ICT導入事例 -尾鷲物産株式会社-

バーコード活用による加工魚出荷作業の効率化とトレーサビリティを実現

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全国のスーパーや回転寿司チェーン店などからの注文に応じて、魚の種類・部位別に加工した商品を梱包・発送する作業(ピッキング)は、正確さとスピードが要求されます。総合水産会社・尾鷲物産株式会社は、バーコードによるピッキングシステム導入でこの課題に取り組み、作業を効率化させました。また、商品情報の管理精度を高めたことにより、食の安全性を確保するためのトレーサビリティ※1も実現しました。

  • 【導入の狙い】煩雑で重複の多い出荷業務を標準化・簡素化し効率的なピッキング業務を実現。
  • 【導入の効果】正確で効率的なピッキング業務により商品情報の管理精度を高め、食の安全性も確保。
バーコード活用のピッキングシステムによる受発注・配送の流れ

新鮮で安全な魚を部位別に加工して出荷する作業

▲常務取締役・玉本 卓也氏

▲常務取締役・玉本 卓也

中部圏でも有数の漁業の町・三重県尾鷲市に本社を置く尾鷲物産株式会社は、近海マグロのはえ縄漁※2からブリやハマチの養殖、それらの加工及び直売店運営まで手がける総合水産会社です。1972年に地元スーパーの水産部門から独立して創業した同社は、「顧客の要望を重視する“マーケット・イン”の考え方をDNAとして持っている」ことが特長です。具体的には、全国の食品スーパー、回転寿司チェーン店、居酒屋などからの日によって変化する多様な注文に応じて、魚種・部位別に加工して出荷しています。例えば、回転寿司チェーン店からの「トロだけほしい」という特定部位だけの注文にも対応します。とは言うものの、同社の年間出荷量は、ブリ・ハマチで約100万尾、輸入サーモン35万尾、真鯛25万尾など総計約193万尾(7,600トン)に上り、それを、背・頭・トロ・カマ・中骨などの部位別に必要量だけを加工し、客先別に梱包・発送する作業は容易ではありません。

「近年、スーパーや回転寿司チェーン店でも自社で魚をさばく人手が不足しており、こうした部位別加工の注文が増えています。新鮮で安全な商品を、正確・迅速かつ安定した量と価格でお届けするのが当社の使命であるため、加工から出荷までの作業を効率化し、安全を担保することが経営課題です」(玉本氏)

▲お客さまの多様な注文に応じて魚種・部位別に加工されます▲お客さまの多様な注文に応じて魚種・部位別に加工されます
▲お客さまの多様な注文に応じて魚種・部位別に加工されます

受注から加工・出荷まで情報管理のカギはバーコード

同社が梱包・発送業務の効率化に取り組み始めたのは10年前。電話、FAX、メールなどで受けた注文データをExcelで処理し、指示書に打ち出して加工から出荷までの現場に情報を流すようにしました。しかし、誤入力やラベルの貼り間違い、実績データ数値の記入ミスなどがあり、なかなか効果は出ませんでした。そこでピッキングシステムの開発に強いシステム会社と相談しながら、年々、少しずつシステムの改良を図り、2年前に完成したのが現在稼働しているシステムです。

「お客さまの発注システムもさまざまで、現在でも10種類くらいのデータ形式で受注しています。まず、このデータを取り込んで加工指示、出荷検査、売上計上、納品データの返信にも共有し、一元管理できるようにします。加工後の出荷では、出荷管理の正確さ、効率的に配送するための積載効率が重要になります。ピッキングの現場には防水型のタッチパネル端末とバーコード・プリンターを3台、LANでつなぎ、受注データとの照合を行います。そして、いつ、どこに、どれだけ出荷するかを把握し、配送伝票とともに商品にバーコードなどが記載されたラベルを貼付します。バーコードは『コード128』という情報量の多いものを採用し、商品IDや加工日時など30以上の項目が入れられるようにしました」(玉本氏)

