ICTソリューション紹介
-株式会社日本電子図書館サービス-新しい図書館利用のスタンダード化を目指す電子図書館サービス
記事ID:D10015
株式会社日本電子図書館サービス(JDLS)総務省の情報通信白書によると、日本における電子書籍の利用率は24.2%※1と、まだ普及途上と言えそうですが、昨年からコロナ禍の影響もあり、図書館による電子書籍の貸し出しが注目されています。今回はその普及推進の一役を担っている、株式会社日本電子図書館サービスの代表取締役社長・二俣 富士雄氏と代表取締役専務・﨑山 智弘氏に、電子図書館サービスの現状と今後について話をうかがいました。
普及が進まなかった電子図書館サービスに変化が起こり始めてきた
代表取締役社長 二俣 富士雄氏
電子書籍の普及は上昇傾向にあると言われていますが、電子書籍先進国と言われるアメリカと比べると、電子書籍の利用率は半分以下。公共図書館の導入にいたっては、アメリカが95%(LibraryJournal誌2014年調査)に対して日本はわずか4%程度(電子出版制作・流通協議会2017年7月調査)という状況です。
ところが新型コロナウイルスの蔓延により、昨年から状況が変わってきました。総務省の情報通信白書(令和3年度版)によると、昨年の緊急事態宣言下で利用したデジタル系サービスでは、電子書籍・電子コミックの利用率がテレワーク利用率よりも高いという結果に。また、政府の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金※2」により、公共図書館も電子書籍貸し出しサービス導入に踏み切る自治体や民間図書館が増えてきました。「LibrariE」という図書館向けの電子書籍貸し出しサービス(以下、電子図書館サービス)を開発・展開している株式会社日本電子図書館サービスでも、サービスを導入した図書館は2019年度末で164館だったのに対し、2021年8月時点では463館と増加し、増加率も立ち上げ以来最高だったそうです。緩慢な伸び率だった電子図書館サービスも、テレワークなどと同様に、コロナ禍が普及促進につながりました。
図書館が抱えるコスト面・労力面の負担を軽減できるシステム開発
代表取締役専務 﨑󠄁山 智弘氏
電子図書館サービス導入が伸び悩んだ要因の一つとして、﨑山氏は、「設備投資などのコスト面・運用における労力面」だと指摘。そのため、同社は、そういった図書館側の負担を軽減できるプラットフォーム※3「LibrariE」を開発しました。このシステムは、同社が出版社・著者・利権者と電子書籍配信許諾契約を結び、そのアクセス権を図書館側に販売するスタイル。しかも、クラウド型のサービスなので、図書館側が自前のサーバーや、専用のシステムを構築・運用する必要はなく、用意されたプラットフォームにパソコンからアクセスするだけで利用できます。このサービスなら図書館側は、費用や労力面での軽減が図れます。
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「LibrariE」の選書オーダリングシステム。図書館側は、書籍のセレクトや購入はこの画面からオーダーする
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図書館で利用登録をした利用者は、図書館のサイトにアクセスし、借りたい本を選ぶ。予約も可能
二俣氏も「サービスの利用料と電子書籍コンテンツのアクセス権の料金を図書館側が支払い、利用者は従来通り無料で借りることができます。ただし、アクセス権は一つの書籍に対して一つというのが基本なので、アクセス権を一つしか購入していない書籍が貸し出し中の場合は、電子書籍であっても返却待ちとなります。人気の書籍の場合は、アクセス権を3つなど複数購入いただくと、貸し出し中の頻度を軽減できます※4。これは紙の書籍も同じスタイルです。また、簡単に選書・購入するための図書館側専用ストアも用意しています」と、その利便性について述べています。
そのほか、図書館側にとっては、書籍保管スペースも大きな問題ですが、電子書籍ならその問題も解決です。貸し出し状況など、蔵書管理面の効率化も図れます。しかも、電子書籍の貸し出し期間である2週間を過ぎると、自動的に利用者は読むことができなくなります。紙の書籍では期限を過ぎた未返却書籍への対応も大きな負担でしたが、そういった労力がなくなることも、普及促進の要因となりました。
