバーへの連絡に電話は不可欠です。また、クレジットカード紛失時の利用停止の緊急連絡など、電話以外の手段が選択しづらいケースもあります。弊社ではCSR部主導のもと、社内の各部署が障がい者支援への取り組みを進めており、これらの取り組みをサービスとして実現する私たちの部署では、その一環として、2015年に視覚障がいをお持ちの方でもスマートフォンによる文字入力を可能とするスマートフォンアプリ『Move&Flick(ムーブアンドフリック)』を提供開始しました。さらに次の活動として、聴覚障がいをお持ちの方のコミュニケーションを支援するアプリ『みえる電話®』※1の開発を決めたのです」(竹内氏)

一般向けトライアルサービスで意見を集めて使いやすさを追求

この「みえる電話®」は、通話相手の発話内容を利用者のスマートフォン上にリアルタイムでテキスト表示し、利用者はテキストを確認しながら音声で通話するという仕組みで、聴覚に障がいのある方々の電話でのコミュニケーションを可能にするものです。

「開発は2015年秋に始まりました。音声を認識して文字化する技術はすでにありましたが、『電話を介して』というサービスは存在せず、そこに弊社が取り組む意義を感じました。開発にあたっては、まず簡易的なアプリを用意し、聴覚に障がいを持つ社員に使ってもらい、どのようなインターフェイスにすれば使いやすいかを煮詰めていく手法をとりました」(竹内氏)

▲図:「みえる電話®」の活用プロセス

こうしたインターフェイスの検討で完成度を高めた後、2016年10月に一般からモニターを募り、トライアルサービスが始まりました。

「モニターの方からいただいたさまざまなご意見の中から『聴覚に障がいを持っているため、発話も苦手だ』というご意見を機能に反映させたものが、画面上のキーボードで入力した文字を合成音声に変換して相手方に伝える『入力発話機能』です。合成音声は利用者が性別を選べるようにし、さらに入力の手間なく発話が可能な定型文も用意しました。文例はドコモショップにご来店いただいた方と手話で応対する弊社部門のスタッフと話し合い、内容を決めました。さらに利用者がよく使う文例を登録できる機能も盛り込んでいます」(竹内氏)

このような改良を経て、2019年3月に正式にサービスを提供開始しました。

「トライアルでいただいたさまざまなご意見を反映させたことで、現段階でのアプリケーションの機能はほぼ満足いただけるものになっていると考えています。正式版リリース後のアップデートも細かな修正のみです。認識率を向上させる取り組みについては引き続き行っていきたいと思います。またスマートフォンそのものやOSの進化でより便利な機能を盛り込めるようになった段階で適切に対応していきたいですね」(竹内氏)

「みえる電話®」対応事例
“受ける側”も「みえる電話®」に気配りを ~川崎市コンタクトセンターの取り組み~

「みえる電話®」から発信された通話では、まず合成音声によるガイダンス※2が流れるため、人によってはスムーズに会話に入れない可能性があります。「心とハードのバリアフリー」を掲げる川崎市に、「みえる電話®」への対応についてうかがいました。

▲(左)川崎市 市民文化局
オリンピック・パラリンピック推進室
担当課長 成沢 重幸氏
▲(右)川崎市 市民文化局
オリンピック・パラリンピック推進室
担当係長 永田 光太郎氏

神奈川県川崎市では「誰もが自分らしく暮らし、自己実現を目指せる地域づくり」を目指す「かわさきパラムーブメント」を推進しています。

「川崎市にはオリンピック・パラリンピック東京大会で使われる競技会場はありません。ただこれを契機に一層のバリアフリーを目指し、多様な方々が社会参加し、自己実現を可能にするまちづくりを進めています」(成沢氏)

「バリアフリーという言葉からはエレベーターやスロープなど施設面の整備を想像しがちですが、それと同様に心のバリアフリーも重要です。外見からは分からない障がいも含め、どういった障がいを持つ方がいらっしゃるのかを知り、お手伝いすることで、誰もが生きやすい世の中を形作ることができると思っています」(永田氏)

川崎市は、市民からの声をコンタクトセンターで受け付けています。

「コンタクトセンター『サンキューコールかわさき』は、市政に関するお問い合わせ、ご意見、ご相談などにお答えしています。専門的なご質問は担当部局に回すこともあるため、お問い合わせと代表電話という二つの機能を備える形となります」(永田氏)

このコンタクトセンターでの「みえる電話®」のトライアルサービスへの協力は、NTTドコモからの働きかけで実現しました。

「実はこのお話があるまで、『聴覚障がいのある方からお電話がかかる』ということを想像できていませんでした。話をうかがう中で『みえる電話®』からの合成音声によるガイダンスは、予備知識がなければ適切な応対ができない可能性があるということもよく分かり、トライアルサービスへの協力に際しては、事前に周知を図ることにしました」(成沢氏)

コンタクトセンターのコミュニケーターには担当部局を通じ、NTTドコモが用意したガイダンスビデオの視聴による研修を要請、コンタクトセンターからの取次ぎ、もしくは直接外部から電話が入ることもある市役所内各部署には文書での案内を行いました。

「研修、案内からほぼ1年が経ちましたが、実際に『みえる電話®』での着信実績はありません。障がいのある方にこうしたアプリケーションがあることが周知できていない可能性も考えられるので、NTTドコモとも協力の上、広報活動を検討したいと思います」(永田氏)

最後に両氏に、ICTの発展とバリアフリーとの関係についてうかがいました。

「川崎市では、メールによるお問い合わせ受付も行っており、聴覚障がいのある方々はそちらをお使いになっていたのかもしれません。ただメールでは書き慣れている、慣れていないで意思疎通がうまくいかないこともありますし、やりとりにタイムラグが発生します。アプリケーションによる『電話でのコミュニケーション』が実現すれば、一層のバリアフリーにつながるでしょう」(成沢氏)

「将来的には『みえる電話®』のようなアプリケーションを使い、聴覚障がいを持つ方がコンタクトセンターで働くという未来も見えてくると思います。ICTの発展が、人々の可能性を伸ばし、誰もが活躍できる社会の実現をもたらしてくれるはずです」(永田氏)

※1 「みえる電話®」は株式会社NTTドコモの登録商標です。
※2 「みえる電話®」の合成音声によるガイダンス例(通話相手側):「相手の方がドコモのみえる電話を利用します。あなたの声を文字でお伝えします。はっきりお話しください。サービス向上のためドコモが音声を利用する場合があります」

「かわさきパラムーブメント」 推進ビジョンのパンフレット

「かわさきパラムーブメント」

東京2020オリンピック・パラリンピック大会の開催を契機に、すべての人が活躍できる社会を構築するために、川崎市と市民の皆さんが一緒に取り組む運動です。

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