電話応対でCS向上コラム

第31回 落ち込んでいる人の話、愚痴を聞いてほしい人の話を聞く

日常生活で接する人は、元気な人ばかりとは限りません、落ち込んでいる人、不満を抱えていて愚痴を聞いてほしい人など、さまざまです。そういう人たちの話を聞いて、上手にコミュニケーションをとるにはどのような点に注意を払えば良いのでしょうか。今回は、落ち込んでいる人、愚痴を聞いてほしい人への対応方法を紹介していきましょう。

一緒に落ち込まないことが大切

 落ち込んでいる人に対しては、その人の気持ちに寄り添って話を聞くことが基本です。落ち込んでいる状況に対して、理解を示す言葉をかけながら聞くのです。大切なことは一緒に落ち込まないことです。相手は、一緒になって同感されると助かることもありますが、これでは話し手も聞き手も落ち込むことになりかねません。一緒に落ち込むのは相手にとって助けにならないばかりか、相手は「自分の大変さに巻き込んで申し訳ない」と思って、一層気持ちが沈むかもしれません。

聞き手は聞き役に徹する

 そこで重要になってくるのが、聞き手は気持ちを安定させて共感することです。こちらが大丈夫という印象を与えれば、相手は聞いてもらえた分だけ気持ちが軽くなります。ただし、「大変だったね」などと言いながら「実は私も大変で…」と自分の話を持ち出して共感を伝えようとしないことです。その結果、相手は自分の思いを伝えるチャンスを失ってしまうでしょう。

相手と同じ状態にならずに分かろうとする

 落ち込んでいる人に対しては、話に共感しながら、「あなたの気持ちは理解しているけれども、私は私の場所にいて、力になりますよ」という雰囲気で聞くことが大切です。一緒に落ち込むのは同感や同情です。共感は相手の気持ちを理解しながら、自分は同じところにいない。相手と同じ状態にならずに、分かろうとすることです。「さぞかし大変だろう」と相手の身になりながら、「同じ状態にいない私が、あなたを支えたい」という態度を伝えることが大切なのです。

愚痴も相手の気持ちに添って聞く

 一方、愚痴を聞く時にも、相手の気持ちに添って聞くことが大切です。「そうだ、あなたの言い分はごもっとも!」「あなたが怒るのは無理もない!」という気持ちで聞きます。アドバイスめいたことを言わないことが肝心です。例えば、バスに乗った時に、運賃の支払いで運転手とトラブルになって憤慨した場合、相手の「ケンカしてもしょうがないと思って、すごすごと後ろに行ったんだけどさ」という愚痴に対して、「そんなバス会社、どこの会社なの?」「運転手の名札見た?」「バス会社に電話して社員教育にクレームをつけてもいいよね」などと相手の思いを代弁してみると、相手もすっきりするでしょう。

相手を責めないで愚痴を聞く

 普段は冷静でも、「急いでいる時」「エネルギーがない時」などはアサーティブな対応ができないことがあります。愚痴というのは、やむを得ずアサーティブな対応ができなかった時に、聞いてもらいたい話です。クレーム対応のように、理不尽な物言いに耐えなくてはいけないこともあります。そんな時、聞き手は話し手を責めないことです。ただ愚痴を聞いてくれる聞き手がいるだけで話し手は救われるのです。

※アサーションは、「もしもし検定」のカリキュラムに導入されています。

平木 典子氏

日本電信電話ユーザ協会 電話応対技能検定委員。立教大学カウンセラー、日本女子大学人間社会学部心理学科教授、跡見学園女子大学臨床心理学科教授を経て、統合的心理療法研究所(IPI)顧問。専門は臨床心理学、家族心理学。日本カウンセリング学会理事。

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