企業ICT導入事例

-東京オート株式会社-
自社制作の顧客管理ソフトウェアで将来的には営業スタイル改革も

栃木県を中心に、国内外のメーカー系新車ディーラー、中古車販売店、レンタカー店を展開する東京オート株式会社。導入したコンピューターの業務支援機能が思い通りにはならず、データの自由な利用にも制限があるため、市販の自動車販売店向けパッケージソフトの利用をやめ、自社でオリジナルのシステム開発に踏み切りました。

北関東の発展を早期に着目、東京から栃木へ本拠を移転

  • ▲代表取締役社長 中村 浩志氏

    東京オート株式会社は1973年、東京都足立区で中古車販売店として創業した自動車販売会社です。1980年代に栃木県小山市に本社を移し、以降、メーカー系ディーラーとして新車も取り扱うなど、事業を拡大してきました。

    「創業社長である私の父は、いち早く顧客サービスの重要性に気づき、これに注力するとともに、働きやすい職場環境の実現も目指しました。小山への進出は、この地が今後人口増にともなう商機に恵まれるとの考えによるものです。その予想は的中し、現在につながる事業の成功をもたらしました」(中村氏)

    しかし中村氏が同社で働き始めた当時、忙しさの中で、非効率的な事務作業が当たり前のように行われていました。

「自動車には不動産のような登録制度があり、また定期的な検査が義務づけられるなど、ほかの商品とは異なる性質があります。そのため販売及び管理には多くの書類が必要になりますが、当時はそれを手作業で作っていたのです」(中村氏)

オープン化されたデータベース仕様でお客さまデータを自在に活用

  • 中村氏は1990年代にパソコンを導入、市販の自動車販売店向けパッケージソフトの業務活用も早い時期に試みました。

    「導入はしたものの、その機能には不満がありました。自動車販売のソフトウェアは、『販売・整備・登録』という主要三業務の支援が目的となります。しかし、この三業務すべてが及第点というソフトウェアがなかったのです」(中村氏)

  • ▲社員全員がTASを使いこなせるようリテラシー教育を実施

    中村氏はソフトウェア販売会社に自社向けの改良を求めましたが、そうした要望の反映には膨大な費用がかかります。中村氏は最終的に、独自のソフトウェア開発を決断しました。

「何より解決したかったのが、データベースの仕様でした。パッケージソフトのデータベースは標準仕様のため、例えば特定の条件にあてはまるお客さまの住所や氏名を取り出して、自社で使用しているほかのシステムに組み込むといった加工が自由にできなかったのです。またデータはあくまで自動車主体の視点で作られていて、お客さまは“クルマの所有者、使用者”でしかありませんでした。そのため『これまでどのような自動車を乗り継いできたか』『ほかにどのような自動車を所有しているか』『ご家族の状況はどうなっているか』といった情報をお客さまサービスや販促活動に活用することは困難でした」(中村氏)

開発にあたってはこうしたデータ連携や検索面での弱点を解消すること、そして販売・整備・登録の主要三業務すべてにおける機能の充実を目標としました。

  • ▲システム室 課長 赤荻 悟氏

    「ソフトウェア開発は専門外ですが、自分たちが本当に使いやすいものとするため、システムに組み込むべき機能の仕様をまとめる段階まで、自社で取り組みました。その実現のために、各部署で細かいヒアリングを行って業務フローを洗い出しました。こうして作られた仕様書を基に協力会社と開発を進め、2004年に完成したのが、CRMを支援するTAS(Total Assist System)と呼ぶオリジナルのシステムです。TASはその後も改良が重ねられ、現在では予約管理システムも備えるなど、さらに機能を強化しています」(赤荻氏)

目指すは“特定の人間”に頼らない自動車販売のスタイル

こうしたTASの導入と進化は、顧客情報の管理や見込客へのアプローチなどにおいて、大きな効率化と低コスト化をもたらしました。

「データベースから情報を自在に取り出せるため、車検が近づいたお客さま、前回の来店から一定期間が経過したお客さまなどをピンポイントで抽出し、DMでご案内できるようになりました。またお客さまごとにデータを管理できるため、成約に至らなかったお客さまの情報ものちのちの販売活動に役立てることができます」(赤荻氏)

このように、既存のパッケージソフトでは実現できなかったお客さま情報管理を可能としたTASを、同社は今後どのように活かしていくのでしょうか。

「これまでの自動車販売は、営業スタッフの個人的資質でお客さまとの関係を築くことが重要でした。しかしこのスタイルでは、事業の成長には限界があります。なぜならスタッフが退職すると、お客さまとの関係も切れてしまうからです。弊社は今後、TASを活かしたお客さま情報の共有で、特定の営業スタッフだけが行えるセールスからの脱却を目標としています」(中村氏)

TASの活用で、お客さま一人ひとりを「生涯顧客」に

  • ▲購入後のアクシデントや整備・点検に対応する自社整備工場

    お客さまとの関係性も、従来とは異なるスタンスを視野に入れています。

    「お客さま接点を営業スタッフからコンタクトセンターに置き換え、お客さまとのやりとりは、TASを参照するコミュニケーターの担当に転換したいのです。お客さまにとっては『東京オートなら誰と話をしても自分のことを分かってくれている』という安心につながりますし、弊社にとっては担当営業スタッフが退職しても、従来と同じお客さまとのお付き合いができることになります」(中村氏)

最後に、同社の将来像についてうかがいました。

「この北関東エリアは自動車での移動を基盤とした生活スタイルが定着しており、一人のお客さまの生涯の自動車関連支出は数千万円に上ると考えられます。一人ひとりのお客さまを『生涯顧客』と考え、そのお客さまから弊社がいただくバリューを『生涯顧客価値』と考えると、その大きさは計り知れないものがあります。TASを活用し、お客さまとの深いつながりを構築し、多くの生涯顧客を獲得する。そうした未来の実現に向け、一歩一歩進んでいきたいと思います」(中村氏)

会社名 東京オート株式会社
設立 1973年(昭和48年)4月13日
所在地 栃木県小山市東城南1-16-4
資本金 5,000万円
代表取締役社長 中村 浩志
事業内容 中古車・新車販売、自動車整備・鈑金塗装、損保代理業
URL http://www.tokyoauto.com
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