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先端ICTを活用した次世代型の「スマート農業」で生産段階の省力化・自動化を実現し、マーケットイン発想で農業生産者と消費者を“1本の情報ルート”でつなぐ

働き方改革

公開日:2020/02/28

昨今、農業分野では、担い⼿の減少や⾼齢化により労働⼒の不⾜が深刻な問題となっています。また、土や水、天候といった自然を相手に作物を育むための高度な知識と経験が求められ、次世代への継承も大きな課題です。そんな農業分野に、AIやIoT、ロボット技術など先端ICTを活用した次世代型の農業である「スマート農業」が登場し、注目を集めています。

先端ICTを活用した「スマート農業」で、労働力不足を解消し、生産現場の効率化を実現する

—現状の農業課題のうち、先端ICTによってどのような課題が解決するのでしょうか。

  • ▲株式会社NTTドコモ
    地域協創・ICT推進室
    IoTデザインプロジェクトチーム
    IoTデザインガール(アグリガール068)
    金平 真由美氏

    「農業従事者の高齢化や後継者不足による労働力の不足、異常気象による生産性の低下や食料自給率の低下など、日本の農業はさまざまな課題を抱えています。そのため、AIやIoT、ロボット技術などの先端ICTを活用した『スマート農業』によって、個人の経験や勘に頼っていたところをデータで『見える化』して次世代に継承したり、生産プロセスを省力化・自動化して生産量を拡大したり、センシングデータ※1などを活用して農作物の生育などを正確に把握して、高度な農業経営につなげたりすることなどが求められています」(金平氏)

—現状、「スマート農業」は、どこまで実現しているのでしょうか。

「現状は、生産段階において従来は人による確認が必要であった作業の『省力化・自動化』が進んでいます。気象センサーや水位・水温センサー、カメラ、GPSなどを活用して、農作業のプロセスやノウハウをデータとして詳細に記録し、AIを活用して、通常とは異なる値を検知した場合は自動的にそれが警告されるようなソリューションが実用化してきています。また、ロボット技術によるトラクターや田植え機などの自動運転も進んできました。主に生産分野での省力化・自動化が進んでいるので、次に取り組むべきは、流通分野だと思っています。今の流通の仕組みは課題も多く、ここを改善することによって農家の所得向上につながると考えています。例えば、静岡県はいちごの一大産地ですが、地元で消費するいちごも往復で200km離れた東京の大田市場まで一度運ばれて、また戻るというルートを取っています。このような無駄によって、物流コストが跳ね上がり、食品の鮮度も落ちてしまいます。反対に無駄を省ければ、売り手は高く売れ、買い手は安く買えるようになる上、鮮度が向上することで流通過程の食品ロスを減らすことにもつながります。流通の無駄を省いていかに効率良く届けられるか、それによって生産物の単価をどれだけ上げられるかが、ICTに課せられた次の課題だと思っています」(金平氏)

流通の無駄を省き、生産物の単価を上げるには、“1本の情報ルート”が不可欠

—どうすれば流通の無駄を省き、生産物の単価を上げられるのでしょうか。

▲株式会社Tsunagu CEO 鈴木 輝氏

「流通の出口ともいえる販売の視点から捉える戦略が必要だと思います。今の日本の農家は、『できたものをそのまま集めて市場に運ぶ』というプロダクトアウト型なので、市場の需要とマッチしない場合は、せっかく作ったものが安くたたき売られたり、廃棄せざるを得ないといった課題があります。ここを解決するためには、『市場の需要から生産をコントロールする』というマーケットインの仕組みを取り入れなければなりません。現状の流通ルートは、農家、農協、市場、仲卸、顧客で断続していて、それぞれの間でFAXや帳面などアナログな方法でやり取りをしているので、どうしても効率化につながりません。単に生産した『もの』を集めるのではなく、生産に関する『情報』を一元的に集めることによって、いつ、どこに、どのようにものを運べばよいかを一目瞭然で把握できるようになります。つまり、生産物が農家から出荷され、店頭に並ぶまでを“1本の情報のルート”でつなげれば、売り手にとっても、買い手にとっても大きなメリットが出るということです」(鈴木氏)

