電話応対でCS向上コラム

第30回 話すことが苦手な人と、話し過ぎる人の話を聞く

前回までは、親、子ども、上司など身近にいる立場や役割の違う人の話を聞くことに焦点を当ててきました。今回からは、話し方のタイプが違う人、例えば、落ち込んでいる人、おしゃべりな人、怒っている人、寡黙な人などの話をどのように聞くかということについて考えていきたいと思います。最初は、話すことが苦手な人、寡黙な人、逆に話し過ぎる人の話を聞く場合のポイントを説明していきましょう。

話すことが苦手な人には「分かったことを要約して返す」

 話すことが苦手な人にはいろんなタイプがあります。順序立てて話すことに慣れてない人、適切な言葉がうまく出てこない人、話の途中でほかの話題に飛んでしまう人や、親しくない人の前では緊張して何を話していいか分からなくなる人などです。こうした「うまく話せない人」の話を聞く時は、まず焦らずに、しばらく相手の話に耳を傾けましょう。そして一段落したら、分かったことを要約して返します。それが合っていれば、相手は「この人は分かってくれているんだな」と思ってほっとします。このように、すらすら話せない人には、まず、耳を傾け、「私はこんなふうに分かったよ」という合図の言葉を入れると安心し、先を続けやすくなります。

聞き手が理解を示すことで、話し上手に変化する

 子どもの話もそうです。子どもの場合、ああ言ったり、こう言ったり話がまとまりません。そんな時にも「お父さんと散歩に行って楽しかったんだ」などと理解を示すと、子どもが「うん」と言ったり、大きくうなずいたりします。子どもは分かってもらって嬉しくなるのです。このように聞き手が理解を示すと、子どもや上手に話ができない人でも、少し頑張って話す気が出てきて、安心すると話すのが上手になってきます。

寡黙な人には、「話を聞きたい」と伝えてみる

 話しが苦手な人ととともに、あまりしゃべらない、いわゆる寡黙な人の話を聞くのも難しいと思います。ただ、寡黙な人の中には、話すのは苦手だけど、人の話を聞くのは好きという人もいます。そんな人に対しては自分から話をしながら「どう思うか」とか「話が聞きたい」と言ってみても良いでしょう。例えば「あなたの考えを知りたい」「気持ちを聞かせてほしい」と自分の気持ちを伝えてみます。「話してください」ではなく「聞きたい」と伝えると、あなたの「知りたい」「聞きたい」という気持ちに「応えよう」と思ってくれるかもしれません。

話す相手にプレッシャーをかけない

 あるアサーション・トレーニングでこんなケースがありました。一緒に参加した会社の同僚から「黙ってばかりいないで話せ」と言われる寡黙な人がいました。「話さないことを選択してもよい」という話をしたセッションで、彼はこう言いました。「私は話さないことを選択していたんですね。話すことがないのにみんなから『話せ、話せ』と言われて、余計に話せなくなっていたのですが、『話さないという選択もある』と聞いて、黙っている時はそれを実践しているんだと分かりました」と。そう言った後、彼は自然に話し始めたのです。

話し過ぎる人には「合いの手」を入れながら聞く

 うまく話せない人、寡黙な人と正反対なのが話し過ぎる人です。相手かまわず一人でペラペラとしゃべる人、話したいことが尽きない人などです。そんな人には「ちょっといいですか」と言ってみましょう。そこで、止まってくれたら、自分が言いたいこと、質問や感想を一言入れてみましょう。相手の話の途中で短い合いの手を入れると、相互のやり取りになる可能性が高くなります。電話で一方的にしゃべり続けている人には、「それで?」「ちょっといい?」などの合いの手を入れながら聞くと、聞きっぱなしにならないでしょう。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

関連記事

入会のご案内

電話応対教育とICT活用推進による、
社内の人材育成や生産性の向上に貢献致します。

ご入会のお申込みはこちら