電話応対でCS向上コラム

第42回(最終回) 頑張った人をねぎらい、なぐさめる言葉かけ

大仕事が終わったり、頑張ったことを成し遂げた後には、誰もがそのことを聞いてもらいたくなるものです。仕事や私生活で面倒で大変なことが起こって、その状態を抜け出した時にも、ほっとした気分で人に話したくなります。そんな話を聞いた時、あなたは相手にどんな言葉かけをしますか。今回は、相手をねぎらい、なぐさめる言葉かけについて考えましょう。

近くで見守っていた人だからこそ言える言葉

 苦労して成功に導いた仕事が終わった。大変な思いをして難関を乗り越えた。そんな時は、相手にねぎらいの言葉を贈りましょう。「大変だったね」「よく頑張ったね」「おめでとう。本当にお疲れさま」などの一言は、親や先生など、近くで見守っていた人だからこそ言える言葉です。また、苦労や頑張りは、必ずしも成功だけにつながるとは限りません。そんな時には、ねぎらいだけでなく慰めの言葉かけも必要です。

一緒に残念がるのもねぎらいとなぐさめになる

 良くない結果から抜け出せないでいる人に対しては、まず「残念だったね」「惜しかったね」「あと一歩だったね」と、一緒に残念がりましょう。とりわけ、その人の努力や頑張りをよく知っている人は、相手の気持ちになって自分の気持ちを表現することもねぎらいとなぐさめになります。例えば、試験が不合格になった時、「受からせてやりたかった!」「かなり頑張ったのに!」などです。また、部下や後輩がひどく落ち込み、後悔していたら、次のように言うこともできるでしょう。「後悔は後でするから意味がある。至らなかったことが分かるなら、次につながり、成長できる」と。

プロセスを知っているからねぎらうことができる

 成功と失敗、合格と不合格……。世の中には白と黒しかないわけではありませんが、時には、受験に失敗してしまった、昇進試験に落ちてしまったなど、深刻な状況もあり得ます。そんな時、そこまでの努力を見届けてきた人は、その結果には「惜しかった」「残念だ」と共感できると同時に、だからこそプロセスすべてが無駄だったわけではないことも知っています。それまで時間をかけて、さまざまな思いを込め、努力をしてきたという経験は、何にも代えがたいプロセスだからです。そんな時は、相手の残念さや落胆に共感するだけでなく、その人の気持ちを別の方向へ向ける声かけも必要です。「あなたのやったことは、決して無駄にはならない」「それを活かせば、より良い方法が見つかる」など、結果ではなくプロセスを見るように促し、ねぎらうことです。ポイントは、相手の状況や気持ちを理解し、寄り添いながら、結果だけがすべてではなく、そのプロセスで獲得したことを次につなぐ言葉かけをすることです。

 「アサーション ―自分も相手も大切にする自己表現― 」は、この42回をもって終了することになりました。3年以上の長きにわたって本連載を読み続けてくださった読者の皆さんに、心から感謝いたします。

 私たちの毎日は、うまくいくこともあればいかないこともあり、何かを解決しては、また、新たな問題に出会うことの繰り返しです。そんな日々を支えてくれるのは、何にもまして身近な人々との人間関係です。この数ヶ月のテーマは、人間関係をつくり、つないでいくためのアサーションでしたが、皆さんの仕事と生活が豊かな人間関係に支えられた日々でありますよう願い、本連載を終わりたいと思います。(平木典子)

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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