電話応対でCS向上コラム

第21回 聞くことは思いのほか難しい

コミュニケーションは、「話す人」と「聞く人」がいて初めて成り立つものであり、一人ひとりが両方の役割をしっかりとることで、心地良い人間関係が作られ、安定した社会生活が続いていくことになります。「聞く」ことは、実は話すことと同じぐらい、あるいはそれ以上に難しいのです。今回からは、この「聞く」をキーワードに、聞くことの意味、聞くことで開かれる人間関係などを探っていきます。

言葉や態度は正確に伝わらない

私たちが会話をする時には、お互いに自分の思いを言葉や表情、態度などで伝えようとします。しかし、それが相手にどのように伝わるかはさまざまです。例えば「どうしたの?」と声をかけられた人が「大丈夫」と答えたとします。この返事は、「心配してくれてありがとう」とも「放っておいてください」とも受け止めることができます。このようにさまざまな受け止め方があるのは、私たちにはそれぞれの理解の枠組みがあるからなのです。人は育った環境、時代背景などによって作られた枠組みで言葉を使い、理解します。

相手が伝えたいことを理解するために

自分が伝えたいことは、自分の枠組みで伝えて、その思い通りに正確に伝わってほしいのですが、これまで書きましたように、相手は相手の枠組みでしか受け取ることができません。お互いに心の中は見えず、しかも、お互いの枠組みで語り、理解するのがコミュニケーションの現実です。であるならば、お互いの思いを正確に理解し合うためには、私たちはとりわけ聞き方に気を配る必要があります。

「きく」にも3種類ある

一口に「きく」と言っても、その種類には「聞く」「訊く」「聴く」の三つがあります。まず「聞く」は、音が耳に入ってくる、聞こえるという意味で、音や言葉が「右の耳から入ってきて左の耳に抜ける」こともあります。要は、声や言葉が聞こえても関心がなければそうなります。二つ目の「訊く」は、知りたいこと、質問したいことを尋ねることです。会話において質問は大切ですが、相手を理解しようとしない訊き方は、相手が自分の思いを話す気力をなくしてしまうでしょう。三つ目の「聴く」は、心を込めてきくことなのです。いわば「聞く」は受動的で、「聴く」は能動的なのです。

アサーティブに相手を知るには「聴く」姿勢が重要

アサーティブに相手を知ろうと思ったら「聴く」という姿勢が大切です。話し手が「分かってもらっている」と感じるためには、真剣な態度でタイミングよくうなずいたり、相づちを打ったりするのはもちろん、表情や言葉で共感を示すことが大切です。つまり「聴く」ということは、相手を大切にするアサーションであり、相互交流の要だと言えるでしょう。話し手の話を丁寧に聴いていることが、あなたの表情や言葉になって相手に届けば、相手は「この人には話が通じる」「もっと話したい」と感じることでしょう。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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