▲水産加工品はそれぞれバーコードによって一元管理▲水産加工品はそれぞれバーコードによって一元管理
▲水産加工品はそれぞれバーコードによって一元管理

「このシステムがなかったら出荷量の増大に合わせられなかった」

同社の売上高は、主要取引先の回転寿司チェーン店やスーパーが店舗数を増やしていることもあって、過去5年間で150%も伸びています。アジア圏への輸出も好調です。ピッキングシステムの改善による効果も大きく、これまで1ラインあたり7人で処理し、1時間で497箱(=1時間あたり71箱/人)だったのに対して、現在は3人で355箱(=1時間あたり118箱/人)と、ラインあたりの処理能力が2.14倍になりミスも軽減されました。

「画面と対話し、アラート(警告)を確認しながらの作業でミスが減り、省力化も実現。送り状などもリアルタイムで発行しているので事前準備も不要です。このシステムがなかったら出荷量の増大ペースに合わせることは不可能だったと思います。何より安心なのは、どの商品が、いつ、どこで加工されたかなどのID情報と、ピッキング履歴によるトレーサビリティを実現できたことです。食品を扱う事業者として安全性は最優先ですから」(玉本氏)

この食の安全に関しても同社の取り組みは先進的で、食品製造の最も厳格な品質基準といわれるSQF認証※3や、HACCP認証※4も取得しています。


コストや作業員の熟練度なども考慮し自社に適したICT化を推進

本社のある尾鷲は、首都圏・関西圏・中部圏の大市場とのアクセスも良く、四国や九州の養殖場からの船便や、ノルウェーなどからの空輸便にとっても好立地です。また、養殖ブリに関しても、尾鷲はほかの養殖・加工地よりも大市場とのアクセスが良いため、加工注文を遅い時間まで受けることができるのです。そこで高度なピッキング能力を発揮することで、同社商品の新鮮さ、使いやすさの評価も高まることになります。

「市場からは、安定供給・安心供給が求められています。でも、これ以上人手をかけず、無理のない範囲内での投資でICT化を進めたいと思います。例えば、現状では、梱包時に1品ずつ人の手でバーコードを読ませていますが、これも自動化できれば省力化になります。しかし、コストと同時に作業員の熟練度も考慮しています。慣れた作業手順を急に変えるのは逆に効率を下げる場合もあるからです」(玉本氏)

このように、コストだけでなく作業員の熟練度なども考えながら自社に適したICT化を推進していることが同社の特長といえます。

▲「尾鷲は大市場とのアクセスも良く流通面で好立地」と語る玉本氏▲「尾鷲は大市場とのアクセスも良く流通面で好立地」と語る玉本氏
▲「尾鷲は大市場とのアクセスも良く流通面で好立地」と語る玉本氏

  1. ※1 トレーサビリティ:跡をたどることができるという意味。食品の安全を確保するために、原材料の栽培や飼育から加工・製造・流通などの過程を明確にすること。また、その仕組み。
  2. ※2 はえ縄漁:1本の幹縄に多数の枝縄(延縄)をつけ、その枝縄の先端に釣り針をつけて行う漁法のこと。
  3. ※3 SQF認証:Safe Quality Foodの略で、フードチェーン全体を通して食品安全を管理し、品質システムを改善するために完成された認証プログラム。
  4. ※4 HACCP認証:Hazard Analysis and Critical Control Point認証の略で、効果的な食品安全管理の要件を定める国際基準。
会社概要
尾鷲物産株式会社
会社名
尾鷲物産株式会社
創業
1972年(昭和47年)
所在地
三重県尾鷲市林町1-33
代表取締役社長
小野 博行
資本金
6,500万円
売上高
約134億円
従業員数
235名
事業内容
魚類養殖、近海はえ縄漁、魚類の部位別加工・干物加工、直売店経営
URL
https://www.owasebussan.net/
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