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「クラウド活用」を推し進め業務改革に成功した企業が成果を発表記事ID:D10008
2021年1月28日(木)、クラウド実践大賞実行委員会が主催し、総務省が共催、中小企業庁などが後援する「CLOUDINITIATIVE 2020(全国中小企業クラウド実践大賞全国大会)」が、オンライン配信により開催されました。この大会の意義、そして参加各社のクラウド活用についてレポートします。
緊急事態宣言下、大会はフルオンラインで
クラウドサービスの活用は、少子高齢化にともなう労働人口の減少、働き方改革、さらに新型コロナウイルスの感染拡大にともなう円滑なテレワークの実現など、中小企業が抱える経営課題を解決する大きなカギを握っています。そうした中小企業におけるクラウドサービスの活用例を発表し、共有するイベントが、今回ご紹介する「CLOUD INITIATIVE 2020(全国中小企業クラウド実践大賞全国大会)」です。
この全国大会は、5ヵ所で行われた地方大会の上位に入賞した10社が出場。昨年までは、参加各社が一堂に会し、プレゼンテーションを行いましたが、今回の2020年大会は、新型コロナウイルス感染症拡大にともなう緊急事態宣言下での開催となったことから、参加各社がオンラインでプレゼンテーションし、審査及び各賞表彰もオンラインで行うという、初の試みとなりました。
熱意あるプレゼンののち、各賞が決定
大会では冒頭、一般社団法人クラウド活用・地域ICT投資促進協議会副理事長の伊藤 孝氏が、大会全体像や意義などを紹介。その後、参加各社それぞれが工夫を凝らしたプレゼンテーションを行いました。
全社のプレゼンテーション終了後、審査が行われ、自社開発のクラウドサービスを活用し生産性を向上、さらにはサービスの外販による収益化も実現した「株式会社さくらコミュニティサービス」が総務大臣賞を獲得しました。ほか各賞を受賞したプレゼン内容には自社開発や、既存のクラウドサービスを組み合わせた活用事例報告などが含まれており、大会をオンライン視聴した事業者に多くの事業効率化のヒントを与えることとなりました。また参加各社が今後セミナーなどで自社の事例を紹介する機会も増えることから、中小企業各社のクラウド活用を通じた生産性の向上や事業効率化を大きく推進することになるはずです。
三友 仁志氏インタビュー クラウド実践大賞の意義とは
▲クラウド実践大賞実行委員会 委員長
クラウド活用・地域ICT投資促進協議会理事長
三友 仁志氏
人口減少と高齢化による人手不足は深刻で、限られた労働資源のもとで効率的な経営を行うことが、地域の中小企業の大きな課題となっています。人が行ってきた作業をICTの利活用により自動化することは、そうした人手不足の解消、さらにはノウハウの“見える化”と生産性の向上に大きく役立つと考えています。
「クラウド実践大賞」は、そうしたICTの一つであるクラウドを活用し、成功した事例を幅広く共有し、課題を抱える企業へのヒントの提供や、またすでにクラウドを利用している企業の一層の発展の動機づけになればという思いから、開催しております。今回はコロナ禍により初めてのリモート開催となりました。わざわざ東京の会場に出向いてのプレゼンテーションでは組織の重要なポジションにいる方々の参加は難しくなりますが、今回はリモート開催としたことで、ほぼすべての会社で社長や代表に近い方にご登壇いただき、運営者の目線からクラウド活用のメリットを発表していただけたことは大きな成果だと思います。ただその一方で、働く立場から見た評価、顧客の声といった内容があまり聞かれなかったのは仕方のないところでしょうか。また前回は大会後に情報交換の場があり、大いに盛り上がり、横のつながりも生まれましたが、今回そうした交流が持てなかったことは本当に残念です。
コロナ禍に見舞われたこの1年でしたが、クラウドを活用し、組織運営に必要な情報を管理することができた会社は、「行動の制約」「対面の抑制」から生まれる困難をかなり克服できたのではないかと思います。
次年度に向けては、優れたクラウドの活用事例を海外へ展開し、新たなビジネスにしていくことを目標としています。そしてクラウドの利活用により生まれた新たなアイデアがさらに次のアイデアにつながっていく、そうしたサイクルを「クラウド実践大賞」から生み出していきたいですね。
髙島 利尚氏インタビュー 中小企業におけるクラウド活用のメリット
▲全国中小企業クラウド実践大賞 審査員
(一社)クラウドサービス推進機構副理事長
中小企業診断士
髙島 利尚氏
