ウェブ解析士に学ぶウェブサイト運用テクニック Vol.31

マーケティング戦略を策定するためのフレームワーク

小熊 亮人氏小熊 亮人氏株式会社トラスWebディレクター。WACA認定上級ウェブ解析士。
経営コンサルティング事務所のアクセス解析や改善提案を担当、現在は大手通信企業に常駐し、サイト運用ディレクションに従事。
https://www.trass.co.jp/

前回は、ウェブの役割・ゴール設定の仕方、地域の強みの見つけ方を中心にお話しました。今回は、実際の地域をモデルにして分析を行い、マーケティング戦略の方向性を検討します。

地域創生×フレームワークの実例

マーケティング戦略や企業戦略を考える上で、フレームワークを用いることがとても有効です。そこで、ある市(以降A市)をモデルに、地域創生の施策決定にSWOT分析を活用した実例をご紹介したいと思います。

A市は県の県都であり、市の西方には美しい海岸を望み、東方は緑豊かな山間地に囲まれるなど多種多様な自然環境にも恵まれ、四季折々の風景や、海の幸・山の幸を味わうことができます。

都市環境としてはJR駅を中心に商業・行政機能などの都市基盤整備が進み、道路や公園などが機能的に配置された良好な市街地が形成されています。 また、戦国大名が築いた街並み跡がほぼ当時のまま残されている遺跡など、歴史的に非常に価値のある名所・旧跡が数多く点在しています。

一方、A市が抱える課題としては、近隣大都市への人口・経済の流出、高齢化、隣接する市と比較して地域ブランド確立の遅れなどが挙げられます。

これらをもとに、A市のSWOT分析を行うと、以下のようになります。

A市のSWOT分析
© 小熊 亮人 2018

ここから戦略立案やマーケティング計画を策定するために「クロスSWOT分析」を行います。

A市のクロスSWOT分析
© 小熊 亮人 2018

強みを活かして機会を最大限に利用する施策(積極・成長戦略)として、繊維・化学産業という歴史ある産業の活用や、新幹線の伸延を見越した企業誘致、近隣大都市に近接している好立地を活かして歴史的名所巡りツアーの企画などが挙げられます。

強みを活かして脅威を乗り切る施策(差別化戦略)として、女性就業率の高さから女性の働きやすさをアピールすることでの労働力の誘致・製品開発、住み良い街をもとに地元就職・UIターン者の積極的な受け入れ促進などが挙げられます。

競合比較 - A市とB市の比較

A市とB市との比較を行ってみます。

A市の人口は約30万人です。同程度の人口規模をもつ市として、B市(人口約26万人)を例に挙げ、他企業・組織のウェブサイトアクセス情報を無料で取得できるSimilar Web(https://www.similarweb.com/ja)を用いてウェブサイトの比較を行います。(各市の当初予算は、A市が約2,000億円、B市が約2,600億円)

Similar Webは競合のアクセス情報を無料で閲覧できるサービスですが、ウェブサイトを巡回するクローラーなどによる推計値を使用しているため、実際の数値との誤差が数倍程度出てしまう可能性があります。傾向を把握するための参考数値と捉えるのが良いでしょう。

まず、各市の公式ページを比較します。こちらは居住者向けに市政の情報や防災情報、結婚や引越等のライフイベントにまつわる情報を発信しています。

A市
© 小熊 亮人 2018

B市
© 小熊 亮人 2018

アクセス状況を見ると、セッション数に2倍近い数値の差が出ています。

オーガニックからの流入はA市が約8.8万セッション、B市が約10万セッションと大差はありませんでしたが、ダイレクトでの流入はA市が約2.1万セッション、B市が約8.1万セッションと数字に開きがあります。

ダイレクトでの流入は流入元の判別ができませんが、URLの直接入力やお気に入り(ブックマーク)からの流入、スマートフォンアプリからウェブページへの流入などがダイレクトに分類されます。

直帰率ではA市が46.44%、B市が60.23%となっており、他ページへの導線の分かりやすさではA市が優れていると考えられます。

次に、各市の観光サイトを比較します。

A市
© 小熊 亮人 2018

B市
© 小熊 亮人 2018

残念ながら、A市の観光サイトのサマリーは取得ができませんでした。トラフィックソースについて数値は取得できたものの、サンプル数が少ないので精度は高くないと思われますが、数値に有意な差が見られます。

まず、リファラルの割合に差が見られます。リファラルとは他サイトからの流入を指しますが、A市では計測できていません。全国のローカル情報を発信するウェブマガジンとのタイアップ記事などを積極的に検討しても良いでしょう。

また、ソーシャルメディアからの流入にも差が見られます。B市ではFacebook、Twitter、Instagram、さらにYouTubeまで、幅広いソーシャルメディアの活用がされています。ソーシャルメディアの活用は、ファンマーケティングやインタラクティブマーケティングの観点でも重要です。無料で始められる手軽さに加え、インターネット人口の70%以上が何らかのソーシャルメディアを利用しており、今後ますます成長が見込めるツールであると考えられます。

最終話となる次回は、「ウェブ×地域創生」のヒントや気づきを与えてくれる様々な成功事例をご紹介いたします。

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