事例系トピック

2018年頃からプロセスマイニング(Process Mining)という言葉を耳にするようになってきました。日本では「働き方改革」の一環として、労働人口減少による人手不足の解消と生産性向上に寄与する手法としてRPA同様に注目され始めています。その特徴や今後の展望について、日本語プロセスマイニングツール開発の先駆者であるエヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社にお話をお聞きしました。

日本では「働き方改革」の一環としてRPAと並行して注目されてきた

—始めに、プロセスマイニングの歴史的背景についてお聞かせください。

柏尾 欧米では、2000年初頭から業務の効率化を目的に、プロセスマイニング手法が開発され始めました。一人ひとりが行っている作業を集合体として可視化し、無駄を省くというのが主な役割で、BPR※1やERP※2などと同様に、業務効率化の手段として広く普及するようになったのです。日本では、2017年頃から「働き方改革」の一環としてRPA※3を推進する企業が増え、それと並行してプロセスマイニングが注目され始めました。RPAを実装するには、業務をシナリオ化しなければならず、シナリオ化を効果的に行う手段としてプロセスマイニングを導入する企業が増えてきたのです。

デジタルビジネス推進室 課長 柏尾 明希人氏

▲デジタルビジネス推進室
課長
柏尾 明希人

—プロセスマイニングとは、具体的にどのような技術なのでしょうか。

柏尾 プロセスマイニングは、複数のパソコンや業務システム、サーバーなどからログ※4を取り出し、抽出したログデータを解析して、フローなどの形で可視化する仕組みです。業務の責任者や担当者にインタビューしてプロセスを描くのと違い、ログデータという事実から業務プロセスを可視化することが特徴です。一口にログデータと言っても、同じ人が月に何百回、何千回と同じプロセスを行っている場合は効率化しやすいですよね。一方で、複数の人が同じような業務を行っている場合、人によって生産性が異なるので、まずはログデータを統合した上で、生産性を考慮して最適なフローを導き出す必要があります。事務職の方は、パソコン上で一人当たり月に10万~100万レコードにも及ぶ作業をしていますが、それらのログデータから課題となるような業務の繰り返しを抽出し、可視化することがプロセスマイニングのコアな技術と言えるでしょう。広義には、可視化した結果から、最適なプロセスになるように業務を統合したり、自動化しながら業務改善を続ける取り組みそのものもプロセスマイニングと言われています。

—プロセスマイニングは、日本の企業でどの程度浸透してきていますか。

岡村 日本では、プロセスマイニングはRPAや「働き方改革」と同じ文脈で語られることが多いのですが、2017年秋頃のユーザー企業の意識は「RPAツールを導入すれば働き方改革が進むだろう」という感じで、どのツールを選定するかが主な課題となっていました。ただ、当然のことながらツールを導入しただけでは「働き方改革」は実現しないため、最近の課題は「RPAやプロセスマイニングツールを導入して、どの業務課題をどの程度まで解決するか」という、導入前の課題整理や導入後の効果測定に意識が広がってきていると感じます。プロセスマイニングは、ここ数年で広く普及してきたと言えるのではないでしょうか。

デジタルビジネス推進室 岡村 翔子氏

▲デジタルビジネス推進室
岡村 翔子

大企業と中小企業ではプロセスマイニングツールに求める機能は異なる

—現行のプロセスマイニングツールの特徴と今後の展望を教えてください。

柏尾 一般的に、大手企業は業務課題が明確で、ERPやCRM※5などの業務システムに連携するログデータから業務プロセスを導き出し、効率化を推進することが求められます。一方で、中小企業では、業務課題を明らかにすることからスタートすることが多いので、パソコン上のすべての操作ログといった雑多で膨大なデータを解析し、ビジネス課題として導き出すことが求められるのです。パソコン上の操作ログを解析する場合、事前に課題となりそうなことを一つ一つ設定することは現実的ではありません。数百台~数千台のサーバーが稼働することになりますが、AI(人工知能)を活用して、類似度の高い業務を自動的に検知し、業務課題として導き出せるツールならば導入効果が高いのではないでしょうか(図1参照)。


▲図1:プロセスマイニングツール AIログ分析利用イメージ

岡村 また、レポートの見やすさも重要です(図2参照)。プロセスマイニングツールは欧米発のものが多く、UI※6も比較的良いのですが、設定するのが煩雑であったり、結果が読みづらいものが多いのが現状です。今後は、導出した業務課題をAIが「ここが課題です」と分かりやすくコメントしたり、スマートフォン画面でレポートを見て結果をすぐに読み取れるものが選ばれると思います。また、自社のログデータだけでは課題かどうかを判断できないようなことも、他社平均と比べて、多い・少ないが分かれば、業務課題の優先順位を一目瞭然で見極められるようになります。


▲図2:プロセスマイニングツールレポート画面

業務課題の「見える化」に特化したツールを開発したい

—御社がプロセスマイニングサービスに取り組まれた経緯をお聞かせください。

柏尾 弊社も他社と同様に、「働き方改革」に資するサービスを開発しようと、2017年秋にプロジェクトがスタートしました。開発にあたっては60社、延べ300回以上のヒアリングをしたところ、「世の中に働き方改革のツールは数多くあるけれど、自社にとって何が最適なのか分からない」という課題を持つ企業が多いことに気づきました。また、その前段として、「自社や自部署にとって何が課題なのかすら明確に分からない」という声が多かったのです。そこから業務課題を導き出すことに特化したツールの開発に取り組み、現在はNTT西日本の「おまかせAI働き方みえ~る」として商品化されています。

—今後の目標についてお聞かせください。

柏尾 中小企業には専門のIT部門がなく、経営者や管理部門の方がI Tマネージャーを兼務されていることが多いのですが、その方々の手を煩わせずに、最新のデジタルテクノロジーを使って、まるで人間ドックのように課題を「見える化」し、業務改善や業務効率化に役立つツールになることが理想ですね。そのためにはまず、サービス提供者側ができるだけ多くの企業のログデータを解析し、効果の高い業務課題を導き出すことが求められます。単なる業務改善ツールにとどまらず、デジタルデータを幅広く活用できるようになることで、企業や人の働き方や暮らしを豊かにできると考えています。

  1. ※1 BPR:Business Process Re-engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の略で、業務の目的に向かって既存の組織や制度を見直し、職務、業務フロー、管理機構、情報システムなどを構築しなおすこと。
  2. ※2 ERP:Enterprise Resource Planning(エンタープライズ・リソース・プランニング)の略で、会計、人事、生産、購買、物流、販売などの基幹情報や経営資源を、統合的かつリアルタイムに処理する基幹業務システムを構築し、効率的な経営を図る経営手法のこと。
  3. ※3 RPA:Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、ソフトウエアのロボット技術により、定型的な事務作業を自動化・効率化すること。
  4. ※4 ログ:パソコンの利用状況やデータ通信などの履歴や記録を取ること。
  5. ※5 CRM:Customer Relationship Managementの略で、顧客の情報を収集・分析し、自社の商品やサービスの競争力を高める経営手法のこと。
  6. ※6 UI: User Interface(ユーザーインターフェイス)の略で、ユーザーとサービスの接点のこと。


会社概要
エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社
会社名
エヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社
設立
2000年(平成12年)3月1日
本社所在地
大阪市北区大深町3番1号 グランフロント大阪タワーC13階
代表取締役社長
白波瀬 章
資本金
1億円
事業内容
ハウジング事業、クラウド事業、ストリーミング事業
URL
https://www.nttsmc.com/