クラウドを利活用することで、いつでもどこでも安全にアクセスできるICT環境がタイムリーに構築できます。また独自開発に比べ低費用での導入が可能で、トライアンドエラーでチャレンジできるなど、そのハードルが低いことも特徴です。今回の「クラウド実践大賞」での発表事例では、情報資源を紙資料からデジタル化、クラウド化することで「時間や場所を問わず社内情報を共有できること」にメリットを感じている例が多く見られました。このクラウド化の実現により、営業活動に関わる提案スピードの向上、テレワークによる育児や介護など従業員の生活環境に応じた勤務形態の実現など、中小企業のさまざまなニーズに応えることができるようになったと感じます。またさらに進み、複数のクラウドから使いたい機能を組み合わせることで、ビジネスプロセスの改善につながる効果を生み出す例もありました。
コロナ禍においては、多くの企業が“否応なく”働き方の変化を迫られました。そうした対応に役立つアプリがクラウドで多く提供されていること、そしてアプリによっては非常に安価、もしくは無料で試せることに気づいた方も多いのではないでしょうか。これがICTへの距離感を縮めるとともに、今後さらに使い続けていこうという意識の醸成にもつながったと思います。
今回の発表事例では、実際に経営者自身が使い、効率化を実感しているかどうかに、クラウドの採否や利用拡大が大きく影響しているように感じました。今後中小企業がさらにクラウドを活用し経営改革するには、経営者自身が自ら先頭に立ち、強く推し進めていく必要があるでしょう。私たちも「実践大賞」を通じ、経営者が身近に感じられる事例を数多く用意してご覧いただき、「ICTは関係ない」というトップの意識に変革を促し、「実践しよう」「やればできる」と思っていただける環境作りを進めていきたいと考えています。
全国中小企業クラウド実践大賞 入賞企業一覧
全国大会では、2020年11月の地方大会(札幌、郡山、大阪、岡山、福岡)に参加した中小企業等38社から選ばれた10社による公開プレゼンテーションが行われ、4つの判断基準(P )による厳正な審査の結果、総務大臣賞及び各賞が決定しました。
総務大臣賞 株式会社さくらコミュニティサービス
北海道札幌市 医療・福祉
利用ツール:Care Viewer(自社開発)
KAIGOクラウドアプリを自ら開発し課題解決 他社への有償提供も開始
同社の中心事業である介護事業では、紙ベースの管理により「記録のための残業」が発生し、長時間労働と生産性の低下につながっていた。この課題解決のため、クラウドサービスの導入を検討したが、フィットするものがなく、最終的に経済産業省の支援を受け、独自のクラウドサービス「Care Viewer」を自ら開発した。現場に即した機能を盛り込んだことで、残業時間の大幅な削減を達成。さらに2020年10月の同業他社に向けた有償公開では3ヵ月で570の事業所が導入、年間で約1億2900万円の売上を見込んでいる。
日本商工会議所会頭賞 隂山建設株式会社
福島県郡山市 建設業
利用ツール:Building MORE(自社開発)
建築会社の「現場目線」でアプリ開発 大手企業との協業も実現
ビルなどの一般建築でのクラウドやIoTの導入が遅れている原因として、建築物が「一品一様」であること、さらに「重層下請け構造」が一般的であるためと判断した同社は、現場に精通している自分たちが「建築会社のためのサービス・アプリ」を開発することを決断。そうして生まれた「Building MORE」が今の現場状況、今後の予定、お客さまとのコミュニケーション、書類の閲覧を可能とするなど、「CS向上・生産性向上・ES向上」を実現。現在は建設業界を超えた大手企業との協業を通じ、さらなる課題解決に挑んでいる。
全国商工会連合会会長賞 株式会社ウチダレック
鳥取県米子市 不動産業
利用ツール:カクシンクラウド(自社開発)
クラウドアプリで業務を見える化 属人性を廃して利益増を実現
地場の不動産会社を継いだ三代目は、創業50年超という歴史が生んだ「生産性の低さ」、地域トップシェアによる「驕り」という課題に直面する。この課題解決のため「業務の属人化」を解決し「業務プロセスの標準化と定量化、業務の仕組み化」を目指して既存製品をベースとしたクラウドCRM※1を開発、完全なペーパーレス化と業務内容の見える化を推進。営業の方法論を会社の資産とし、行動の再現性により特定の人に頼らない顧客営業の仕組みを構築。不動産業界初の「週休3日」と「一人あたり営業利益2.5倍」を実現した。
全国中小企業団体中央会会長賞 株式会社WORK SMILE LABO
岡山県岡山市 卸売・小売業
利用ツール:King of Time、Log-Sphinxほか