—流通における“1本の情報ルート”を実現する取り組みについて教えてください。

「NTTドコモとTsunaguでは、ウェブ上でのオンライン直売の仕組みを作っています(図参照)。ここでは、農家から生産物のデータを集めることで、いつ、どこに、どれだけの生産物が出荷されるのかが分かるようになります。買い手はその情報を事前に把握し、ほしいものを、ほしい時期に、ほしい量だけ予約購入することができます。また、農協をはじめとした生産者側は生産物の供給過多や供給不足を事前に察知し、出荷時期をコントロールできるようになります。適正なタイミングで、適正な量を出荷することにより、生産者側では単価が上がり、流通業者、消費者側は鮮度の高い商品を手頃な金額で購入できるようになります。また、産地での廃棄も軽減されるので、生産者、流通事業者、消費者にとって『三方(さんぼう)よし』の関係になる仕組みだと考えています」(鈴木氏)

▲図:農産物流通における“1本の情報ルート”実現のイメージ

「アグリガール」パワーで、一次産業のICT化を推進したい

—NTTドコモが「スマート農業」に取り組んだ経緯をお聞かせください。

「弊社には農業現場のI C T化を推進する女性営業メンバー『アグリガール』がいます。このチームは、農業と接点のある仕事に携わっていれば自己申告で参加できる非公式な組織で、2014年秋に立ち上がりました。当時、農業I C T化分野でN T Tドコモは後発組でした。そこで、通信事業者としての特性を活かし、既に生産者が保有している携帯電話・スマートフォンにセンサーなどを組み合わせることで、安価で簡単に導入できるサービスの普及展開を行いました。同時期に、牛の分娩事故を防ぐためにセンサーで母牛の体温を監視し、分娩の兆候をメールで通知する『モバイル牛温恵(ぎゅうおんけい)』というサービスを開発した大分県のスタートアップ※2企業と出会い、通信及び販売業務において協業しました。そこから各分野のスタートアップと全国の支社支店とで連携した取り組みが始まったのです」(金平氏)

「オンライン直売において売り手開拓、買い手開拓を神奈川県横浜市、藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町、綾瀬市、大和市、鎌倉市、座間市、海老名市、静岡県沼津市などで展開していますが、これを全国に広げたいと思っています。オンライン直売は地産地消できる地域を中心に行っていますが、最終的には物流も組み合わせて産地と消費地を結びたいです。神奈川県のさがみ農協では、収穫物の量を何トン出荷できるかが事前に分かるようになってきています。とはいえ、これはまだ目視のデータなので、今後は畑の収穫量をセンサーで測るなどデータの精度を上げて、より精緻な生産戦略、販売戦略が組めるようになればと思っています」(鈴木氏)

—今後の目標についてお聞かせください。

「『アグリガール』は現場に入り込んで、生産者に寄り添って話を聞き、一緒に課題を解決するような存在になっていますので、この取り組みを拡充したいですね。N T Tドコモは、中期戦略の一つに『社会課題の解決』を掲げています。一次産業をI C Tの力でサポートして盛り上げることがミッションなので、今後も有望なソリューションを開発するスタートアップと組んで、農業だけでなく一次産業のI C T化を推進していきたいと思っています。一次産業が活性化すれば、産地での大量廃棄や海外からの輸入品に市場が支配されることもなくなります。このような活動を通じて、次世代に残せる社会づくりを実現したいですね」(金平氏)

※1 センシングデータ:温度や湿度、照度などをセンサーで感知して数値化したデータ。
※2 スタートアップ:単なる新興企業ではなく、短期間で社会に革新をもたらす新しい技術やビジネスモデルを事業として展開する企業。

会社名 株式会社NTTドコモ
設立 1991年(平成3年)8月
本社所在地 東京都千代田区永田町2丁目11番1号
代表取締役社長 吉澤 和弘
資本金 9,496億7,950万円(2017年3月31日現在)
事業内容 通信事業、スマートライフ事業など
URL https://www.nttdocomo.co.jp/
会社名 株式会社Tsunagu
設立 2003年(平成15年)9月22日
本社所在地 静岡県富士宮市城北町501
CEO 鈴木 輝
資本金 1,000万円
事業内容 プラットフォーム開発・運営
URL http://tsunagu.cc/
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