ICTコラム

第44回 広告宣伝費をアナログからデジタルに完全移行し、経常利益3倍を達成した廃品回収業者の事例

Google広告(Google Adwords)の検索連動型広告とは

 Googleの検索機能を使っているユーザーが入力した検索キーワードに対応して、広告リンクを検索結果に表示するサービスです。下記の画像の赤枠が広告のスペースとなります。

チラシのポスティングから検索連動型広告へ

 不用品や廃品を回収するサービスを提供している企業A社からの依頼によりホームページをリニューアルしました。ホームページのリニューアル時には現状を把握するためリニューアル前にGoogle Analyticsを導入し、1ヶ月ほど経過した時に分析を行い、改善点の洗い出しなどを行った上でリニューアルしたので、問い合わせ件数も増えたとのことでした。

 その後、問い合わせは増えたものの、受注件数をもっと増やすにはどうしたらいいかというご相談がありました。

 A社はチラシのポスティングを広告宣伝の基軸としており、毎月の費用もかなりかかっている割には仕事につながらないということでも悩んでおりました。またA社は屋号に「エコ」という文言を使っていたため、チラシが投函された住人から「『チラシは“エコ”ではない』というご指摘をいただくことも多かった」とのことでした。

 そこで私はチラシによる集客を完全に止め、広告をデジタルに移す提案をしました。

 元々チラシやダイレクトメールというのは1000枚送って1~3件反応があるかないかであり、たとえ反響が無くともチラシを作成した時点で費用が発生します。

 検索連動型広告であれば、表示されるだけなら費用は発生せず、クリックした時のみ費用がかかります。

  現状 改善案
自然流入 6,400件 6,400件
検索連動型広告からの流入 未実施 3,200件
コンバージョン率※ 1.25% 1.25%
コンバージョン数※ 80 120
商談率 25% 25%
商談数 20 30
受注率 50% 50%
受注数 10 15
客単価 1,000,000円 1,000,000円
売上金額 10,000,000円 15,000,000円

<参考文献>
一般社団法人ウェブ解析士協会(WACA)カリキュラム委員会『ウェブ解析士2018 認定試験公式テキスト』、ウェブ解析士協会、2017年、81頁

 今回の事例の場合はアナログでの広告費をそのままデジタルでの広告に使ったので予算が決まりましたが、上記の表のように目標とする売上金額から検索連動型広告の流入数を計算することも可能です。

 検索連動型広告からの流入を3,200件増やすとしたら、仮にCPC※が100円の場合、32万円の広告出稿費となります。商談率や受注率を向上することが出来れば流入数・広告出稿費はもっと減らすことが出来ます。

アナログからデジタルへ完全移行

 チラシの場合は印刷代だけで毎月15万円、そのほかにデザイン料やポスティングする人件費等がかかりました。そこで1ヶ月あたり15万円の予算で検索連動型広告の運用を始めることになり、チラシのポスティングは止めることにしました。

 ただ検索連動型広告から通常のホームページに誘導しても、ユーザーに離脱される可能性が非常に高いので、検索キーワードを入力したユーザーの需要にマッチングした情報を提供でき、ページを遷移することなく目的を達成できるようにLPを制作しました。

広告を出したら運用は必須

 検索連動型広告は、1クリックあたりの金額は安くて100円以下ですが、高価なキーワードだと5,000円以上するなど料金の幅が広いことが特徴です。Google広告(旧Google Adwords)は入札制となっており自分で予算を調整できます。入札制とは言え、高い金額でなければ広告が表示されないという訳ではありません。入札金額のほかに品質が考慮されます。Google広告は低予算から始められる広告の1つです。見出し・表示URL・説明文がセットで表示され、それぞれ自分で決めることが出来ます。「地域+業種」のキーワードだけではなく、いかに競合が少なく安く入札できCPA※3が安くインプレッション数が多いかが重要なので、ロングテールキーワードにも注目するのが大切です。

 クリック単価であるCPCに注目がいってしまいそうな検索連動型広告ですが、CPAを重視して運用します。CPCがいくら安くてもそこからコンバージョンにつながらないのでは意味がありません。Google広告はGoogle Analyticsとも連動が可能なので、Google広告とGoogle Analyticsの両方を用いて、効果を計測します。1回の売上・利益から見てCPAが合わない広告は避け、よりCPAの安い広告を継続させていきます。この事例では15万円という予算のうち10万円を継続させる広告に、残りの5万円で新規キーワードを試したり、見出し・説明文の最適化を繰り返したりしていきました。キーワードプランナーを利用して、キーワードの検索ボリュームや競合の様子も参考にするといいでしょう。

▲Google広告 キーワードプラン(クリックで拡大)

 また、自分たちでは気づいていなかった“埋もれているキーワード”を発掘することも重要です。この事例では「不用品」や「廃品回収」などのメジャーなキーワードだけじゃなく「遺品整理」や「ゴミ屋敷」などといったキーワードを発掘していきました。

 また説明文を複数作り、どちらの方が効果が高いのかA/Bテスト※4なども行いました。予算を細かく分け、多くのパターンの広告を出稿し、効果測定を行い、改善を繰り返して運用していきます。もちろんインプレッション数も重要です。CPAがどんなに安くても表示されなくては意味がありません。このように5万円の枠で高い効果が出たものを10万円の予算枠に入れ、10万円の予算枠から効果が低いものを除外して行き、10万円の継続広告枠を常にブラッシュアップしながら運用していきます。またLPもコンバージョン率を高めるために、随時修正を加え、検索キーワードを入力したユーザーの需要に応えられるものにしていきます。

経常利益3倍を達成、コストはそのままにパフォーマンスを向上

 運用を始めてすぐに、アナログ広告時と同じ広告宣伝費の予算で経常利益2倍を達成しました。検索連動型広告の適切な運用を続け、半年後には経常利益がアナログ広告時の3倍になりました。

 デジタルで広告宣伝を行っていない企業の方々に、本記事が参考になれば幸いです。

※1:この表の「コンバージョン」は「お申し込みやお問い合わせ・資料請求等をした数/流入数」を指す。
※2 CPC:クリック単価。広告の表示によって得られる、クリック1回あたりのコストを示す指標。計算方法は「広告掲載費用÷クリック数」となる。Cost per Crickの略。
※3 CPA:顧客獲得単価。商品購入や会員登録など、利益につながる成果を1件獲得するために要したコスト。計算方法は「広告掲載費用(CPC)÷コンバージョン数」となる。Cost per Aquistionの略。
※4 A/Bテスト:いくつかの異なる種類の広告・メルマガなどを用意し、どの広告・メルマガなどが高い効果を出したか比較するテスト。

丸山 純一郎氏

Webストラテジスト(Web戦略士)。明治大学法学部法律学科中退。1998年よりWeb制作を開始。フロントエンドエンジニアからスタートし、個人事業・会社勤務でWebディレクターを務める。ホームページの制作はもちろんマーケティングやコンサルティング、データ分析・アクセス解析なども行う。

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