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-文部科学省 初等中等教育局-
いよいよ本格始動の「GIGAスクール構想」日本の教育はどのように進化していくのか!?

記事ID:D10016

文部科学省が2019年12月に打ち出した「GIGAスクール構想」。当初は「2023年までに整備完了」の予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により「2020年度内までに」と、計画が早められました。本格的に動き始めた「GIGAスクール構想」について、本誌ICTコラムでも3回にわたって連載してきましたが、今回は文部科学省 初等中等教育局の高橋 洋平氏に、現在の状況と今後の課題をうかがいました。

教育分野でのICT活用がOECD加盟国で最下位からの政策推進

GIGAスクール構想が政策として推進されるようになった、経緯を教えてください。

文部科学省 初等中等教育局
情報教育・外国語教育課
課長補佐 高橋 洋平氏

 そもそも日本は教育分野へのICT活用が遅れていると言われていたのですが、OECD※1の2018年学習到達度調査(PISA)※2でも、「学校の授業(国語、数学、理科)におけるデジタル機器利用時間」と「コンピューターを使って宿題をする頻度」は、加盟国(37ヵ国・地域)最下位という結果でした。ただ逆に、学校外で「インターネット上でチャットをする」や「1人用ゲームで遊ぶ」頻度はトップと、日常的に遊びに使っているのに、学ぶためには使っていない。社会全体のデジタル化が進む中、この結果が学校教育へのICT活用推進のきっかけの一つになりました。

本構想は当初5ヵ年計画でスタートしましたが、現在の進捗状況はどうなっていますか?

 新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり1年前倒しに、補正予算を組み、2021年7月時点で、1人1台の端末整備は全自治体などの96.1%で完了、全国の公立小学校では昨年3月時点で5.5人に1台だった端末が、わずか1年間で1.3人に1台まで配備が進みました(図1参照)。

教育分野へのICT活用で変化に対応できる新しい日本型学校教育を

インフラ面はほぼ整備完了という状況ですが、教育分野にICTを活用することで、どのような成果を考えていますか?

 本構想を基盤として目指しているのは「すべての子どもたちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの実現」で、令和の日本型学校教育を確立することです(図2参照)。さらにこの目標は「個別最適な学び」「協働的な学び」に加え、「校務の効率化」「教育データの活用による効果的な学びの支援」と4つのカテゴリーに分かれており。この4つを推進するうえでICTなどを活用した教育は不可欠と考えています。また、新しい学習指導要領では、情報を活用する能力は、言語能力と同様に、教科横断的な、学習の基礎となる能力と位置づけています。それは、変化が激しく、先行きが読めないこれからの時代を生きていく子どもたちにとって、必要不可欠な能力だと考えているからです。変化を前向きに受け止め、情報を上手に利活用しつつ、多様な人々と協働しながら、さまざまな社会の変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓く子どもたちを育てたいと思っています。

教育現場の変化と今後の課題

実際に小中学校では、今年の4月から配備された端末の本格的な利活用が始まりましたが、教育現場からの反応はどうでしょう?

 多くの学校や自治体では、1人1台端末を活用した学びは初めてのことで、利活用を進めていく点でまだ課題が多いのも、偽らざるところです。
現場の先生方からは高速大容量の通信インフラが整備されたはずなのに遅い、スキル面でも、教師の研修をもっとしてほしいという要望があります。

1人1台端末の利活用が進むと、授業の形態はどのように変わっていくと考えられますか? またそれによって教育現場がどう変化していくのでしょうか?

 個別最適な学びという観点で言いますと、学習が進んでいる子は発展的な内容を、つまずきの見られる子には復習も含んだ指導を、課題を乗り越えようとしている子には隣の友だちとの話し合いを、というように「個」に応じた指導が考えられます。黒板を前に40人の子どもたちに一斉に話すのみの授業ではなく、先生が学習のコーディネーターとなって、それぞれの子どもの個性や能力に応じた学びにしていく。家庭学習ではオンラインで講義動画を使って学習し、学校のリアルな学びではワークショップなどを交えた協働的な学習を中心に行う「反転学習」の試みなどもあるでしょう。また、これまでも課題であった地域差も、ICTを活用することで時間や空間の制約を超えることができ、良質な学びが地域を問わず広がるチャンスにもなるでしょう。

本年(令和3年)9月1日に発足したデジタル庁とは連携をされるようなこともあるのでしょうか?

 デジタル庁は、デジタル政策の司令塔や総合調整の役割を担っており、我々も日々連絡を取り合い連携しています。GIGAスクール構想はもちろん文部科学省が責任を持つのですが、ネットワークに関しては総務省であったり、産業界や様々な民間事業者との連携では経産省など、関係する省庁とも緊密に連携しています。GIGAスクール構想は政府全体で進める政策ですので、今後も一体となって推進していければと思っています。

まだまだ課題も多いようですが、今後どのように対応していくのでしょうか?

 文部科学省では、「GIGA StuDX推進チーム」という現場の先生も交えたチームを作って、授業での活用例などの情報収集・発信をしたり、ICT活用教育アドバイザー※3の派遣など各教育委員会の支援に取り組んでいます。地域によっては、ICT支援員※4など十分な人材の確保ができないところもあり、今後はさらに民間企業との連携も行い、学校を運営面で支援するセンターの構築のための予算なども含め、支援面を充実させていく計画です。課題は確かに多いのですが、今回のように政策が一気に進むタイミングを大きなチャンスととらえ、一つひとつの課題を子どもたちのために乗り越えていこうと今後も教育現場に呼びかけていきます。

※1 OECD:経済協力開発機構。国際経済全般について協議することを目的とした国際機関。
※2 学習到達度調査(PISA):OECDが進める国際的な学習到達度調査。PISAはProgrammefor International Student Assessmentの略称。義務教育終了段階の15歳児を対象に、2 0 0 0年から3年ごとに、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野で実施(2018年調査は読解力が中心分野)。
※3 I C T活用教育アドバイザー:国が手配し各教育委員会などに対し、派遣やオンラインで環境整備やI C Tを活用した指導方法など全般的な支援を行う。
※4 I C T支援員:各教育委員会などが地方財政措置を活用して募集・配置し、日常的な教員のICT活用支援を行う。

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