電話応対でCS向上コラム

第12回 アサーティブになるための五つのヒント

ここまでさまざまな角度からアサーションの基本を学んできました。それでも「アサーションをしたくても、うまくできない」という方は少なくないでしょう。それは、皆さんのこれまでのさまざまな経験や思い込みによって、アサーションができにくくなっているからかもしれません。今号ではこれまでの復習も兼ねて「アサーティブになるための五つのヒント」を紹介します。

(1)アサーションする権利を確認する

例えば、友人が夜遅く電話をかけてきました。会社で失敗をして、愚痴を聞いてもらおうとかけてきたのでした。しかし、あなたは昨日徹夜で残業し、今日は早めに寝ようとしていたところでした。このような時、多くの人は「断ると罪悪感を持つし、引き受けると自己嫌悪に陥るし…」というジレンマを体験します。こういう時こそ、アサーションする権利を確認することが大きな助けになります。

(2)アサーティブな考え方に変える

物の見方や考え方がアサーティブでない時、アサーションができないことがあります。例えば「物分かりの良い人が好かれる」「仕事では常に完璧を目指すべきだ」などの考えが当たり前だと信じていると、非主張的になったり、攻撃的になったりします。私たちは、常識に従って物事を判断します。考え方や思い込みが自分の希望や欲求を抑えるように働くと、自己表現を制限して生活を送るようになる可能性があります。自分の考えや気持ちを大切にし、思いを正直に相手に伝えてみることが大切です。

(3)自分の気持ちを把握する

言いたいことが自分でもはっきりつかめていない時には、アサーティブになれません。自分の気持ちを明確に把握することはアサーションの第一歩です。成長とともに自分の訴えを聞き入れてくれない親の態度や行動に接して、素直な自己表現をしなくなります。表現されることのなかった気持ちや考えは意識の底に追いやられ、自分でも分からなくなってしまうのです。それでも胸の底に眠っている気持ちをつかもうとすると、だんだんできるようになってきます。アサーションをしようとする気持ちがあると、自分の気持ちを明確にする助けをしてくれます。

(4)結果や周囲を過度に気にしない

自分の言うことが他者にどのように受け取られるかを気にしすぎるとアサーションに影響します。相手を大切にする気持ちを持ちつつ、まずは自分のできる範囲で、気持ちを正直に表現することにエネルギーを注ぐようにしましょう。また他者や周囲の状況を気にすると、自分の気持ちをおろそかにしているかもしれず、言いたいことが分からなくなってしまうことがあります。このようにならないためにも、過度に結果や周囲を気にせずに、まず自分の思いを確かめ、表現方法を考え、伝えてみましょう。他者の受け取り方はその人の自由でもあります。

(5)アサーションのスキルを習得する

多くの人がアサーティブになれない理由は、そのスキルを持っていないことにあります。スキルを持たない親や、社会的スキルの訓練に無関心な大人に育てられると、対人スキルが身につきません。ただ、対人スキルは、ゴルフやピアノと同じように訓練をして身につくものなので、スキル習得のチャンスがなかった人は、それを学び訓練すればいいのです。まずは適切なアサーションができている人の言動を観察してみましょう。どんなスキルがあるのか、どう表現すれば良いかが分かり、スキル向上に役立つでしょう。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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