ウェブ解析士に学ぶウェブサイト運用テクニック Vol.30

地域の魅力を再発見し、発信する。地方創生とウェブの幸せな関係

小熊 亮人氏小熊 亮人氏株式会社トラスWebディレクター。WACA認定ウェブ解析士。
経営コンサルティング事務所のアクセス解析や改善提案を担当、現在は大手通信企業に常駐し、サイト運用ディレクションに従事。
https://www.trass.co.jp/

ここ数年、「地方創生」という言葉をよく耳にするようになりました。東京から「ヒト・モノ・カネ」を地域へ分散し、さらに子育て支援と働き方改革を推進することで、地域経済を活性化する取り組みのことです。また、国が行ったアンケート※では、東京在住者の40%が「地方への移住を検討している又は今後検討したい」と回答し、東京都民の地域への意識も高いと言えるでしょう。

地方創生のため様々な施策が始まっていますが、ウェブと地方創生は非常に相性が良い、と私は考えています。近年ウェブ業界では「コンテンツ・イズ・キング」と言われるほど、コンテンツの重要性が高まっています。そのコンテンツは「ほかにないユニークなもの」で、「ユーザーにとって有益な情報である」ことが重要視されています。そして日本各地には、その土地にしかない食文化や伝統工芸品、人々の暮らしがあり、まさにユニークな魅力の宝庫だと捉えることができます。

日本各地にある魅力を、ウェブの即時性と拡散性を活かして発信していく。そこには、大きなチャンスが眠っていますが、まだどのように地域と連携すれば良いか模索している方々もいらっしゃると思います。そこで本コラムでは全3回にわたり、「地方創生とウェブの幸せな関係」を考えていきます。

ウェブは手間隙かけて育てていく、一つのツールである

早速ですが、こちらの事例をご覧ください。創業27年、群馬県のブランド豚加工会社、ハム工房ぐろーばるさんのウェブ活用事例です。

売上よりもブランド認知を最重視!「和豚もちぶたオンラインショップ」が見据えるEC運営の未来(カラーミーショップ)
 https://shop-pro.jp/news/interview-waton/

ハム工房ぐろーばるさんがはじめてのECサイト運用に乗り出したのですが、ECサイトでありながら「売上」を目標とするのではなく、認知拡大やブランド理解、つまり「ファンを育てていくための場」として捉えています。商品をより多くの方に知ってもらい、手にとってもらう。近くに売っている場があればそれで良いし、ネットショップはあくまで近くに買える場がない方のための受け皿だと考えたのです。

ハム工房ぐろーばる

ハム工房ぐろーばる

食に関心が高く、時間やお金に余裕の出てきた30~40代女性をターゲットに、リスティング広告やリターゲティング広告などの広告運用に特に力を入れ、着実にユーザーを獲得しています。

ウェブの大きなメリットとして、広告を表示する相手を性別や年齢、居住地などで分けることができ、今までよりも安価で、確度の高い広告を出稿することができます。

しかし、ウェブを特効薬や万能薬のように考えるのは危険です。高すぎる目標を設定したものの短期間では結果が出ず、プロジェクト内のウェブ予算を削減されてしまった、ということも起こり得ます。ウェブは時間をかけて育てていく、一つのツールとして使いこなすことが重要です。

プロジェクトのKGI、KPIの設定

また、プロジェクトを立ち上げると、達成したい理念(ビジョン)や、理念を実現するための目標(KGI)、その目標の達成度合いを評価するための数値(KPI)を設定すると思います。

●KGI(重要目標達成指標)… 最終的な目標を定量的に示したもの
●KPI(重要業績評価指標)… KGI達成までの各プロセスの達成度を定量的にはかる中間目標

プロジェクトのKGI、KPIの設定

同様に、ウェブの役割とKGI、KPIを適切かつ明確に設定することが重要です。ウェブの役割設定によって、その方向性は大きく異なります。ブランディングをしてイメージ戦略を図るのか、企業理解促進のための情報発信の場なのか、役割を明確にすることで、ウェブにどのような目標を与えたら良いかが見えてきます。

<代表的なウェブの役割>
●ブランディング
●認知獲得
●顧客情報獲得
●商品サービス販売
●情報発信(ニュースリリース) など

<ウェブの役割、KGI、KPIの例>
ウェブの役割:動画による認知獲得
KGI:新規ユーザー20%増加
KPI:動画広告視聴回数、インプレッション数、リーチ、拡散数 など

このように各項目を設定し、課題を見える化することで、どんな施策を立案したら良いか、メンバーがどんなアクションを起こしたら良いかが明確になります。明確なPDCAを構築し、確実にサイクルを回していくことがプロジェクトの成功に不可欠であると言えるでしょう。

「地域の強み」はなにか? 「よそ者」と「気候風土・歴史文化」から魅力を再発見する

商品開発や販売戦略を考える上でとても重要なことが、自分たちの「地域の強み」を理解することです。地元の人も気づかなかったけれど、実はその土地にしかない財産を顕在化し分析することで、ほかのどの地域にもないユニークな強みが浮き彫りになってきます。

地域の強みを考える上で参考になるのが「よそ者」と「気候風土・歴史文化」です。「よそ者」とはIターン移住者や地域おこし協力隊のように、別の地域から移住してきた方々のことを指します。彼らは地元の人たちも気づいていなかった、「当たり前ではない、その土地にしかない財産」に気づかせてくれる貴重な存在です。彼らから丁寧に地域の魅力をヒアリングすることで、その土地のオリジナリティを再発見することができます。

例として、全国の様々なローカル情報を発信するウェブマガジン「コロカル」で、岐阜県飛騨エリアに移住した方々へのインタビュー記事が掲載されています。移住した方々は、季節ごとに収穫される野菜の魅力や、山に自生するたくさんの薬草の価値、集落の生活の心地良さといった、つい見逃してしまいそうな「当たり前の素晴らしさ」に気づき、それらが大切な地域資源であることを教えてくれます。

あなたはなぜ飛騨を好きになったのですか? vol.010
 http://colocal.jp/topics/lifestyle/nazehida/20170323_93477.html

ここまでウェブのゴールの設定の仕方、地域の魅力の見つけ方についてお伝えいたしました。次回は再発見した地域の魅力の「伝え方」を中心に考えていきたいと思います。

※首相官邸「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」平成26年8月
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/souseikaigi/h26-09-19-siryou2.pdf

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