テレワーク化を機にクラウドを活用 県内有力企業レベルの就職人気も獲得
同社ではパート社員が子供の急な病気で休むことが多く、休む側、休まれる側の双方に負担を生じていたことから、2016年にテレワーク環境整備への取り組みを開始。テレワークに資する各種クラウドサービスを導入したのち、社内ネットワークに接続せずに業務を可能とする仕組みも導入。2020年にはこうした仕組みを土台にタスク管理、電子契約、クラウドPBXなどを活用し「出社しなくてもいい環境」を構築した。こうしたクラウドの活用で、パートの離職率を下げるとともに、人時生産性の大幅な向上、採用力の向上も達成した。
クラウド活用・地域ICT投資促進協議会理事長賞 株式会社ユニフォームネット
福島県 卸売・小売業
利用ツール:Sales Force Assistantなど
ブラックボックス化していた顧客情報を分析、売上増に
事業を継いだ現社長は、売上高や利益以外の顧客情報、社内情報、人材育成方法などが共有されていないことに危機感を覚え、属人的組織からの脱却を経営課題に掲げた。その解決のために多くのクラウドサービスを導入、特に営業部門では「Sales ForceAssistant」を活用、顧客情報の見える化を進め、10年間で売上高2倍を達成した。
クラウドサービス推進機構理事長賞 マツ六株式会社
大阪府 卸売・小売業
利用ツール:sansan、LINE WORKS
情報共有とコミュニケーション活性化で組織の力をアップ
「縦割り組織」「属人的な情報管理」という課題を解決するために、人脈情報を共有する「sansan」、コミュニケーションツール「LINE WORKS」を導入。月例会もリアルからオンラインに変更し「時間」「場所」の制約を取り払って意思伝達を迅速化した。さらにこの両者を活用したPDCAサイクル※2で、新たなアイデア創出も実現している。
ITコーディネータ協会会長賞 株式会社ネオマルス
大分県 電気通信工事業・人材事業・IT事業
利用ツール:サイボウズ、G Suite、AWSなど
既存クラウドサービスを活用しスピード感ある経営を実現
事業の急拡大により従業員数、取引先が増加。メールでの情報の授受に、課題を抱えていた。同社は、効率的な社内情報共有及び内部統制のために「サイボウズ」を導入。以降も運用、コスト、導入速度、セキュリティ、システム更新などのメリットを重視し、複数の既存クラウドサービスを導入、活用している。
IT顧問化協会賞 株式会社タニハタ
富山県 製造業
利用ツール:業者会員様管理システム(自社開発)
社内外の情報を見える化するクラウドアプリを開発
伝統工芸「組子」を扱う同社は、BtoB向けネット販売が拡大したことで、施主をはじめ多くの関係者との情報交換が発生、社内での情報共有と対応が困難になっていた。そこで取引先と社内の双方が利用できる独自のクラウドアプリ「業者会員様管理システム」を構築。連絡ミスや無駄な業務を削減、業績向上も実現した。
日本デジタルトランスフォーメーション推進協会賞 株式会社ロゴスホーム
北海道 不動産業
利用ツール:Google Sheets、Salesforce
広告の効果を測定し、営業効率を大きくアップ
住宅販売を手がける同社では、店舗ごとのExcelによる顧客管理、広告管理を改め、「Google Sheets」と「Salesforce」を連携させた手法へと転換。広告効果を見える化し、また集客から成約(失注)まで時間軸で追える体制作りにより、ウェブ広告の有効性を実証。さらに資料請求からのTo Doを定型化し業績アップを実現した。
審査員特別賞 税理士法人マッチポイント
北海道 サービス業
利用ツール:Money Forward、MOT/Phone、DocuWorksなど
あらゆる業務をクラウドで簡潔、効率的な運用を実現
2019年に「理想の税理士法人」を目指し従業員7人で独立開業。クラウドシステムを積極的に導入し、電話もクラウドPBXを活用。お客さまから預かった書類もすべてPDF化して保存することで、経理業務からバックオフィス業務まで在宅で可能な体制を構築。現在では従業員数は約3倍となり、地域を超えたサービスの提供を目指している。
※1 CRM:Customer Relationship Managementの略で、顧客管理システムのこと。
※2 PDCAサイクル:Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことによって、生産管理や品質管理などの管理業務を継続的に改善していく手法のこと。
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