第20回 『間』が心と心をつなぐ

「あの人の話って聞きやすいね。『間』が絶妙なんだよ」・・・・。そうなのです。分かりやすい話し方の最大のポイントは「間」にあります。ところが、早口で一方的に話す人は意外に多いのです。
「間」の不足傾向はますます広がっているように思います。今回は、なぜ「間」が大事なのか。どうすれば「間」が上手くとれるのかについて考えます。

話し方の3つの「間」

話し方には、異なる役割を持った3つの「間」があります。①聞いたことを解釈する「間」、②「間」の後に言う言葉を際立たせる「間」、③「間」そのものが語る「間」です。

①聞いたことを解釈する「間」=神戸外国語大学元教授の河野 守夫さんによれば、私たちは耳から聞いた言葉をすぐに解釈するのではない。一旦脳に溜めておく。0.45秒以上の「間」があったところで、溜めておいた言葉を解釈するというのです。ですから、「間」をとらずに長いセンテンスで話されると、溜めた情報が多くなり過ぎて、さあ解釈しようとすると、きわめて不正確であいまいになる恐れがあります。そうならないためには、接続助詞を減らし、「何がどうした」という短いセンテンスで言い切りながら話すこと。そうすれば当然句点で「間」をとりますから、溜める、解釈する、がひんぱんに行われ、正しく伝わると言うのです。

②「間」の後に言う言葉を際立たせる「間」=「申し込みの締め切りは3月17日(火)です」と一気に言うのと、「申し込みの締め切りは、3月17日(火)です」と、「締め切りは」のところで短い「間」をとってから日にちを伝えるのと、どちらが正確に伝わりますか。正解は後者です。3月17日の前に短く「間」をとることで、大事な日にちが際立って伝わるのです。大事な商品名や約束の場所、人の名前などを際立たせる場合も同じ手法が使えます。企画のプレゼンテーションや商品の説明をする際には、まず大事な情報、際立たせたい言葉は何かを考えて、その言葉の前に、適切な「間」を入れて伝えることをお薦めします。

③「間」そのものが語る「間」=「間」は空白の時間ではありません。文全体の流れの中で、その沈黙が大きな意味を持つことがあります。無音の「間」が語るのです。「間」の芸術と言われる朗読などでは、それが顕著に感じられますが、通常の話し方でも、「間」から深い「思い」が伝わることがよくあります。それは、「ここで黙る」というテクニックではありません。このことを伝えようという「思い」や「イメージ」があると、自然に適度な「間」が生まれます。そしてその沈黙が作る「間」が、語りかけてくるのです。

どうすれば「間」がとれるか

私が新人のアナウンサー時代のことです。先輩のディレクターから与えられたアナウンス原稿に、ここで0.5秒、ここで1秒、ここで0.3秒と細かく「間」が指定されていたのです。そのような読み方ができるわけはありません。その原稿の文字を読むのではなく、その原稿の意味内容を真剣に聞き手に伝えれば、自ずと適度な「間」が生まれるはずです。

「間」はスキルではとれません。伝えようと言う意思です。更には伝わったかどうかを確認する気持ちがあると、そこでも「間」が生まれます。

話し手は言葉を考えながら話します。それが「間」を作ります。聞き手もその「間」で理解し考えます。疑問があればその「間」で質問もします。つまり「間」が双方の息を合わせ、伝わる話し方のリズムを作っているのです。その程よいリズムを維持するためにも、今後は「間」を大切にした話し方の指導が、一層求められるでしょう。

岡部 達昭氏

岡部 達昭氏
日本電信電話ユーザ協会電話応対技能検定 専門委員会委員長。
NHKアナウンサー、(財)NHK放送研修センター理事、日本語センター長を経て現在は企業、自治体の研修講演などを担当する。「心をつかむコミュニケーション」を基本に、言葉と非言語表現力の研究を行っている。