Vol.3 最適なAI-OCRを選定するためのポイント

梅田 祥太朗氏
梅田 祥太朗氏AI inside 株式会社
執行役員 CRO
事業開発本部長
URL:https://inside.ai/dx-suite/

第2回では、ペーパーレス化が進む中でAI-OCRブームの背景と現状について解説しました。第3回の今回は、これからAI-OCR導入を検討する企業のために、導入の際に注意すべき点、ベンダー選定のポイントなどについて解説します。

AI-OCR導入の際に注意すべき点、ベンダーの選定のポイントとは?

前回のコラムでは、現在のビジネスシーンで着実にペーパーレス化が進む中でも、AI-OCR市場が伸び続けている理由(背景)について解説しました。その理由は四つありました。まず、「ペーパーレス化が進んでも、組織や企業におけるデータ入力業務がなくならない」、次に「ほかのAIシステムと比べてAI-OCRは、コスト、導入工数が少ないことから導入のハードルが低い」、また「データ分析のニーズに合わせて、過去の書類のデータ化のニーズが高まっている」、そして「RPA(ソフトウェア型ロボット)との親和性が高い」ことです。

そこで今回は、これらの背景の中で「当社もそろそろAI-OCRの導入を検討してみよう」という企業や事業者に向け、AI-OCR導入の際に注意すべき点、ベンダー選定のポイントなどを解説したいと思います。

現在AI-OCRはOEM製品をふくめて複数のベンダーがサービスを提供していますが、自社の業務に最も適したAI-OCRを選定するためには、どのような点に着目すればよいのでしょうか。AI-OCR選定のポイントとして挙げられるのは、次の六つです。

①「精度とその理由」
②「使いやすさ」
③「ほかのシステムと連携が可能か」
④「セキュリティ」
⑤「サポート体制」
⑥「実績」

そこで、このAI-OCR選定における六つのポイントについてそれぞれ解説します。

最適なAI-OCRを選ぶためのポイント①「精度とその理由」

まず、AI-OCR導入では「現場の課題解決」を第一に、そのシステムの「精度」を見極めることが大事です。ここで言う「精度」とは、AI-OCRの文字認識技術を含めた読み取り精度のことです。読み取り精度が低いと、データの修正などで余計な労力を費やし、かえって非効率になる可能性もあるため、読み取り精度の高さは重要なポイントになります。

また、単純に「精度」だけでなく、その精度が実現できている「理由」も重要なポイントになります。そのベンダーがどのようなスタンスで開発し、何を目指してその「精度」が実現されているのかという理由です。ここは意外と見落としがちな点ですが、例えば個別に精度を上げている製品なのか、汎用的なAI-OCRとして精度を上げている製品なのか、一部の文字体にのみ対応している製品なのか、によって導入の目的を果たすことができるのか変わってくる部分であります。

「現在の業務」で読み取りたい書類やデータだけに着目するのではなく、「今後の展開」も見据えたデータ類の読み取りができるのか、長期的な視点でAI-OCRの精度とそれが実現できている理由を見極め長くつき合っていける製品かを考えることが大切です。

最適なAI-OCRを選ぶためのポイント②「使いやすさ」

読み取り精度と合わせて、「使いやすさ」も大切なポイントです。例えば、帳票などの読み取り作業において、適応範囲などをユーザー側で広げることができれば業務効率化にもつながります。だからこそ、専門的な知識や技術を持たない職員でも簡単に帳票設定などができる、使いやすいAI-OCRを選ぶことが大切です。さらに、操作性もシンプルで、直感的な操作ができ、読み取り後のチェック機能など後続の処理もふまえた使いやすさも選定の基準になります。

最適なAI-OCRを選ぶためのポイント③「ほかのシステムと連携が可能か」

また、あらゆるRPAとの連携など、ほかのシステムと連携可能な柔軟性を備えていることも重要なポイントです。

例えばRPAで行う作業の前工程(不要なファイルを取り除くなどの作業)をAI-OCRで行い、RPAとデータを連携させることも可能です。また、よく使う機能がAPI(ソフトウェアの機能や管理するデータなどを、外部のほかのプログラムから呼び出して利用するための手順やデータ形式などを定めた規約)として用意されていることも大事です。APIが用意されていれば、わざわざ一からプログラムを組む必要がなく、必要に応じてAPIを利用して効率的に業務を進められるからです。

最適なAI-OCRを選ぶためのポイント④「セキュリティ」

AI-OCRの導入では「安全・安心、かつスピーディに処理を行う」ことを目的の一つにしている企業も多いですが、この「安全・安心」を実現してくれるのが「セキュリティ」です。AI-OCRを提供する各ベンダーは、セキュリティ対策もセールスポイントにしていますが、大事なことはベンダーが実際に「Pマーク※1」「ISMS※2」などを取得しているかどうかです。プロモーショントークではなく、実際にセキュリティ対策の認証を得ているのか確認しましょう。

最適なAI-OCRを選ぶためのポイント⑤「サポート体制」

また、製品が優れているだけでは継続した利用促進にはつながりません。困った時に対処してくれるサポート窓口があるか、トライアル期間を含めて運用定着までの支援をどれくらい手厚くしてくれるかなどの「サポート体制」も、ベンダーの選定の上で大事なポイントです。例えば、スピード感を大事にしている企業は、そのスピード感についてきてくれるサポート体制を求めます。どの帳票からスタートしてよいか迷った場合にアドバイスをしてもらうことが必要になるケースもあります。また、全国に拠点を持つ企業の場合、全国の社員が使えるための説明会を実施するケースもありますが、その監修や実施に向けたサポートをしてくれるなど、企業のニーズに適切に対応してくれることも大事なポイントです。

最適なAI-OCRを選ぶためのポイント⑥「実績」

ここまで精度、操作性、連携機能、セキュリティ、サポートなどをAI-OCR導入のポイントに挙げてきましたが、これらの要素を確認できるのがベンダーの「実績」です。実際にAI-OCRを導入して業務適用しているユーザーの事例などを見せてもらい、それらの企業がどのような帳票をどのようなシーンで利用し、どのような効果を得ているのかなど、ベンダーのビジネスモデルをきちんと把握することが大切です。AI-OCR自体がまだ歴史の浅い市場なので、そのベンダーがどのような背景でAI-OCRを作り、何を強みにしているのか、AI-OCR以外にもどのようなプロダクト展開を目指しているのか、学習方法や領域などもしっかりと確認してください。

AI-OCRは、精度や機能面だけが重要視されがちですが、永続的に使い続けていくためにも、そのベンダーが目指している方向性やスタンスもしっかりと見極めることが大切なのです。

(第4回は2020年5月号の掲載になります。)

  • ※1 Pマーク:正式名称はプライバシーマーク制度。日本産業規格「JISQ15001個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に適合し、個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者などを評価して、その旨を示すプライバシーマークを付与する制度。
  • ※2 ISMS:正式名称はInformationSecurityManagementSystem(情報セキュリティマネジメントシステム)。個別の問題ごとの技術対策のほかに、組織のマネジメントとして、自らのリスクアセスメントにより必要なセキュリティレベルを決め、プランを持ち、資源を配分して、システムを運用すること。