ITを活用した次世代農業の創出へ 連携と新技術で、新たな可能性を広げる


高齢化、担い手不足、所得の減少など農業が抱える課題に対して、AIやIoTなどのテクノロジーを活用して解決の道を探ろうという試みが始まっています。株式会社オプティムでは、2015年より、佐賀大学や佐賀県と連携してそれぞれの技術と知見を持ち寄り、これまでにない次世代農業を創出する“スマート農業”の実証実験を開始しました。付加価値をつけた農作物を百貨店で販売するなどの活動を通じて、協力を申し出る農家も増え、実証実験の場も全国各地へ広がり、成果を上げています。

オプティムが考える「○×IT」によるイノベーション戦略

ウェブサイトをフル活用した営業戦略

(上の図は株式会社オプティム提供)


「ネットを空気に変える」をスローガンに事業を展開

▲執行役員 インダストリー事業本部・休坂 健志 氏

▲執行役員 インダストリー事業本部・休坂 健志

株式会社オプティムは、代表取締役社長の菅谷俊二氏が佐賀大学農学部在学中の2000年に起業した企業です。同社は「ネットを空気に変える」をスローガンに、インターネットを電気、ガス、水道と同様に誰でも使えるインフラとして普及させるべく、事業を展開しています。中でもモバイルデバイス管理市場では出荷額・シェア1位を6年間も継続中です。そんな同社は2015年8月、佐賀大学や佐賀県と三者間連携で「スマート農業」の実証実験事業を進める協定を締結しました。きっかけは菅谷氏が佐賀大学農学部60周年の講演で同社の取り組みを紹介した際、農業への応用の可能性に話が広がったことです。その後協議を進めて、佐賀大学とオプティムに佐賀県も加えた三者連携協定が締結されたのです。

「締結後始めの1年間で技術の実証を進め、技術的に確立ができる目途がつきました。定期的に佐賀で開催している三者の月次検討会には生産者の方も参加しており、そこから実証実験に取り組まれた方や、従来からスマート農業に関心を持っていて参加を希望された方もいらっしゃいました」(休坂氏)


AI、IoTなどを駆使して自社開発独自技術で「楽しく、かっこよく、稼げる」農業を

同社ではITを農業に活用する具体的な技術をAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ロボティクス(ロボット工学)を組み合わせて自社開発をしています。例えば、従来、広い農地に農薬を撒くために産業用ヘリコプターが用いられていますが、大量に農薬を使用し、散布区域外に農薬が拡散してしまう恐れもあります。そこで同社ではドローン※1を使って、必要な場所にのみ農薬を散布する技術を開発。カメラを搭載した自動飛行のドローンから送られた画像データを基に、AIを用いて虫食い状態の葉を検知し、ピンポイントで農薬を使用することで、虫害を防ぎながら農薬の量を減らす取り組みです。ほかにもハウス内に設置した大量のセンサーからの情報と、撮影した画像データなどを基にトマトの収量を予測するシステムや、スマートグラス※2などを用いて、遠隔地にいるベテランの農家や専門家と連絡を取り合い、適切な判断を仰ぐことができるサービスを考案しています。

これらの独自の技術を用いて「楽しく、かっこよく、稼げる」農業を目指している同社では、従事者の高齢化や担い手不足、所得の低下など持続的な経営が難しくなる農業の課題解消を図っています。

「佐賀県以外でも取り組みを展開する中で、類似した課題に直面していることを感じます。それは勘と経験にのみ頼った農業を『見える化』させたい、農産物の生育に関する情報をデジタル化して分析することでノウハウを蓄積したい、という課題です。手掛けられている作物は変わりますが、同じような悩みを抱えた農家の方が全国各地にいらっしゃいます」(休坂氏)


▲カメラを搭載し、広域、長時間のデジタルスキャンを実現する固定翼型ドローン「OPTiM Hawk」▲カメラを搭載し、広域、長時間のデジタルスキャンを実現する固定翼型ドローン「OPTiM Hawk」
▲カメラを搭載し、広域、長時間のデジタルスキャンを実現する固定翼型ドローン「OPTiM Hawk」

