企業ICT導入事例

-石川酒造株式会社-
SNSの利用者像を分析し、サービスの特性を活かした施策で顧客ロイヤリティ向上の実現

中小企業にとって、インターネットサービスの有効活用による情報発信と顧客獲得は大きな課題です。創業155年の歴史を誇る老舗酒造会社の石川酒造株式会社は、ウェブサイトやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など、サービスの特性や利用者に合わせた情報発信で、認知度のアップと集客増を実現しています。

【導入の狙い】公式サイト以外のウェブサービスを活用し、これまでアプローチできていなかった潜在的顧客を誘引したい。
【導入の効果】サービスごとの利用者特性に合わせた投稿を行うことで、ブランドへの好感度向上と来店誘導を実現。

顧客誘引の窓口とすべく休眠中だったSNSを再活用

▲営業部 広告デザイン担当 石川 雅美氏

東京都福生市の石川酒造株式会社は、1863年(文久3年)の創業から今日まで、昔ながらの製法で酒造りを続けています。「創業者は江戸時代、この地域で代々庄屋を務めておりました。近くを流れる多摩川の氾濫などもあり、米作りに向いているとは言い難い環境でしたが、長年の治水の努力で江戸時代末期には生産高も上向いてきました。創業者はその米を使い、酒造りを始めたのです」(石川氏)

石川酒造は現在、公式サイトのほか、Facebook、Twitter、InstagramなどのSNS、さらにGoogle マイビジネス※を積極的に活用し、新規のお客さまの誘引とリピーターの確保に効果を上げています。「創業こそ古い弊社ですが、新しいもの、面白いものはどんどん取り入れていく社風があります。公式サイトは2000年頃には開設していましたし、2010年から2012年にかけTwitterやFacebookもアカウントを取得、投稿を開始しました。これらはすべて現場のスタッフの発案によるものです」(石川氏)

インターネットサービスの活用の立ち上がりは早かったものの、その後は担当者の多忙などにより、更新が滞る事態となっていました。

「私が3年前に現在の部署に異動した時、正直“もったいない”と思ったんです。“今あるSNSアカウントをきちんと活用すれば、より多くのお客さまに弊社の魅力をアピールできるのに”と。ただ当時の自分には、SNSをどうやって活用するかという知識はまったくありませんでした。そこで独習で、Facebookの更新から始めました」(石川氏)

SNSごとの利用者特性を分析 投稿する記事を最適化

石川氏が注目したのはFacebookの「いいね!」の機能です。お酒の記事、地元ネタの記事、そして同社が敷地内で運営するレストランの記事など、テーマの異なる記事を投稿し、「いいね!」の多い、少ないを分析しました。この繰り返しで、「いいね!」を多くもらえる記事の傾向をつかみ、リピーターを増やしていったのです。「閲覧者のデータを参照できる『インサイト』機能により、地元に住む40代以上の方が利用者の中心層だと分かりました。そこでFacebookへは、店舗に直接足を運んでいただくお客さまを意識して記事を用意して投稿しています」(石川氏)

次に石川氏はTwitterへの取り組みを本格化しました。「Facebookがリアルの人間関係を中心にしているのに対し、Twitterはリアルの人間関係の有無に関わらず、同じ嗜好の人が連携しやすいこと、そしてやや“固め”の記事が好まれるFacebookに対し、Twitterはくだけた投稿のほうが人気を集めることが分かりました。そこで研修にともなう臨時休業のお知らせでも、Facebookが『来週木曜日は研修のため休業します』だったら、Twitterは『今度の木曜日は研修旅行でお休みで~す♪』のような軽い感じにしています」(石川氏)

TwitterはほかのSNSより情報が速く拡散する傾向があり、気に入ったほかのユーザーの投稿を自分のアカウントから再投稿できる特徴に注目した施策も実施しました。エイプリルフールに自社ブランド「多満自慢」との語呂合わせで、猫の写真を「タマ自慢」として日本酒のラベルにした投稿には多くの反響が寄せられました。そしてInstagramには、この両者とはまた異なる傾向があると、石川氏は言います。「Instagramは写真が命です。写真にインパクトがないと、投稿を読んでもらえません。ですからInstagramに投稿したい記事がある場合は、目をひく写真を探す、もしくは新たに撮影します」(石川氏)

「エゴサーチ」を定期的に実施 細かいお客さまフォローも

そして、より同社の話題が継続するよう、石川氏は定期的に「エゴサーチ(自社名などでSNSを検索し、どのように話題になっているか確認すること)」を行い、同社や同社製品に関わる投稿をした利用者に感謝のコメントづけを欠かさないようにしていると言います。

「ただ、どのSNSにも等しくコメントづけしているわけではありません。仲間同士の会話が多いFacebookでは、弊社からのコメントが“割り込み”というマイナスの印象につながる可能性があるため、会話の流れを読み、慎重にコメントします。Twitterは逆にオープンなので、投稿者のプロフィールを見て、問題なさそうであればコメントをつけていきます。InstagramはTwitterより拡散力が小さいので、ハッシュタグ(話題の手がかりとなるキーワード)を使って検索し、利用者一人ひとりに細かくコメントづけすることにしています。こうしたコメントにいただくお客さまのご返答から、弊社への印象が良くなっているという手応えも感じています」(石川氏)

そして同社は今、Googleマイビジネスを活用して、新たな顧客誘引を目指しています。

「Googleマイビジネスでは、たとえ弊社をご存じなくても、『多摩 酒蔵』といったキーワードで検索した利用者に弊社の存在をダイレクトに紹介できます。社名を知っている人、また検索からさらにクリックを重ねてたどり着いた人にしかご覧いただけない公式サイトに比べ、圧倒的に訴求力が高いのです。酒蔵やレストランなど、目をひく写真をアップロードし、弊社の魅力をアピールしています」(石川氏)

東京オリンピックはあくまで瞬間風速 国内のコアなファン層開拓を

最後に同社の今後のICT活用の考え方と、展望についてうかがいました。

「最初に申し上げたように、弊社は新しいものを積極的に取り入れる社風があります。昔ながらの酒造りは守っていきますが、その中で、例えば杜氏の負担を減らすようなもの、より美味しい酒造りに寄与するようなICT技術については情報を収集して採用を進めていきたいと思っています。また、現在は2020年の東京オリンピックに向けて外国人観光客が急増しています。弊社も英語と仏語ができるガイドでの接遇、売店での免税など、そうした外国人観光客向けの対応を進めています。しかし、これまでの155年の歴史を考えると、これはあくまで一過性の動きであり、特需のようなものだと考えています。将来に向けて持続的な成長を進めていくには、現在、この多摩地区にいらっしゃる弊社のコアなファン層を、東京、関東、そして全国へと広げていくことが重要です。そのためにはこれからもSNSやウェブサイト、またさらに新たな対顧客コミュニケーションにも取り組んでいきたいと思っています」(石川氏)

※Googleマイビジネス:Google検索やGoogleマップなどに店名や電話番号、営業時間、ウェブサイトなどの情報を無料で表示・管理できるGoogleのサービス。

会社名 石川酒造株式会社
創業 1863年(文久3年)
所在地 東京都福生市熊川1番地
代表取締役社長 石川 彌八郎
事業内容 酒造業、レストラン事業など
URL http://tamajiman.co.jp/
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