ICTソリューション紹介

2020年2月12日(水)、東京・丸の内の「東商グランドホール(現・東京商工会議所渋沢ホール)」において、クラウド実践大賞実行委員会が主催し、総務省、中小企業庁などが共催、後援する「全国中小企業クラウド実践大賞全国大会」が開催されました。この大会の意義、そして参加各社のクラウド活用についてレポートします。

クラウドサービスの活用により業務効率化を目指す10企業がその取り組みを紹介

少子高齢化にともなう労働人口の減少に対応しつつ働き方改革を推し進めるため、日本の企業には業務効率の大幅な向上が求められています。そしてそのカギとなるのが、中小企業におけるクラウドの活用です。

今回開催された「全国中小企業クラウド実践大賞」では、クラウドサービスを活用し、収益力向上、経営効率化の取り組みを「クラウド・イニシアティブ」として自己宣言した企業に「自己宣言ロゴマーク」が贈られます。その中から大会へ参加した中小企業などに対し、書面評価により、一段上の「モデル事例ロゴマーク」が授与され、さらに地方大会で高い評価を受けた10企業が「優良モデル事例ロゴマーク」を得るとともに、全国大会に進みました。

全国大会ではその10企業が一堂に会し、「クラウドサービスを導入した動機」「導入により得られた成果」「今後の展望」などについて、1社あたり10分の制限時間のもと、プレゼンテーションを行いました。

•中小企業などの参加条件として独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のSecurity Actionの宣言が必要。

•地方大会は盛岡、長野、金沢、和歌山、福岡で開催。

 

総務大臣賞は、株式会社atsumelが獲得。挨拶に立った寺田 稔総務副大臣は、参加者へのねぎらいに続き「今回の受賞企業のさまざま取り組みは、これからICTを活用して企業の体質強化、収益力の向上、経営の効率化を目指す多くの中小企業の模範的事例になると期待しています。総務省としても、関係各位と十分連携をとり、広く周知をしていきたいです」と、今回の実践大賞への感想と、今後の中小企業などへの支援についての展望を示しました。

「クラウド・イニシアティブ」ロゴマークとは?

■自己宣言(98社)

クラウド実践による収益力向上・経営効率化に意欲的な中小企業など。

■モデル事例(うち54社)

クラウド実践による収益力向上・経営効率化する取り組みのモデルとなる中小企業など。

■優良モデル事例(うち10社)

クラウド実践による収益力向上・経営効率化したことで大きな効果を上げた中小企業など。

※数字は2020年1月31日現在

三友 仁志氏インタビュー
クラウド実践大賞の意義とは

日本各地で人口の減少、高齢化が進み、それにともない人手不足が深刻になっています。中小企業にとっては、限られた労働資源のもとで効率的な経営を行うことが大きな課題であり、生産性の向上が不可欠です。ICTの活用は、その生産性向上の大きな手がかりとなります。ICTにより手作業を自動化すれば、ミスを減らすことができます。ベテランのノウハウをICTで“見える化”すれば、誰もがそのノウハウを活用し、業績に貢献できるでしょう。今回のクラウド実践大賞は、まずはこうした賞でいわゆる成功事例を広く共有し、課題を抱える企業には解決のヒントを、またクラウドをすでに活用している企業にも一層の活用でさらなる効率化を目指す動機づけになると考えています。

▲全国中小企業クラウド実践大賞
審査会主査
クラウド活用
地域ICT投資促進協議会理事長
三友 仁志

そして今回の大会で発表されるような優れたクラウドの活用事例を国内だけにとどめず、海外に展開し、新たなビジネスとしていくことを、私は現在、夢として描いています。地域情報化で単に地域の中を改革するだけでなく、そこから生まれたアイデアを広く世界で活かしていく。そうした未来がクラウド実践大賞の先に広がっていく。そうなれば、本当に素晴らしいことではないでしょうか。

髙島 利尚氏インタビュー
中小企業におけるクラウド活用のメリット

クラウドは、いつでもどこでも情報共有できることがメリットです。外出先から何か確認したい時、会社の別フロアにいるスタッフ同士がコミュニケーションしたい時、クラウドを利用すれば即座に場所の移動なく目的達成でき、業務の大幅な効率化を実現できます。

