事例系トピック

現行の4Gに代わる新世代の携帯電話通信規格「5G」の実用化、商用利用を目指した実証実験が全国各地で行われています。5Gがどのような特徴を持ち、そしてビジネスにどのようなメリットをもたらすのか、5G導入を推進する総務省の新世代移動通信システム推進室に聞きました。

4Gより10倍速い通信速度とリアルタイムな通信を実現

—5Gとはどのようなものなのか、これまでの通信方式との違いを含めて教えてください。

中村 5Gは2020年の商用利用を目指し整備を進めている、次世代(第5世代)の移動通信方式です(図1)。現在、主流となっている方式は4Gですが、5Gは4Gに比べて伝送速度が超高速である、多数の端末を同時に接続できる、低遅延、つまりリアルタイムな通信が可能になるといった特徴があります(図2)。

—それぞれの特徴を、より詳しく教えてください。

中村 4Gの伝送速度は最大1Gbps程度ですが、5Gではその10倍の10Gbpsでのデータ通信が可能となり、これまで困難だった4K/8K映像の超高速伝送にも対応します。また同時接続数はkm²あたり100万台と、4Gの100倍に飛躍的に増加します。通信の遅延は4Gの10ミリ秒から1ミリ秒と激減します。

総合通信基盤局 電波部 移動通信課 新世代移動通信システム推進室 課長補佐 中村 元氏

▲総合通信基盤局
電波部 移動通信課
新世代移動通信システム推進室
課長補佐
中村 元

「距離の壁」を取り払い、さまざまなサービスでの利用を想定

—こうした特徴は、生活やビジネスにどのような効果をもたらすのでしょうか。

中村 高精細な映像の伝送と低遅延は、距離の壁を取り払ったサービスを可能にすると考えられます。例えば遠隔地にいる医師が患者の映像を見て病気を診断したり、さらにはロボットを通信経由で操作して手術したりすることも可能になります。一般企業においても、複数のお客さまのところに新製品のサンプルを送り、お客さまが装着したヘッドマウントディスプレイ(ヘルメットやゴーグルのような形状をした装着型ディスプレイ)を介して、遠隔地であっても、あたかも目の前で説明されているようなプレゼンテーションを行うといった活用もあり得るでしょう。さらに低遅延を活かした運送業への利用も考えられています。これは複数のトラックで走行する時、先頭車両のみ人が運転し、後続の車列は先頭車両の走行情報を通信で受け取り、無人で追従するというものです。人が運転する場合は事故を防ぐため、高速道路を時速80km程度で走行すると80mくらいの車間距離が必要ですが、5Gを活かした無人運転では先頭車の加減速にほぼリアルタイムに反応できるため、車間距離を5~6m以下まで縮めることが技術的には可能となります。これは現在運送業界が直面している人手不足解決に向けての処方箋になるとともに、短い車間距離による車列が空気抵抗を減らし、燃費向上という効果も期待できます。

「ローカル5G」の利用は製造現場にも大きな変革を

—工場など製造現場にも、メリットはあるのでしょうか。

中村 少量多品種生産方式をとっている工場では、製造する製品が変わるごとに製造装置やロボットの配置換えが行われますが、その際に手間となるのがそうした装置やロボットとセンサーなどをつなぐ配線の付け替えです。4Gでは、配線の無線化は遅延などの通信品質の問題から困難でした。しかし、5Gの低遅延を活かし無線化すれば、再配線の手間が削減され、生産性の向上に寄与するはずです。こうした製造現場での活用など、きめ細かなニーズに対応するため、総務省では「ローカル5G」の導入についても検討を行っています。

—その内容を詳しく教えてください。

中村 ローカル5Gは、地域ニーズや個別ニーズに応じてさまざまな主体が5Gを活用するシステムです。5Gの多数同時接続と遅延の少ない通信という特徴は、工場内の膨大なセンサーやIoT端末をすべて無線で管理することも可能とします。導入においては企業や自治体などさまざまな主体ごとに用途に合わせネットワークを柔軟に設計できますし、また、例えば工場内などで完結したネットワークとすれば、セキュリティも確保できます。さらには基幹システムや製造実行システムとも連携した「スマートファクトリー」の実現にも、大きな役割を果たすことが期待されています。

中小企業が抱えるさまざまな課題を解決する切り札にも

—5Gは単に“次世代の携帯電話”だけではなく、さまざまな活用が考えられるわけですね。

中村 私たち総務省は、通信事業者とも連携して5Gの実用化を進めていますが、実際にどのようなサービスに活用できるのかについては手探りです。そのため、これまで、地域の自治体やさまざまな事業者とも連携した実証実験を行い、「何に使えるのか」だけでなく「どういったニーズがあるのか」の掘り起こしを進めています。中小企業の方々はさまざまな課題を抱えていらっしゃると思いますが、そうした課題のうち、5Gが解決できるものは必ずあるはずです。また、高速で低遅延の5Gの導入により通信というボトルネックが解消すれば、これまで問題にならなかった通信以外のシステムの“遅れ”がクローズアップされ、そこを改良しようという動きも出てくるでしょう。また現在、例えば映像の伝送では4K/8Kカメラと通信機器というように異なる装置を連携させていますが、5Gの利用が拡大すれば、通信機器と一体化した高精細カメラなどが生まれ、かつ価格も低下し、新たな産業の成長にもつながるはずです。

—今後の5Gの展開について教えてください。

中村 この4月に携帯電話事業者に向けて、5G向けの周波数割り当てが行われました。今年9月に日本で開催される「ラグビーワールドカップ2019™」でプレサービスが行われ、2020年に商用利用が始まる予定です。総務省としては、先に挙げたローカル5Gも含め、5Gの早期の展開と普及を実現すべく環境づくりを進めていきます。

組織概要
総務省
組織名
総務省
所在地
東京都千代田区霞が関2-1-2
総務大臣
石田 真敏
URL
http://www.soumu.go.jp/