ICTコラム

ノーコード・ローコード開発で何ができるのか?

記事ID:D40068

ノーコード・ローコードツールには、さまざまな業種業態、さらには企業内の多種多様な部門のニーズにマッチしたものがあり、それらを上手く活用することでDXの推進が期待できます。本連載(全3回)の2回目は、三つの用途を取り上げ、国内で開発・販売されている代表的なツールの特徴と活用事例について解説します。

ホームページ制作におけるノーコード・ローコード活用

 現在、国内には200種類以上のノーコード・ローコードツールが存在すると言われています。以下において用途別に主なツールの特徴と活用事例を紹介します。
 まず、古くから馴染みのある用途としてホームページ制作が挙げられます。ホームページ制作用のノーコード・ローコードツールの中には、ネットショップ、ホテル予約、飲食店予約、資料請求といった専門家監修の多種多彩なテンプレート(ひな形)が用意されていたり、オンラインでの予約や決済にも対応可能なものもあります。ホームページ制作においてノーコード・ローコードツールを活用するのは今や当たり前と言えるでしょう。
 有名なツールとしては、オープンソース※1の「WordPress」や「ペライチ」(株式会社ペライチ)などがあり、多くの企業で採用されています。例えば、かすうどんの外食チェーン「加寿屋(かすや)」を運営する株式会社グローバルキッチンでは、ネットショップの開設において「ペライチ」を活用し、さまざまな決済手段に対応できるシステムを構築して顧客満足度の向上につなげています。

業務アプリ開発におけるノーコード・ローコード活用

【図:kintoneでのアプリ開発画面】

 生産管理や販売管理、財務会計などの業務プロセスをサポートするアプリを開発するためのノーコード・ローコードツールは、多くの開発ベンダーから提供されていて、種類も豊富です。ここではそのうちいくつかを紹介します。
 まずはTVCMでもお馴染みの「kintone」(サイボウズ株式会社)がその代表的なものとなります。これは一般企業から自治体、病院、学校など幅広い業種で採用されているノーコード・ローコード型業務アプリ開発ツールで、デジタルが苦手な方でもマウスの操作だけで簡単にアプリを作成できるのが特徴です。
 「案件管理アプリ」の案件情報入力画面作成を例にとると、アプリ開発画面に用意されている多くの項目メニュー(図左側)の中から、必要な項目をマウスで「案件情報入力画面」(図右側)へドラッグ&ドロップするだけで、入力項目の追加や変更が行えます。また、JavaScript※2などプログラミング言語の知識を持っていれば、ローコードツールとしてより高度なアプリの開発も可能です。
 活用事例としては、創業100周年の和装物店の株式会社京屋染物店があります。同社は、これまで受注確定案件の情報や制作指示書などを紙でやり取りしていましたが、「kintone」で開発した「受注管理アプリ」に置き換えて管理するようにしました。これにより、受注したすべての製品の進捗状況について、最終納期だけでなく、部署ごとの納期まで見える化できるようになりました。
 また、開発したアプリをパソコン向けだけでなく、iOSやAndroid向けアプリとして、「App Store」や「Google Playストア」に公開できるノーコード・ローコードツールもあります。代表的なものでは「Click」(MikoSea株式会社)があります。通常、別途開発が必要なユーザー管理やコンテンツ管理、商品管理の情報が閲覧できる画面も自動で作成されることも特徴です。「Click」は国内で数多くの企業に採用されていますが、例えばJA(農業協同組合)ではDX推進を目的とした研究会の活動の一環として合宿を開催し、プログラミングの知識がない職員でも、「Click」を使って短期間でアプリを作成できるようにするなどして、アプリ開発とともにデジタル人材の育成を行っています。
 このほか、近年では生成AIの普及によってノーコード・ローコードの世界も変化しつつあり、文章を入力するだけでアプリを自動生成する「AIによるアプリ自動生成機能」を持ったノーコードツールが開発されています。「サスケWorks」(株式会社インターパーク)などがその代表的なツールとして知られています。例えば、営業車両を管理するアプリを作成したい時には、アプリ名称欄に「営業車両管理アプリ」、アプリ概要欄に「自社の営業車両の車両情報、保険、車検などの更新管理、故障・修理などの履歴管理ができるアプリ」と入力すると、その機能を持った標準的なアプリが自動で生成されます。

業務自動化におけるノーコード・ローコード活用

 業務の効率化や人手不足を補うため、定型の業務を自動化させるRPAの普及が進んでいますが、このRPAの開発にもノーコード・ローコード型のツールが活用されています。
 国産のノーコード型RPAツールでは、「EzAvater(イージーアバター)」(株式会社テリロジーサービスウェア)がよく知られています。これは、目で見たままの動きをそのままRPAに覚えさせることができるため、パソコンで行う定型作業(Excel処理、ウェブ操作、社内システム入力など)を、直感的な操作で簡単に自動化することができます。導入事例としては、製造業での在庫管理自動化、金融機関での顧客情報入力業務の効率化などがあります。
 このほか、最近では中小企業でも各種クラウドサービスを導入してDXを推進していますが、採用するクラウドサービスの数が多ければ多いほどデータは散在化してしまい、データ連携したいというニーズが増えています。そういったニーズに応えたデータ連携ツールとして、「ASTERIA Warp」(アステリア株式会社)がよく利用されています。これは、プログラミング不要で企業内外のシステムやクラウドサービスを連携させることが可能で、業務の自動化・効率化を実現しています。例えば総合建設企業の東建コーポレーション株式会社のケースでは、異なるベンダーにより構築された基幹システムと業務支援システムを「ASTERIA Warp」でデータ連携し、人事・組織や物件情報、さらには施工進捗情報や仲介物件情報など最大数万件のデータを1時間毎~日次で連携しています。
 このようにノーコード・ローコードツールにはさまざまな用途のものがあり、業種や業態、業務を問わず、目的に応じたツールが多くの企業で活用されています。ただし、ツールはそれぞれ特性や得意分野が異なります。そこで、次号ではツール導入のポイントについて解説したいと思います。

※1 オープンソース
ソースコード(プログラミング言語で書かれた、コンピュータプログラムの文字列)が公開されていて、自由に使用、改良、配布が可能なソフトウェア。オープンソースソフトウェアとも呼ばれる。
※2 JavaScript
ウェブブラウザ上で動作するプログラミング言語。ウェブサイトに動きを与えたり、ユーザーとのやり取りを可能にするために使用される。

中山(なかやま) 五輪男(いわお)

複数の外資系ITベンダーやソフトバンクの首席エバンジェリスト、富士通の常務理事などを経て、現在はアステリア社のCXO(最高変革責任者)として幅広く活動中。2022年9月には自らが設立した一般社団法人ノーコード推進協会の代表理事にも就任し、ノーコードの日本国内への普及にも努めている。AIなどの最先端テクノロジーを得意分野とし、年間100回を超える全国各地でのDX関連の講演活動を通じてビジネスユーザーへの訴求活動を実践している。

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