小規模な事業者では、クラウドサービスを利活用していないケースも見られます。その多くはクラウドをどのように導入すればよいかが分からずそのままにしています。そのような事業者に対しては、分かりやすく丁寧に導入の仕方などを知ってもらうことが大切です。利活用すれば多くのメリットを得られるサービスは数多く用意されています。例えば(一社)クラウドサービス推進機構では、中小企業が安心して選べる「クラウドサービス」を認定し、ホームページ(http://www.smb-cloud.org/)で公開しています。そうしたサービスも参考にされてはいかがでしょうか。

▲全国中小企業クラウド実践大賞
審査員
(一社)クラウドサービス推進機構副理事長
髙島 利尚

時代はつねに変わっています。「昨日まで必要なかったから、今日なくても困らない」は、通用しなくなっています。自社の将来のありたい姿を描き、その実現に向けてどう取り組めばよいかを考えることが強く求められています。先に述べたクラウド活用のメリットを活かし、関係者の思いを一元化し、ダイナミックに日々の変化に適応し、目的達成に向けて進めていく上で、クラウドがきっと役に立つはずです。

全国中小企業クラウド実践大賞入賞企業

2019年11月の地方大会(和歌山、金沢、盛岡、長野、福岡)で発表・登録があった54社のクラウドサービス実践事例の中から選ばれた10社のプレゼンテーションでは、クラウドを活用し業務改革に取り組む強い姿勢がうかがえました。そのプレゼンテーションの概要及び総務大臣賞や各賞を受賞された企業をご紹介します。

総務大臣賞
株式会社atsumel

愛知県名古屋市 不動産コンサルティング

利用ツール:Salesforceなど

クラウドの活用で事業を急拡大。働きやすさも両立

アップウィッシュ株式会社(不動産・建設業)のグループ会社として2015年に設立された同社は、アナログによる顧客管理、新聞の折込チラシやポスティングによる営業プロセスを見直し、情報をクラウド上の営業支援ツールに一元化。従来、各営業スタッフに頼っていた問い合わせ対応はインサイドセールス※担当に集約し、アポが取れた案件を営業に回すというフローに転換。顧客の属性に合わせた情報をシステムにより自動的に提供。この改革により、商談の設定数は4.4倍、年間休日は1.3倍に。また同社は、不動産業界他社のクラウド導入も支援している。

日本商工会議所会頭賞
ダイヤ精機株式会社

東京都大田区 測定器製造

利用ツール:Lista

グループウェアの活用で情報共有を推進、生産性を向上

業務の流れの分析により、機械の稼働率を下げる原因が会議、電話応対、製造現場と営業との確認であると判明。生産性を上げるためにはすべての部門の情報共有が不可欠であるとの結論から、クラウド上のグループウェアに情報を集約。生産スケジュール、プロジェクト管理、社内チャットなどをトップページで一覧できる仕組みを構築し、社内の情報伝達と共有を迅速化。営業と設計の情報共有による受注の平準化、残業時間や会議の削減、目標の“見える化”による社員のモチベーション向上など、大きな成果を得ることができた。

全国商工会連合会会長賞
株式会社航和

岩手県雫石町 介護施設・介護保険サービス事業所運営

利用ツール:ほのぼのNEXTなど

煩雑な事務作業をクラウド管理に移行、離職率低下を実現

現場で働く介護士に対するヒアリングにより、離職率につながる介護職の苦労が、現場そのものよりも情報検索、伝達にともなうアナログの事務作業であることが明らかになり、改革に着手。介護サービス利用者の体調情報から利用実績、介護計画の作成、請求書まで、クラウドサービスとタブレット端末の連携で、一元管理できる仕組みを構築し、情報共有を実現した。また、これまでの「手書きメモをパソコンへ入力する作業」などの“二度手間”や煩雑な引き継ぎも撤廃し、導入前に28%だった離職率を8%まで向上させることに成功した。

