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-厚生労働省 老健局-
厚生労働省が挑む超高齢時代に求められる介護支援の実践

クラウド

公開日:2022/07/25

近年、高齢者人口の増加に拍車がかかっています。来る2025年には日本の高齢者率は約30%に到達すると発表されています。要介護人口の増加も予測され、次代に向けた介護環境の速やかな整備と対応が求められています。今回は、ICTを用いた介護の質向上と介護環境の改善に取り組んでいる厚生労働省老健局の新田 惇一氏、秋山 仁氏、東 好宣氏に話をうかがいました。

高齢者急増と現役世代減少時代の介護

 2025年以降の日本は「高齢者(65歳以上)の急増」と「現役世代(15歳~64歳)の急減」の時代を迎え、介護サービスに対する深刻な影響が懸念されています。
 厚生労働省の資料によると、2025年には65歳以上の高齢者の人口は3,677万人になり、全人口に占める割合は約30%に到達すると言われています。また、この頃から現役世代(生産年齢人口)の減少が顕著となり、2025年で約7,170万人いる現役世代は、2040年には約5,978万人まで減少すると予測されています。高齢者の増加は介護サービスを必要とする層の増加を意味し、現役世代の減少はサービス体制の弱体化を示唆しています。厚生労働省では2019年度の全国の推計介護職員数約211万人が、2025年度には約243万人、2040年度には約280万人必要になると推定しており、介護の世界に厳しい現実が迫っているのです。
 このような状況を受け、厚生労働省ではさまざまな対策に乗り出していますが、その実現にはICTの活用が不可欠であると考えられています。来るべき時代に適合した介護を実現するため、同省が推進しているICTの活用事例を紹介します。

科学的根拠の活用で介護の質を向上させる

老健局 老人保健課
介護保険データ分析室長
新田 惇一氏

 これからの時代の介護サービスには、今以上の質と量の確保が必須です。厚生労働省では現在「介護職員の処遇改善」、「多様な人材の確保・育成」、「生産性向上」など、さまざまな施策に取り組んでいます。その中で、特にサービスの質の向上を目的に導入されたのが、2021年4月に運用が開始された「科学的介護情報システム(LIFE)」です。

 「LIFEとは科学的根拠(エビデンス)に基づいた介護の推進を目的とする情報システムです。介護サービスの現場では個人の経験などに頼りがちで、必ずしも科学的に効果が裏づけられた手法に基づく介護の実践がなされているとは言えない状況です。LIFEの導入により、さらに科学的に妥当性がある質の高い介護サービスが実現する予定です」(新田氏)

 介護サービス利用者の状態やケアの計画・内容などの情報をLIFEに送信すると、それがビッグデータとして蓄積・分析され、科学的フィードバックがなされます(図1参照)。これにより、例えばリハビリのADL(移動・排泄・食事・更衣・洗面・入浴などの日常生活動作)への効果を、類似した利用者の全国平均と比較するなど、各種データを分析した結果を基に介護計画を見直すようなことが可能となり、今まで以上に質の高い介護の実践につながります。また、LIFEを継続活用すると現場の業務にPDCAサイクル(PLAN〈計画〉、DO〈実行〉、CHECK〈評価〉、ACTION〈改善〉)といったプラスの連鎖が生まれ、業務の効率化や職場環境の改善などの生産性の向上にもつながると期待されています。

 「スタートして約1年が経過したLIFEですが、昨年度の段階で約7万事業所にIDを発行しています。一日でも早く高い成果をあげるために、積極的な利用促進を進めていきたいです」(新田氏)

 2040年には高齢者の全人口に対する比率が約35%に達すると予測され、介護の質向上と、生産性向上を両立するために、介護現場は革新的な手段の導入を求めています。ICTを活用したLIFEが、介護のゲームチェンジャーとなる可能性は高いと期待されています。

ケアプランの共有など介護現場の作業量を大幅削減

老健局 高齢者支援課
介護業務効率化・生産性向上推進室
室長補佐 秋山 仁氏

 質の向上と並んで、現場の作業負担の軽減も喫緊の課題です。

 「現在、居宅サービス計画書(ケアプラン)の共有にあたって、事業所に大変な負担がかかっています。例えばサービス利用者の基本情報を入力する居宅サービス計画書1表、2表とサービスの計画と実績情報を記入する6表、7表は、ケアマネジャーとサービス事業所が毎月記入や介護ソフトなどに転記をする必要があり、記入ミスが発生した場合は返戻され書き直しとなるために、関係者の心理的負担も無視できません。居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で毎月やり取りされるケアプランは主にFAXが使われ、現状、居宅介護支援事業所で作成される書類は月に700枚という試算もあります」(秋山氏)

 居宅介護支援事業所と介護サービス事業所のこのような現状を改善するため、ICTを活用して業務の効率化や業務負担の軽減を図ったシステムが「ケアプランデータ連携システム(以下、連携システム)」です。

 「 国民健康保険中央会にて構築中のこの連携システムでは、ケアプランデータ連携のために厚生労働省が発出している『標準仕様』に準じて出力されたデータをやり取りする予定です。これにより、異なる介護ソフトであっても全国の事業所でデータ連携することが可能となります。ケアマネジャーは、介護ソフトを使って作成したケアプランを連携システムに送信します。サービス事業者は介護ソフトにデータを取り込み、実績を記録し、システムを使って1ヵ月分の実績データを送信します。そして、受け取ったケアマネジャーは介護ソフトにデータを取り込みます(図2参照)。このようにシステムを介してやり取りした情報は転記が不要になるため、これまでのような転記作業や書類のやり取りも不要になり、転記ミスや心理的負担軽減が期待できます」(秋山氏)

老健局 高齢者支援課
介護業務効率化・生産性向上推進室
介護ロボット開発・普及推進室
室長補佐 東 好宣氏

 ケアプランデータ連携システムの構築は昨年度から国民健康保険中央会にて進められていますが、本格的な導入はこれからです。実証段階で協力を仰いだ事業所の反応も上々で、本年度内には試験的にスタートする予定です。
 また、厚生労働省では職員の負荷軽減のために、介護ロボットの導入支援事業も推進しています。

 「各種アシストロボットや、利用者の状態を把握する見守りセンサーなどの介護ロボットの導入支援事業に取り組んでいます。ICT関連の事業と同様に、介護の質向上と現場の負担軽減などに向けて支援を拡充しています」(東氏)

 高齢者急増、現役世代減少時代の到来を目前にした今、介護の世界でもICT化の取り組みの重要性がますます高まっていきそうです。

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