ICTソリューション紹介
-テルウェル西日本株式会社-ICT活用の電力ピーク制御、太陽光発電など中小企業が取り組むべき「省エネ対策」とは
記事ID:D10034
近年の物価高騰、SDGsやカーボンニュートラルへの意識の高まりなどにより、企業はエネルギーコストの削減と環境への配慮がますます求められ、省エネ対策のニーズが高まっています。そこで今回は、中小企業を中心にICTを活用した省エネ対策を提案するテルウェル西日本株式会社の立石 大介氏、柴山 泰久氏に、昨今の中小企業の省エネへの意識の変化、さらに効果的な省エネ対策などについて話をうかがいました。
コスト削減から始まる中小企業の省エネ対策
(左)総合ビルマネジメント部
スマートビルメンテナンスセンタ
商品開発部門 商品開発担当兼務
担当課長 立石 大介氏
(右)営業部 営業推進部門
広域支援担当 柴山 泰久氏
SDGsやカーボンニュートラルへの意識の高まりによる消費電力の削減や再生可能エネルギーへの移行は、取り組みの規模やコスト、社会貢献へのアピールなどの理由から、これまでは大企業の実施・導入が主でした。しかし、顧客への省エネ対策の提案を通じ、日々中小企業と接する立石氏は「2020年代に入って、中小企業の意識も大きく変わってきたように感じています」と話します。
「ロシアのウクライナ侵攻による燃料高騰で電気料金が上がり、中小企業でもコスト削減の観点から『省エネ』への意識が高まり、相談が増えました。企業が取り組める省エネ対策には、オフィスや店舗の消費電力を見える化して、自動管理・抑制を行う『エネルギーマネジメントシステム(EMS=Energy ManagementSystem)』の導入が効果的ですが、導入は大企業が中心で、事業規模の小さな中小企業は導入単価に対して得られる省エネ効果が相対的に低いため、導入に消極的でした。しかし、昨今の社会情勢の変化から、中小企業の中でもEMSへの関心が高まっています」(立石氏)
高騰した電気料金を抑える方法について、立石氏は「主に契約電力が50〜2,000kW未満の高圧電力を契約されている場合、年間の最大デマンド値を抑えることが重要です」と解説します。
「『デマンド値』とは、1日を30分ごと48コマに区切り、1コマで消費された電力の1日の平均値です。法人の多くが契約している高圧電力のプランの場合、年間で最も高い月の最大デマンド値が、電気料金の基本料金額に直結します。そのため、年間最大デマンド値を計測する月(一般的に8月になるケースが多い)の電力消費量を抑えることができれば、電気料金を抑制することができます(図1参照)」(立石氏)
【図1:デマンド値の推移(イメージ)】
空調や室外機の制御をICT活用で効果的に
それでは、実際に年間最大デマンド値を抑制するには、どのような省エネ対策を行うのが効果的なのでしょう。
「代表的なのは『空調の調整』です。例えば食品スーパーの場合は空調と冷凍・冷蔵庫が消費電力の6~7割を占めているので、ここの調整が重要です。具体的な対応としては、消費電力がピークに近づくと鳴る『デマンドアラート』の設置があります。しかし、この場合アラートが鳴ると従業員が手動で空調を制御して回るため人的な作業負担が生じ、当番の従業員によって対応の差が生じる懸念があります」(立石氏)
テルウェル西日本では、この問題をICT活用で解消した「電力ピーク制御サービス」(図2参照)を展開しており、営業担当の柴山氏は次のように解説します。
【図2:電力ピーク制御サービスの概念図】
「空調と冷設機の動きを1分単位で監視しながら、店舗に設置した機器が自動的に空調を制御し、室外機への散水を行って消費電力を抑制します。同時に外部の監視センターからも、その時々の環境に合わせて制御設定を変更し、恒常的な消費電力の抑制に努めます。
また、監視センターは機器の異常検知、データ収集も行い、月次のデマンド値やCO2削減量などをレポートとして提出して店舗経営の見直しに役立ててもらえます。例えば、スーパーが消費電力のピーク時に冷蔵庫を開けて霜取りなどのメンテナンスを行うと、電力により負荷がかかりデマンド値がさらに上がるので、デマンド値の低い時間帯へのシフトを提案します。それだけでも毎日続けるとデマンド値の抑制に大きく貢献します」(柴山氏)