▲必要な場所にピンポイントで農薬散布ができるマルチコプタードローン「OPTiM Agri Drone」▲必要な場所にピンポイントで農薬散布ができるマルチコプタードローン「OPTiM Agri Drone」
▲必要な場所にピンポイントで農薬散布ができるマルチコプタードローン「OPTiM Agri Drone」

農産物に新たな付加価値「スマートえだまめ」を完売

▲蓄積された農家の方々のノウハウと最先端のテクノロジーを融合して育てた「スマート野菜」。パッケージに印刷された2次元バーコードからスマートフォンにアクセスすれば、生産者の声などを閲覧できます

▲蓄積された農家の方々のノウハウと最先端のテクノロジーを融合して育てた「スマート野菜」。パッケージに印刷された2次元バーコードからスマートフォンにアクセスすれば、生産者の声などを閲覧できます

実証事業2年目にはアライアンスパートナーである佐賀県の農業生産法人・株式会社イケマコの農場で、ピンポイント散布による減農薬で育てた大豆の栽培を実施しました。農薬の使用量を通常栽培時の10分の1の量に抑制し、収穫後の残留農薬の調査では「不検出」の結果を取得しました。収穫した枝豆を「スマートえだまめ」として百貨店で販売したところ、通常の枝豆の約3倍の価格にも関わらず完売。先端技術を用いて、安心・安全の付加価値を野菜につけて販売することに成功したのです。また、農業法人を運営する若手の農家からはプロジェクトに参画したいという申し出も受けました。さらに同社では「スマート農業」の実証実験を拡大中で、オリーブ栽培農家と進める静岡県藤枝市や、秋まき小麦の生産性向上を図る北海道帯広市などでも開始。また佐賀県では、有明海の海苔栽培に応用する取り組みも始まっています。

「すべての農家の方が対象になるわけではありませんが、地方で人材不足問題に直面している中、農地の規模が大きくなり、限られた人数で運営しなければならない方や、既存のやり方を変えていきたい方、自分たちで販路を拡大していきたい方などに対して、農家のあり方の一つの選択肢になれればと考えています」(休坂氏)

人材不足という構造的課題に対し、視野や視点を変えて新規顧客や新規分野を開拓していく姿勢は、農業分野に限らず、多くの事業者にとって示唆に富むものです。


農業だけではない「○×IT」の可能性を探る

農業のスマート化でも注目される同社ですが、ほかの産業分野でのIT活用にもチャレンジしています。例えば、建機メーカーとは土木測量技術の応用、佐賀大学とは農業で病害虫を検知する技術を用いて眼底画像の診断支援に応用するプロジェクトが進んでいます。

「ほかにもコスメ(化粧)や教育、医療、介護、小売などさまざまな分野へのIT活用も研究しています。AI、IoTの知見を活かして、新たな分野で価値を生み出していくことを目指しています」(休坂氏)

高齢化、担い手不足などの問題は農業分野に限った問題ではなく、日本の普遍的な社会課題になりつつあります。解決策が分からない未知の課題に対して既存の技術・方法に捉われず、試行錯誤しながら新たな活路を見出す姿勢は、業種、業界の壁を超えて参考になります。

  1. ※1 ドローン:無人で遠隔操作や自動制御によって飛行できる小型の航空機の総称。空撮、警備、偵察、配送などさまざまな用途に活用されている。
  2. ※2 スマートグラス:カメラとマイク付イヤホンが内蔵された眼鏡型の遠隔作業支援ツール。これを装着した作業者が見ている映像が遠隔地のパソコンモニターに映され、マイクとイヤホンで指示を送ったり、受けたりすることができる。

会社概要
株式会社オプティム
会社名
株式会社オプティム
設立
2000年(平成12年)6月
所在地
(東京本社)東京都港区海岸1丁目2番20号 汐留ビルディング21F
佐賀本店)佐賀県佐賀市本庄町 オプティム・ヘッドクォータービル
代表取締役社長
菅谷 俊二
事業内容
ライセンス販売・保守サポートサービス(オプティマル)事業(IoTプラットフォームサービス、リモートマネジメントサービス、サポートサービス、その他サービス)
URL
https://www.optim.co.jp/
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