電話応対でCS向上コラム

第22回 なぜ「聴く」ことができないのか

現代人は、相手が訴えたい思いを聞かないで、課題や目的に合っている話だけを拾って聞く傾向があります。相手を理解するためには、心の動き、プロセスも「聴く」ことが大切です。私たちはどのような時に「聴く」ことができなくなってしまうのでしょうか。「聴く」を妨げる六つの態度を紹介し、さらに相手が非主張的な時や、攻撃的な時の対応法を考えていきましょう。

聞き下手な人が増えている

例えばビジネスの場においては、よく「結論を先に言え」と言われ、会議の席では、問題解決や議題に合った話だけしか聞こうとしません。しかし、解決への提案以外を全く聞かないと、シロクロはっきりしたことしか話してはならないことになります。これでは、大人も子どもも「ああも思うし、こうも思う」という心の動きを話したい時や迷いを語って、そこに潜む大切な発想の源などを発見することはできません。互いに理解し合い、相互交流やアイデアを豊かにするには、心の動き、プロセスを「聴く」ことが大切です。

なぜ「聴く」ことができないのか―聴くを妨げる六つの態度

では、私たちはどのような時に「聴く」ができなくなってしまうのでしょうか。「聴く」を妨げるものとして六つの態度があります。

①先入観のある対応
―あなたが「こんな人はどうせこうだから」と思っていると、相手の思いが聞けなくなります。
②無関心な対応
―相手に関心がない時、相手の思いを軽視・無視して的外れな対応になります。
③自分の話したいことや興味を優先する
―あなたが自分の世界にいると、相手の話は上の空になり、相手の話のポイントに反応できなくなります。
④正解思考/議論のような対応
―「それは、あなたが間違っている」「正しいのはこうだ」という構えを持っていると、相手の思いがあなたのフィルターで善し悪しに区別され、そのままをまず聴くことができなくなります。
⑤「違い」を「間違い」と判断すると
―相手が自分の考えと違っていると思った時に、「そうじゃない」と相手の思いを否定することがありますが、多くの場合、相手は「違い」を伝えているのであって、「間違っている」とは限りません。
⑥アドバイス志向
―相手は話をしたいだけなのに、助けを求めていると思い込み、アドバイスをしてしまいます。親身で聞いているようであって、ポイントを外してしまう可能性があります。

上手に聴くには、先入観や固定観念を持たずに、自分を優先せず、相手に関心を持って話に耳を傾けるようにすることが重要です。

お互いを大切にしながら、素直に会話する

私は長年にわたって「アサーション・トレーニング」(自己表現の訓練)を実施してきました。アサーションとは、お互いを大切にしながら、素直にコミュニケーションをするための考え方と方法です。「聴く」という視点から見ると、「アサーティブな会話」というのは、相手に対して「聞いていますよ」というサインを出し続けている会話です。視線、表情、姿勢、うなずきなどで「あなたに関心があります」というさまざまなサインを出すことも聞いていることになります。

相手が非主張的や攻撃的な時は「聞いていますよ」のサインを出し続ける

相手が非主張的な時や攻撃的な時にはどのようにすれば良いでしょうか。人は非主張的になっている時、自分の気持ちや考え方を言わないだけではなく、曖昧な言い方をしたり、小さな声で話したりします。しかし、あなたが「聞いていますよ」というサインを出し続けていると、話してみようかなという気持ちが出てくることがあります。相手が攻撃的になっている時は、相手の思いを聞こうと耳を傾けてみましょう。攻撃的になっている時、人は「自分の思いを分かってほしい!」という気持ちを優先するので、まず、こちらがそれを聞こうとすると安心して、攻撃的でなくなる可能性があります。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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