全国中小企業団体中央会会長賞
株式会社コスモテック

愛知県名古屋市 プレス機器保守

利用ツール:SalesQuoteAssistantなど

クラウドで業務情報を“見える化”、業務中核への適用も視野に

積算の根拠が分からない紙ベースの見積書や検索が困難な工事書類、写真データの個人保管など、さまざまな情報とノウハウが属人化したことで、赤字受注工事の頻発などの課題が発生。この課題解決のため、誰もが適切な見積もりを作成できるソリューションや写真データ共有、経理システムなどを導入、情報の“見える化”を推進。現在はクラウドを中核業務であるプレス機器保守そのものに活用すべく、海外を含めた遠隔地のプレス機器にセンサーを取り付け、オンラインで状態把握し、必要に応じメンテナンスする仕組みの構築に取り組んでいる。

クラウド活用・地域ICT投資促進協議会理事長賞
株式会社ジェイ・バン

富山県富山市 研修・コンサルティング

利用ツール:Salesforceなど

クラウドが「一人でも」「どこでも」働ける環境を実現

自社開発のコミュニケーションアプリの販促、サポートのためクラウドを活用。人手で30分かかっていた「お試し版」発行を自動受付により3秒に短縮。見積もり、契約、請求、入金もオンライン化、さらには代理店との会議や勉強会もクラウドのTV会議システムを利用することで、「一人でも」「どこでも」働ける環境作りに成功した。

クラウドサービス推進機構理事長賞
株式会社竹延

大阪府大阪市 専門塗装・外装リニューアル工事業

利用ツール:Salesforceなど

“職人向け”クラウドアプリを開発、「誰がどの現場にいるか」も“見える化”

アナログによる非効率な人材管理を解消し、人手不足を補う外国人人材の受け入れも視野に入れクラウドアプリを開発。分かりやすい勤怠情報の入力、交通費の自動計算、職人派遣先の容易な把握などを実現、バックオフィス業務もサポート。ベテラン層にはマンツーマンでの研修も行い利用率向上も達成。現在はアプリの一般向け販売も行う。

日本デジタルトランスフォーメーション推進協会会長賞
株式会社マックスヒルズ

大阪府大阪市 アプリ事業

利用ツール:Salesforceなど

自社アプリの利用拡大のためクラウドを活用し販促

自社開発のスマートフォンアプリの認知度向上、人手不足などに対応するためクラウドを活用。見込み客のホームページ訪問履歴を基にメール自動送信を行う仕組みで新規問い合わせ数拡大に成功。クラウドデータをAIが解析し営業支援を行うことでアポ獲得率の大幅な向上も達成。2019年のアプリ登録者数は、2017年の5倍以上という成果を挙げている。

審査員特別賞
日美装建株式会社

北海道札幌市 オフィスビルなどへの清掃員派遣

利用ツール:Salesforce

工事の管理を紙からクラウドに移行、赤字現場ゼロを実現

紙による管理で伝達不足が発生、クレームによる再訪問などで現場数の約1割が赤字という状態を改善するため、クラウドを導入。現場ごとのコスト、売上などを可視化し、コスト意識を高めることで、導入から2年目で赤字件数を1/6に、現在はほぼ0件に。さらに請求書のオンライン発行により残業時間ゼロも達成している。

審査員特別賞
松月産業株式会社

宮城県仙台市 ビジネスホテルチェーン

利用ツール:Microsoft Office365など

クラウドを通じたスタッフへの情報共有でサービスを向上

東日本大震災で社内サーバーがダウン、クラウド利用に転換。その後スタッフ全員の“数字へのこだわり”が売上とお客さま満足度の最大化につながると考え、情報共有を推進。レストランの売上目標、クチコミに直結する清掃スタッフの作業時間などを可視化し、グループ内のホテルそれぞれが切磋琢磨し売上を競う環境を実現した。

審査員特別賞
株式会社小松電業所

石川県小松市 産業機械制御装置製造

利用ツール:Microsoft Office365など

工場と間接業務の双方にクラウドを導入、生産性を向上

生産性向上のため、工場にIoTと組み合わせたクラウドツールを導入、工程あたりの時間短縮や稼働率向上を達成。間接業務にはグループウェアや勤怠管理、決済のクラウドを活用し、稟議や申請のスピード化、チャットやビデオ会議を通じ従業員同士のコミュニケーションを支援。今後は日次決済やリアルタイムKPIの導入なども視野に入れる。

  1. ※インサイドセールス:内勤で問い合わせ電話やメールに対応、成約可能性の高い見込み客の情報を営業に流すとともに、可能性の低い見込み客については継続的にフォローし成約可能性を育てる職種。

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