電話応対でCS向上コラム

第39回 相手の「魅力」や「すばらしさ」を知らせる

他人からのほめ言葉は、素敵な自分を何倍にもして映してくれる「鏡」のようなものです。「私にもこんな魅力があったんだ、こんなすばらしいことができたんだ」と、気づかせてくれます。人は、自分のことを分かっているつもりでも、時には鏡に映して確認することでそこを磨くことができます。あなたも身近な人の鏡になってみませんか。相手もあなたの素敵な姿を鏡に映して見せてくれるでしょう。

やる気を引き出す・磨きをかける

 その人が持っている実力以上のことを成し遂げた時、最後までやり通した時─そんな時はどんどん言葉にしてほめましょう。特に幼い子どもにとってほめられることは、言わば成長の肥料になります。苦手だったことが初めてできた時など、枠組みをはみ出すようながんばりを見せた時には「やったね!」としっかりとほめたいものです。これは大人にとっても同じです。自分なりに努力してきたことをほめられたら、嬉しくなり、自分の人生が豊かになります。また、人間はいくつになっても、ほめられることで成長するもので、自分に磨きがかかります。

目上の人が喜ぶほめ言葉

 「すごい!」「よくやった!」というほめ言葉は、対等な立場の人や目下の人には適していますが、上の立場の人には使いにくいものです。リーダー的な立場に立つ人をほめるには、その人のことを直接ほめるのではなく、その人の部下をほめるのもいいでしょう。「あなたの部下は良い業績を挙げている人が多いですね」など、具体的な指摘であればあるほど称賛の気持ちが伝わるでしょう。ある売れっ子の作家の話ですが、“ファンレターのメッセージで一番嬉しいのはどういうものか?”という問いに「先生みたいになりたい。どうしたらなれますか?」という言葉だそうです。たしかに言われた人にしてみれば、才能も過去の経歴も何もかも、自分の存在を丸ごと認められたような感じを受けるのではないでしょうか。

二つのニュアンス~うらやましいわ~

 「いいわねえ。あなたにはそんなことができて、うらやましい。私もあなたみたいな人になりたい」このように自分にはない相手の良さを「うらやましい」という言葉で表現するとほめることになります。ただ、後に続く言葉によって、ニュアンスは違ってきます。例えば「私もあなたみたいにできるようになりたい。でも私はできない……」では、ほめていることにはならず、相手を自分を責める材料に使っているだけです。「うらやましい」は、ほれぼれした気持ちを伝えることでほめ言葉になりますが、否定的な言葉を加えると「うらめしい」になりかねません。

相手も自分も嬉しい「嬉しさ2倍の法則」

 あるカウンセラーのところへ、世話になった人がお礼を言いに来ました。「先生のアドバイスのおかげで、うまくできました。自分でも大成功だったと思います。ありがとうございました」と、満面に笑みを浮かべて、いかにも嬉しそうです。カウンセラーも嬉しくなり、こんなほめ言葉を投げかけました。「あなたがやったんだよ。よくやったわね」すると、その人は一層嬉しくなって、カウンセラーに握手を求めてきました。「よくやった」という満足感が他人からほめられることで確信でき、格別な体験になったのです。自分をほめた後、加えてほめられると、満足している姿が鏡に映し出され、嬉しさも2倍に実感できる手ごたえになって返されたのでしょう。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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