看護師への電話応対技能検定(もしもし検定)導入で患者さんとの適切な接遇と意思疎通を実現
日本赤十字社医療センター

日本赤十字社医療センターは、2016年より看護師の電話応対技能検定(もしもし検定)を導入。コミュニケーション能力を高め、正しいマナーを身につけることで、患者さんをよりスムーズにケアできる環境作りを進めています。

貴病院の概要を教えてください。

▲副院長 看護部長 認定看護管理者 古川 祐子氏

▲副院長
看護部長
認定看護管理者
古川 祐子


「日本赤十字社医療センターは、1886年(明治19年)に設立された博愛社病院を母体とする病院で、1941年(昭和16年)に日本赤十字社中央病院と改称、1972年(昭和47年)には日本赤十字社産院を統合して現在の名称となりました。2010年(平成22年)に新病院が落成、41の診療科に260余名の医師、1,000名以上の看護師が勤務し、東京23区西南部(渋谷区、目黒区など)の中核病院として機能しています。特に重点項目としているのは、小児・周産期医療、がん診療、救急救命、災害救護の四つです」(古川氏)


各専門科での実務に追われ正しいマナー習得が後回しに

貴病院において、コミュニケーションにどのような課題があったのでしょう。

▲看護部 看護副部長 認定看護管理者 井本 寛子氏

▲看護部
看護副部長
認定看護管理者
井本 寛子


「当センターの看護師の平均年齢は30歳くらいで、各病棟は20代の若い看護師により支えられています。また毎年、約100名の新人看護師がこちらで職に就きます。こうした環境のもと、看護師に正しい言葉づかいやビジネスマナーを十分に授ける機会を設けることが困難な状態が続いていました」(井本氏)

「学校で資格取得する過程では、やはり医療についての専門知識が優先されます。また病院では配属当初よりそれぞれの専門科で患者さんをどうケアするかという知識を身につけ、自分のものとすることに忙殺されるため、一般企業では入社時から始まる新人研修で教わるような社会人として身につけるべきマナーを習得する機会が充分とれませんでした」(古川氏)


そうしたことは看護師としての業務上、どのような不都合につながるのでしょうか。

「例えば患者さんをケアする時、看護師は適切なケアができるように場所や自分の位置を選びます。しかしそれが患者さんから見て上座にあたる場所になってしまうこともあります。この時看護師に『自分が上座にいる』という知識があれば、『こちらから失礼いたします』という言葉が自然に出てくるはずですが、知識がないことでそうした気づかいができないのです。また当センターは高層ビルとなっているため、院内の移動にはエレベーターが欠かせません。そのエレベーターに患者さんやお見舞いの方々、また外からいらっしゃる医療関係者をご案内する時も、ビジネスマナーに欠ける振る舞いが出てしまうのです。また、患者さんと治療を巡ってのコミュニケーションにも、課題がありました」(井本氏)


コミュニケーション能力が患者さんの適切なケアにも貢献

それはどういった内容でしょうか。

「まず看護師と患者さんとでは、医療についての専門的な知識に大きな差があるという、いわゆる『情報の非対称性』があります。その一方で、患者さんの病気に対する知識が誤っていることも珍しくありません。『これを食べるとこの病気が治る』的な情報が、その典型例です。看護師はケアを進めるにあたり、そうした思い違いをほぐしていく必要があるのですが、どうしても仕事に追われるあまり、自分の考える結論にすぐに誘導しようとしたり、『あなたが間違ってますよ』と頭から否定するような言い方をしてしまうことがあったのです。もしファーストコンタクトがこうしたコミュニケーションで始まると、患者さんに『この人は私の話を聞いてくれない』というイメージが刻み込まれて、以降も円滑な意思疎通ができなくなります。これは適切なケアの妨げにもなってしまいます」(井本氏)