空調の室外機への自動散水は、ピーク時のデマンド値を下げるほか、空調の冷媒に急激な圧力がかかり強制停止する高圧カット※を防ぐ効果もあります。そのため、同サービスの利用者からは「これまでは高圧カットが起こると、空調の管理者が各地の店舗を飛び回り、回復作業に追われていたが、その負担が軽減されて業務効率が格段に上昇した」などの声が聞かれるそうです。
中小企業が投資しやすい省エネ対策の実現を
こうした電力ピーク制御以外に、中小企業が導入しやすい対策として「太陽光発電の引き合いが高いです」と立石氏は話します。
「太陽光発電は電力会社からの買電量を減らせ、クリーンエネルギーを使用することでイメージ面でも人気です。昨今は『PPA(PowerPurchase Agreement)』という、企業・自治体から場所の提供を受けて太陽光発電設備を設置・運用する事業者(PPA事業者)と、場所を提供した企業・自治体とで結ぶ電力販売契約により、高額な発電設備をPPA事業者が所有する形で無償で設置でき、発電・蓄電された電気を安価に使えるという制度があり、エネルギーコスト抑制に一役買っています」(立石氏)
また、今後中小企業でも導入が伸びそうな取り組みが「社用車や配送車への電気自動車(E V)の導入でしょう」と立石氏は話します。
「大規模なショッピングモールなどでは充電スタンドの設置が広がっていますが、中小のスーパーではまだまだ未導入です。しかし、今後は脱炭素社会への意識の高まりとともに導入が拡大していく可能性はあると思います。また、スーパーに充電施設が整えられると、災害時の緊急拠点としての需要も生まれ、地域にとっても良いことだと思います」(立石氏)
その一方で、立石氏は「中小企業が省エネ対策をより行いやすくする環境づくりが必要」と指摘します。
「省エネ対策導入の補助金制度があり、電力ピーク制御サービスにも活用はできるのですが、中小企業が補助金を受け取るには『5年以上の投資回収』が条件になります。社会情勢の変化が激しい昨今、中小企業が5年以上先を見据えるのは非常に難しく、補助金の受け取りを躊躇するケースがあります。そのため、もう少しそうした中小企業の事情に寄り添った取り組みをお願いしたいです」(立石氏)
温暖化や不安定な国際情勢によるエネルギーコストの高騰は、企業の規模を問わず大きな課題になってきています。今後、企業の安定経営のためにも省エネ対策は必須で、そのソリューションシステムの需要はますます高まりそうです。
- ※ 高圧カット
- 空調設備や冷蔵・冷凍設備に起こるトラブルの一つ。夏場に室外機の周囲が高温になりすぎると冷媒を冷やしきれなくなり、圧力が限界まで上がって強制的に運転を中止すること。
会社名 | テルウェル西日本株式会社 |
---|---|
設立 | 2001年(平成13年)4月 |
本社所在地 | 大阪府大阪市中央区森ノ宮中央1-7-12 |
代表取締役社長 | 山田 邦裕 |
資本金 | 1億円 |
事業内容 | ICTによるビルメンテナンス、不動産利活用ビジネスの提案、スマートオフィス・ハウスの運営など |
URL | https://www.telwel-west.co.jp/ |
〔ユーザ協会賛助会員〕 |
関連記事
-
2024.08.26 公開
-福井県観光DXコンソーシアム-
宿泊施設など観光関連事業者のデータを共有し県ぐるみで取り組む「稼ぐ観光」観光地では昨今、観光で地域全体の稼ぐ力を高めるため、デジタル技術を駆使しながら自...
-
2024.05.28 公開
-株式会社NTTデータ-
食品業界で進む「味のデジタル化」 AIで開発した商品も話題に近年食品業界では、これまで難しかった味覚の分析をデジタル技術で行う「味のデジタル...
-
2023.10.25 公開
-SOMPOインスティチュート・プラス株式会社-
個人健康記録の情報ネットワーク化が新しい医療サービスとビジネスを実現する会社や自治体で受けた健康診断の結果や医療機関で処方された薬の記録、自宅で日々測定...
-
2023.09.25 公開
-株式会社iCARE-
ICTと人智を活かした堅実な健康経営が「健康経営優良法人」認定への近道経済産業省が提唱する「健康経営優良法人認定制度」が注目されています。認定はホワイ...
-
2023.08.25 公開
-NTTビジネスソリューションズ株式会社-
危機的状況にこそ省人化、省力化で正しい判断を中小企業が取り組むべき「防災DX」地形や気候に特徴のある日本は、海外に比べて豪雨や台風、大雪、地震、津波、火山噴火...