企業ICT導入事例

-株式会社広浦(アイエコム)-
平均年齢64歳のスタッフたちがクラウドアプリケーションを使いこなし、顧客対応力を向上

株式会社広浦(アイエコム)は、社員6名、平均年齢64歳の会社です。9年前に石材業からワイヤレス温度計を企画・販売する事業に転換したものの、業務処理が複雑になり、現場は混乱。この問題に対してクラウド上で使える業務アプリケーションを導入してこれを解消しました。また、業務の「見える化」と情報共有を進めるうちに、社員の顧客志向の意識が強まりました。

【導入の狙い】高齢者でも使える業務管理ソフトを活用し、紙の資料を発生させない。
【導入の効果】必要なデータが「見える化」され、誰もが的確に顧客対応できる。

事業転換し、新製品の開発・販売に進出 業務内容が激変して対応に苦労

  • ▲営業担当 遠藤 公章氏

    株式会社広浦(アイエコム)は、長年、墓石や砕石を取り扱う“石屋”でしたが徐々に安価な中国製品におされて需要が減少。そこで、今から9年前、現代表取締役社長・広浦 雅敏氏の意向によりIT製品の開発・販売を主とする企業へと事業転換しました。

    同社の新たな主力製品が酒造向け温度計の“kojimori”で、販売開始から7年で全国の酒蔵約1,500社の1割以上に普及しています。従来、麹の育成は、杜氏が丸2日間、2時間おきに温度を監視しなくてはなりませんでしたが、“kojimori”はその働き方を大きく変えました。温度計のデータをインターネットに送る装置なので、スマートフォンからウェブサイトにアクセスするだけで麹の様子を知ることができるようになったのです。

現在、“kojimori”は、農家の温室管理、温泉の湯温管理、スキー場の気温計測など、顧客のニーズに合わせて商品バリエ―ションを展開。センサー部を変えたり複数設置したりすることで湿度や振動などを多地点で計測でき、データをサイトに集められる仕組みを構築しました。このような業態や商材などの変化に伴い、スタッフの業務内容も大きく変わりました。

「大変だったのは、仕様の異なる製品の設定情報や買掛・売上管理及び問い合わせ対応でした。顧客別に異なる仕様の製品を管理するため、以前よりも転記が必要な書類が増え、問い合わせの内容も多様で複雑になるなど、業務の質も量も激変しました。何しろ社員数6名、平均年齢64歳の会社です。新しい事態についていくのは容易なことではありませんでした」(遠藤氏)

手書きシートを使っての業務管理をクラウドアプリケーションに切り替えて「見える化」

  • ▲業務担当 赤間 実氏

    事業転換した当初、業務関連情報の管理は、Excelで作った顧客ごとの設定情報と、「かんばんシート」と名付けて出荷データを印刷して壁に貼ったものを組み合わせて行っていました。紙のシートには、仕様の変更や請求データなども書き入れ、折を見て個々のファイルに転記していました。しかし、この運用方法はすぐに限界がきました。そこで同社ではクラウドアプリケーション上に、製品の設定情報、部品仕入先情報、出荷状況、入金情報、送り先住所などのデータベースを構築し、お客さま情報も書き込めるようにしました。

    「問い合わせがあっても、膨大な紙の資料とExcelに振り回されて、対応できなくなったのです。そこで社長が新たなツールとして、クラウド対応の業務管理アプリケーションを見つけて、これを導入しました」(赤間氏)

  • ▲出荷管理担当 永田 治子氏

    パソコン入力にあまり慣れていなかった事務担当の永田氏、庄司氏は事業転換の際にこれまで手書きで転記していた書類をパソコンで作成することになりました。WordやExcelに関して2人はそれまで、文章の定型文を入力して、印刷する程度の利用だったので、特に抵抗感があったようです。アプリケーション導入にあたって、この点の解消も図りました。

    「私はクラウドアプリケーションの入力画面を印刷し、自分だけのマニュアルを作成。これを見ながら決まったところに必要な情報を入力するだけなので必要なデータが『見える化』され、情報が共有できました」(永田氏)

  • ▲経理担当 庄司 稔子氏

    「新しいことはなかなか覚えられず、日時表示を和暦から西暦に変えるだけでも、はじめは戸惑いました。アプリケーションも最初のものは汎用向けだったのですが、社長に今まで使ってきた用語や、紙での記帳のやり方に合わせるよう改善してもらって使いやすくなりました」(庄司氏)

ウェブ上に業務を移したことで気づいた一つの“顔”で顧客対応できる大切さ

  • ▲ウェブ上に業務を移したことで社員たちに新たな“気づき”が生まれています

    クラウドアプリケーションを使うようになったのは、元はといえば、WordやExcelを使いこなせないことで生じるストレスを解消するのが狙いでしたが、一方で業務がすべてウェブ上で行えるようになったことで、社員たちに新たな“気づき”が生まれました。

    「お客さまの問い合わせ電話に対して担当者が不在の場合、今までは『折り返し連絡させます』とだけ答えていたのですが、顧客データベースを検索して、分かることは誰でも応えられる環境になりました。業界内では後発の小さな会社ですが、会社として一つの“顔”で対応することでお客さまに覚えてもらい、評価していただける。これがとても重要だという意識が出てきました。製品情報のウェブサイトには、アプリケーションに蓄積された問い合わせ対応の記録を基にQ&Aを作成して、掲載するようになりました」(赤間氏)

「お客さま対応の記録が充実してきました。取引履歴や見積データ、提案書の記録なども出張先からいつでも参照できます。それと、業務の改善が必要だと思うことをメモにして残すデータベースも作っています」(遠藤氏)

業務手順や資料保管場所を整備することで次世代への引継ぎも安心

  • ▲開発担当 佐竹 徹氏

    同社のアプリケーション活用は、定型業務から始まって、顧客対応や業務の見直しにも活用されるようになってきましたが、現体制維持のみならず、次の展開に向けた体制づくりのためにも活用しようとしています。

    「当社の得意技術は、センサーを使いワイヤレスでデータを集めること。海外のベンチャーとも提携し、さらに新しい分野の開拓もしています。その研究開発プロジェクトの管理や外部とのコラボレーションにもこれを活用しようとしています」(佐竹氏)

    また事業の継続性の側面から考えると、アプリケーション上でのデータ管理は引継ぎができる体制の整備にもつながっています。

  • ▲高齢者でも使えるアプリケーション導入で、次世代への引継ぎ体制もスムーズに

    「業績が伸びれば新人も採用できます。今、ギリシャからインターンシップの実習生が来ていますが、今後どんな人が入るか予測がつきません。しかし、資料の保管場所や業務の手順がはっきりしているので、私たちがいつ抜けても大丈夫です」(永田氏)

    広浦社長は、アプリケーションの導入によって社員たちの手間を削減でき、会社の現状がリアルタイムに整理された状態で見られるようになったことと、平均年齢が上がっても「継続してお客さまに対応していく」という法人本来の意味を意識し、次世代への引継ぎ体制ができたことに手ごたえを感じているようです。

会社名 株式会社広浦(アイエコム)
設立 1947年(昭和22年)10月
所在地 東京都品川区二葉1-6-1 大理石センタービル3F
代表取締役社長 広浦 雅敏
事業内容 墓石、建築石材の製造加工販売、Kojimoriセンサーゲートウェイ販売及び関連クラウドサービス、アイスホッケー関連クラウドサービス(エフビートライアングル)
URL http://i-ecom.co.jp/
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