「また医療の現場では、患者さんが“正解のない選択肢”という、一般の社会では稀な意思決定が求められることも少なくありません。例えば手術をするかしないか、二つの手術のうちどちらを選ぶかといったケースです。こうした選択にはそれぞれリスクがあり、最終的な選択は患者さんご本人に委ねられます。しかしこうした場面で患者さんから『どちらが良いの』と尋ねられた看護師が、患者さんと一緒に悩んでしまったり、選択の部分に立ち入ったりしてしまうことがあるのです。もし一定のコミュニケーション能力があれば、適切なアドバイスをしながらも『決めるのは患者さんです』とご理解いただける方向に誘導できるはずです」(古川氏)


もしもし検定導入により、マナーへの苦情は減少
感謝の声が多くなった

もしもし検定の導入は、そうした課題を克服するためですか。

「従来からこれらの課題は肌で感じていて、ふだんの研修の中でも気づかいやマナーについての意識づけを進める取り組みを行っていました。しかし、それはあくまで各領域、部署の管理者の積極性に任され、さらに明文化されたものではなかったため、共通の基盤として意識づけされにくく、管理者が変わるとせっかく積み上げたものも消えてしまうという状況だったのです」(井本氏)

「しかしもしもし検定は、受検者全員がテストという課題に挑むため、そこで覚えたことを共通認識として活用することができます。また看護師は試験に向けて勉強することが好きなタイプが多いと思っています。そのためか、去年の導入からすでに100名以上の4級合格者が出ています。この合格者が各専門科で働くことで、コミュニケーションや接遇マナーの底上げと共通化に役立っています」(古川氏)

もしもし検定を導入してからどのような効果が生まれていますか。

「もしもし検定をきっかけとした部署内教育での意識づけの効果もあったのでしょうが、マナーについての苦情が各専門科からこちらに上がってくることが少なくなりました」(井本氏)

「患者さんから直接お声をいただく『ご意見用紙』でも、接遇についてのクレームが目に見えて減少しました。逆に丁寧な接遇への感謝の声が多くなっています」(古川氏)


今後は新人看護師の早期のもしもし検定受検も視野に

今後の目標について教えてください。

「働き始めた看護師がまず覚えるのは各専門科での仕事ですが、その段階でもしもし検定を受検してもらうなど、コミュニケーションスキルを磨くカリキュラムを導入することも、将来的には検討すべきではないかと思っています。仕事において壁に当たることの多い新人看護師にとって、もしもし検定合格で仕事に役立つ知識を習得したと認められることは、モチベーション向上に役立つはずですから」(井本氏)

「コミュニケーションに不安があり、電話やナースコールに返事ができない新人看護師は増えています。そうした不安の解消にも、早期のもしもし検定は役立つのではないでしょうか」(古川氏)

ユーザ協会にご要望はありますか。

「医療現場というのは、これまで述べたようにさまざまな特殊性を持った職場です。そうした職場で働く看護師のために、さまざまなシチュエーションでどのように患者さんに接し、振る舞うべきかという、コミュニケーションとマナーに特化した書籍をご用意していただけないでしょうか。例えば医師が病状についてシビアな説明をする場合、看護師はどこに立つのがいいか、エレベーターに患者さんをご案内する時、すでに別の患者さんが乗っていたらどうすべきかなど、一般には出てこないシチュエーションをカバーした教本があれば、看護師の成長に大いに役立つはずです」(井本氏)

「全国には毎年多くの新人看護師が誕生しています。そうした若い看護師は、皆同じようなことに悩み、不安に思っているはずです。ぜひご検討をお願いしたいと思います」(古川氏)


組織概要
組織名
日本赤十字社医療センター
設立
1886年(明治19年)
所在地
東京都渋谷区広尾4丁目1番22号
院長
本間 之夫
事業内容
医療業務全般
URL
http://www.med.jrc.or.jp/
日本赤十字社医療センター

電話応対技能検定実施機関
オフィスKEI株式会社 http://officekei.tokyo/
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