アサーション

第32回「聴く」ことは心のメンテナンス

これまで夫婦、親子、上司と部下との間などで、相手の話に耳を傾けることの大切さを考えてきました。「聴く」の最終回は、相談ごとなどをよく「聴く」ためには特別な時間が必要なこと、その時間はどのくらいが適切なのかについて考え、聴いてもらうことは「心の健康の維持」にもつながることを紹介します。

相手の話を聴くことは集中力とエネルギーが必要

夫婦の間で、親子の間で、また上司や部下との間で、相手の話に耳を傾ける時間を持つことは、人間関係をより快適にしますが、「聴く」ことは、集中力とエネルギーが必要な作業でもあります。話の途中で、真剣に相手の話に耳を傾けることができなくなった経験を持つ人もいるでしょう。そんな時私たちは、相手の話を聴く時間が短すぎても長すぎても相手に不親切かもしれないと、戸惑います。相談ごとや複雑な話を聴き、適切に対応するためには、どれくらいの時間が適切なのでしょうか。

話すほうも、聴くほうも適切な時間は45~60分ほど

一般的に、相手の話にじっくりつきあう必要がある場合には、45~60分ほどの時間が適当だとされています。皆さんも短時間にその場で解決しない案件だと判断したり、あらためて相談しようとする時、1時間ほど時間をとろうとしますが、実はこれは、カウンセリングの1回の面接時間でもあります。その理由は、カウンセリングの経験から、一つのテーマについて話すのに適切な長さであることと、集中力と心のエネルギーを必要とする真剣な話には、話すほうも、聴くほうもこれぐらいの時間が適切だと分かったからです。生活や仕事の中でも、人の話にじっくり耳を傾ける必要がある時は、45~60分とることが目安になります。

「特別な時間を設けて聴く」ことの大切さ

耳を傾ける適切な時間の長さのほかに大切なことは、「特別な時間を設けて聴く」ことです。

3人の子どもがいるある家庭のことです。母親は、それぞれの子どもの誕生日が来ると、誕生日の子どもを連れてプレゼントを買いに出かけ、そのあと喫茶店で時間を過ごすそうです。ほかの兄弟がいない場所で、子どもは家庭内では話さないことも話題にするそうです。このような特別な時間は、たとえ短時間であっても「聴く」チャンスになるだけでなく、相手を大切にしているメッセージにもなります。

「聴く」ことで心の安定がもたらされる

「聴く」ことのまとめとして強調しておきたいことは、「聴く」ことは心のメンテナンス、つまり、「心の健康の維持」にも役立つということです。会話をしている時、話を聴いてもらい、理解されると話し手はその分、心が軽くなり一息つける状態になります。それはまさに心が平常をとり戻し、新たな情報などを受け入れられる状態を回復したということです。情報があふれ、「速く、たくさん、完璧に」成果を出すことが求められる社会では、互いのメッセージが受け止められ、理解されるメンテナンスの働きこそ、次の動きの活性化につながることを覚えておきたいと思います。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。
平木 典子氏

平木 典子氏
日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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