ICT導入事例 -向洋電機土木株式会社-

ワークライフバランスを考え、テレワークを手段として導入。仕事の「見える化」も進めて生産性を向上

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横浜市南区にあって、公共工事などに伴う電気設備工事を事業とする向洋電機土木株式会社は、年々、業績も社員数も着実に伸ばしています。これは、「CS(顧客満足)にはES(従業員満足)やFS(家族の満足)の向上が不可欠であり、それを根底から支えるのがPS(個人満足)である」との考え方を基に、テレワークなどによる働き方改革を進めてきた成果です。ワークライフバランスを重視して、無駄な残業を減らし、社員のストレスを排し、生産性を向上して生まれた時間をスキル向上や資格取得の勉強に充てるなど、社員とその家族の幸せにつながるようにした施策が好循環を生み出しています。

  • 【導入の狙い】現場移動による時間の無駄を無くし家庭の事情などを抱えた社員のために働き方改革を進めたい。
  • 【導入の効果】テレワークによって生産効率向上、社員の成長と会社の成長が一体となってきた。
ウェブメディアを活用した情報発信とブランディング戦略

社員が抱えている悩みや求人難を解消する手段としてのテレワーク

広報部 部長・横澤 昌典氏

▲広報部 部長・横澤 昌典

電気設備工事という仕事柄、各地に工事現場があり、社員は、自宅・会社・現場を移動するだけでも大変な時間を要します。また、介護や子育てなどの事情を抱える社員の場合は、精神的にも肉体的にも大きな負担を強いられます。こうした問題を改善することがワークライフバランスを保ち、人材の確保・育成を促進すると判断した同社では、2008年から広報部部長で人事の責任者でもある横澤氏を中心に、テレワーク導入の検討を始めました。会社に立ち寄らずに現場に直行し、仕事は現場か自宅ですませるようにする、介護や子育てのために在宅でも仕事ができる仕組みと制度を考えたのです。

「実は、自分も親の介護の問題で前職を離職した経験がありました。社員とその家族の幸せを考えて働き方を改革したいと考えていた倉澤社長と話し合い、『思う通りにやってみろ』と背中を押されて、取り組みを始めたのです」(横澤氏)


仕事とスキルを明確にし、使いやすくてセキュリティ万全なシステムへ

▲テレワークの推進により自宅から指示書などを直接現場担当者に送ることも可能になった

▲テレワークの推進により自宅から指示書などを直接現場担当者に送ることも可能になった

横澤氏がまず取り組んだのは、誰がどのようなスキルを持ち、どんな仕事を、どのくらいの時間をかけて処理しているかの調査でした。またシステムの専門家ではなかったので、自分でも使えそうなソフトウェアやサーバー、デバイス類の勉強にも取り組み、役職ごとの権限に応じて取り扱い情報ごとにアクセスできるファイルのセキュリティランクを決めました。そのファイル類も、クラウド上に置くものと本社サーバー内に置くものなどを峻別しました。社員には、同じスペック、同じソフトをインストールしたスマートフォンとノートパソコンを配布しましたが、使用場所は、自宅か決められた現場にするとルールを定め、社外への情報漏えいを防ぐためSNSなどを使用することは禁止しました。制度・運用面ではほかにも、社員一人ひとりの標準業務時間を設定した上で、実際にかかった時間を確認する労務管理を実施。ネットワークへの接続は自宅ではフレッツ回線、現場などではスマートフォンのテザリング機能※を使ってのWi-Fi接続で、使用状況は割り当てたアドレスから監視できます。このようなインフラの整備と、業務範囲・内容を明確化したことにより、現場や自宅で設計図や指示書、工事報告書の作成などを行えるようにしたのです。

「コストをかけたくないのでパッケージではなく信頼できるフリーソフトと、監視用プログラムを自作しています。使用するフリーソフトは三つあり、まず、インターネット回線を使って自由に対話できるテレビ電話システム。これは対面での打ち合わせ、指示書や図面を見ながら会議ができます。次に、SNSのように社内で会話できるチャットアプリケーション。これは限定された人たちだけで情報発信・共有がスムーズにできます。そして、Wikipediaのように業務知識を自分たちでリアルタイムに編集・蓄積できるソフト。これは、遠方の担当者同士で仕様書作成などが同時構築できます。現在、モバイルではテザリング機能を使って接続していますが、容量をシェアする方式なので速度的には不十分。将来的にはミニWi-Fiルーターを支給したいのですが、コストもかかるのでそれは“原資”をもっと稼いでからです」(横澤氏)

同社では、テレワークの活用によって生まれた効果を計量化し、その分をシステム整備の投資に回すという考え方をしています。例えば、社用車での移動にかかっていた総時間を減らしたことで、保険料が70%削減できました。パソコンなどのコストはこうして捻出したものです。



社員との話し合いを継続し、社員の成長を会社の成長につなげる

施策を進めるに当たって重視したのは、生産性を向上して働き方改革につなげること、そして社員の成長と会社の成長を一致させることでした。テレワークの普及は手段であり、それ自体が目的ではありません。

「システムを使うことを強制していません。生産性の向上のため常に全員と話し合いを重ね、『できない』なら『どうすればできるようになるか』の原因を一緒に考え、解決するよう努めています。その結果、設計図書やISOの審査資料の作成などは、常に社内にいる事務職でこなせるようになりました。時間に余裕が生まれたら、それを資格取得の勉強に回すよう指導もしました。有資格者には手当も出ますし、資格者の増加は工事受注にも良い結果となります。また、『二人目の子どもが持てた』とか『マンション購入の決心ができた』など、社員の家族の幸せにつながっているのが何より嬉しいです」(横澤氏)

テレワークを含む一連の働き方改革の結果、2016年度は2008年度に比べ、社員数が9人増えたにも関わらず、ガソリンの使用量は83%、本社の電力使用量は75%に減少、平均労働時間は2,100時間から1,800時間に削減されました。その間、売上は倍増しています。また、同社の取り組みを知って働きたいと希望する人も全国から数百名も集まるようになりました。


働き方改革に完成はない 生まれてくる新しい問題に対処

▲テレワークが浸透したことで人材の確保・育成にも貢献している

▲テレワークが浸透したことで人材の確保・育成にも貢献している

テレワークを活用した働き方改革の先進企業として知られるようになり、横澤氏は「女性の社会進出」「介護と仕事の両立」などの講演を行っていますが、同社の働き方改革はまだ完成形ではないと言います。

「誰もが、『働きやすい職場』を望みますが、その『働きやすさ』は、その人のライフステージによって変わるものです。これからも次々と新しい問題にぶつかるでしょうし、挑戦は続けねばならないと思っています。改革を継続するには本人だけでなく、ご家族の理解と協力が重要であると思います」(横澤氏)

  1. ※テザリング機能:スマートフォンをWi-Fiルーター(親機)にしてWi-Fi対応機器(子機)をインターネットにつないで活用できる機能。

会社概要
向洋電機土木株式会社
会社名
向洋電機土木株式会社
創業
1965年(昭和40年)3月11日
所在地
神奈川県横浜市南区井土ヶ谷下町16-6
代表取締役社長
倉澤 俊郎
従業員数
35名(女性10名)
事業内容
電気設備設計・施工
URL
http://www.kouyo-dd.jp/
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