2007年から導入をしている千代田区立図書館広報の坂巻氏に話をうかがうと、「床面積が狭く蔵書数に限りがあるが、電子書籍であれば場所をとらずに蔵書を増やすことができるほか、図書館へ足を運ぶことが難しい方や、文字の拡大縮小ができるので、高齢者や視力の弱い方にも便利です。実際に、利用者の方からは、図書館に行かなくても本が借りられるのは便利、重い本を持たなくてもいいのが助かる、といった声を頂いています。また、貴重な資料を電子化して収録できる」と、サービス導入に利点があると感じているようでした。
利用者にとってのメリットと今後の課題
図書館の利用者にとっても電子図書館サービスは、図書館へ出向かなくてもいいというメリットのほかにも、スマホやタブレット、パソコンから365日、24時間いつでも、どこでも閲覧可能という利便性があります。そして、何より返却が不要です。また、坂巻氏も述べていたように、文字の拡大縮小や読み上げ機能、自動ページ送り機能などがある電子書籍は、高齢者や障がいのある方にとっては非常に大きな魅力です。
ただ、課題はまだまだあると﨑山氏は言います。
「現在も多くの出版社様と提携させていただいていますが、コンテンツの充実度は、まだ十分とは言えない状況です。特に新刊は著者の方々の許諾も難しく、なかなか配信が実現できない傾向にあります。昨年から導入が増えたとはいえ、まだ認知度や、利用頻度は低いですし、もっと電子図書館サービスのことを知っていただくための働きかけが必要だと感じています。特に『電子』という特長を活かす意味でも、GIGAスクール構想などでICT利活用に取り組む小中学生をターゲットとしたコンテンツ収集、サービスの提供方法を模索していきたいと思っています。それには、教育機関用への利用促進のための新たなライセンスモデルも必要ではないかと考えています。例えば、朝の読書時間や読書感想文など、同じ本を多くの児童や生徒が同時期に読むケースがあります。今のライセンスモデルでは、児童・生徒の人数分のライセンス料が必要です。そこで、1つのライセンスに対し一定の料金を支払っていただき、読み放題にするという、マルチライセンスモデルのパック商品化も準備を進めています。もちろん、出版社や著者との話し合いが必要なので、簡単ではありませんが、若い方たちに、より良い読書鑑賞を整えるためにも、尽力していきたいと思っています。」(﨑山氏)
※1 電子書籍の利用率は2 4 . 2 %:インターネットで提供される代表的なサービスのうち、電子書籍を利用したことがある人の割合〔総務省情報通信白書(平成28年度版)より〕。
※2 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金:新型コロナ対応に奔走する地方公共団体の取り組みを支援するために給付された、地方創生臨時交付金。コロナ対応のための取り組みである限り、原則、地方公共団体が自由に使用できる。
※3 プラットフォーム:ある機器やソフトウェアを動作させるための土台となる環境のこと。
※4 同社では、アクセス権を複数購入する以外に、現在以下のライセンスモデルを用意しています。
①2年間の期間限定および貸し出し回数52回限定: 2年間または貸し出し回数52回の制限つきモデル。 2年経過または2年以内に貸し出し回数が52回を超えた場合には、再度購入するか、下記④「都度課金」モデルに移行(一部ライセンス対象外)。
②2年間の期間限定:貸し出し回数制限なし。 2年経過した場合には、 再度購入するか、下記④「都度課金」モデルに移行(一部ライセンス対象外) 。
③期間および貸し出し回数制限なし:ライセンス買い切りモデル。
④都度課金:貸し出しする度に、ライセンス料を支払う。①や②のモデルで、期間や貸し出し回数を超えた場合、この「都度課金」に更新することができる。
LibrariE(名称及びロゴマーク)は、株式会社日本電子図書館サービスの登録商標です。
組織名 | 株式会社日本電子図書館サービス |
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設立 | 2013年(平成25年)10月15日 |
本社所在地 | 東京都品川区西五反田3-7-9平澤三陽ビル9階 |
資本金 | 2億8,000万円 |
事業内容 | クラウド型電子図書館サービス・プラットフォーム「LibrariE(ライブラリエ)」の運営 |
URL | https://www.jdls.co.jp |
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