ICT導入事例 -ホテルグリーンチェーン(松月産業株式会社)-

多店舗展開のホテルオペレーションを自動化し、リピーター獲得策を展開

特集記事PDF版はこちら

「ホテルグリーンチェーン」を展開している松月産業株式会社の強みは、2011年から稼働しているクラウドを活用したホテル業務支援システム。全店舗の稼働状態をリアルタイムで把握し、従業員も稼働情報・顧客情報を共有し、空室対応やスピーディできめ細かい接客やサービス向上を実現しています。さらにシステム経由の顧客情報だけではなく、SNSやお客さまからの口コミ情報でリピーターも急増。売上も現在では約3倍に伸ばしています。

必要な情報を一元管理するクラウド活用のホテル業務支援システム

各店舗の稼働情報を一つずつ集める方式に限界

▲代表取締役・今中 美恵氏

▲代表取締役・今中 美恵

インターネットの普及とニーズの多様化により、ホテル業界では予約から決済までの業務を、より柔軟でスピーディに処理する必要があります。仙台市内の好立地に13店舗1,150室のビジネスホテルを運営するホテルグリーンチェーンは、着実に業績を伸ばし、年に一棟のペースで事業を拡大しています。同社の快進撃を支えているのは、2011年に更新したクラウド活用のホテル業務支援システムです。

更新前は、各店舗に置かれたサーバーから稼働状況や会計情報を集める方式だったため、ある店が満室で他店に空室状況を確認する際に時間がかかっていました。仙台に特化したチェーンであるという強みを活かし切れていなかったと言えます。

「本部から各店のサーバー内データに一つずつアクセスして情報を集める方式でしたので、時間もかかりお客さまや代理店にご迷惑をかけ、限界を感じていました。この情報収集の作業を自動化して業務効率を上げようというシステム更新の計画を2011年に立てました」(今中氏)

ICTベンダーと一緒に進めた更新計画は、各店舗のサーバーを廃してクラウドに移し、クラウド内に置かれた多店舗対応のホテル業向けソフトウェア群を使うという方式でした。


ホテル業務支援システムへの更新を行い、必要な情報を一元管理

計画を実行に移そうとしていた矢先の2011年3月、仙台市は東日本大震災に襲われました。市内中心部も大きな被害を受け、インフラも途絶した中で業務を行いましたが、震災の経験から安定的に稼働するシステムの必要性を痛感し、ベンダーとともに急ピッチで導入を図り、9月には稼働にこぎつけました。

クラウド上で稼働するホテル業務支援システムで利用したソフトウェアは、宿泊情報、顧客情報、売掛情報などを各店舗の端末から集めて一元管理するものです。このように必要なソフトウェア群を組み合わせて利用するサービス「SaaS」※を、ベンダー側があらかじめ多店舗展開のホテルグリーンチェーン用に設定しました。また、新たにインターネット利用客が急増していることを受けて、ウェブサイトから直接予約受付ができるようにし、自社ポイントカード会員への登録を促してリピーターを増やすようにもしました。


自動化を進め、セキュリティ対策や教育も体系化

▲次世代開発本部次世代工具開発室 室長・髙橋 広氏

▲常務取締役・田所 寛章

取締役・田所 成章氏

▲取締役・田所 成章

効果はすぐに現れました。各店の稼働状況を一元的に把握し、空室のある店舗をすぐに紹介したり、キャンセルや変更にも即時対応できるようになりました。また従業員は顧客情報も共有しているので、過去の利用履歴などを参照しながら部屋の希望に応じたりする個別対応など、きめ細かいサービスを提供できるようになったのです。さらに新たに追加したインターネット予約機能を経由した予約数も1年間で150%近く伸び、リピーターになりうるポイントカード会員の登録も着々と増えてきました。更新前に10億円だった売上も、震災後の需要や店舗・客室数を増やした効果もあって、2014年のうちには23億円になったのです。

そして2015年、システムのさらなる進化を図る段階を迎えました。その担い手は、この年の1月に東京の金融機関を退職して事業を手伝うために仙台に戻ってきた今中氏の甥二人(田所 寛章氏、田所 成章氏)です。

寛章氏が取り組んだのは、予約受付、会計の仕訳、自社ポイントカードシステム、銀行の振替など個々に処理していたものを、誰もが簡単に一括処理できるよう自動化することでした。ホームページも利用者が増加しているスマートフォン対応に切り替え、帳票類のプリントアウトもほぼ全廃しました。今中氏は構想や要望を伝える役目に変わりました。

「システムを導入しても使い方のノウハウが足りなくて、システムの性能を充分に活かし切れていませんでした。SaaSも定期的に見直して、より効率化できるよう最適化しています。顧客情報などは、アクセス権限を明確にし、セキュリティ対策も整備しました。使い方の教育も各店担当者から各店のスタッフ全員に教える流れにしました。業務効率化とサービス充実のバランスを考え、社長とも相談しながら進めています」(寛章氏)

現在、同社ホテル個人客の約8割はインターネット予約客です。年々、その多くが自社のポイントカード会員になり、リピート率が高まっています。この流れを拡大する上で、無視できないのは顧客たちによるSNSなどで公開・拡散される口コミ評価です。同社では、顧客とのより親密なコミュニケーションを図るため、従業員が日々の出来事や自慢の朝食メニュー、近隣のグルメ情報などを自社Facebookページやブログに書いています。

「リピーターに評価が高いのは、地元の野菜や米を使った手作りの朝食バイキングと接客サービスです。この情報も従業員が共有し、接客サービスの検証に役立つデータになっています」(成章氏)


ICT活用でビジネスホテルの新たな事業モデルを追求

多様化する顧客ニーズに対応していくため、今後のICT活用にも余念がなく、次の対策としては、増えている海外客がスマートフォンで決済する「キャッシュレス」化への対応などを考えているとのことです。

「将来的には、スマートフォンでチェックインし、部屋のドアキーもいらないという時代になると思います。利便性と快適さをもっと高めつつ、温かみの感じられるおもてなしで、サービスを向上させていきたいと思います」(寛章氏)

SaaSやクラウドを活用したシステムも2011年の更新から改善し続けており、現在の売上は当時の3倍にもなっています。ビジネスホテルの新しい事業モデルを追求する同社の推進力は、時代に合った感性とスキルでICT活用の可能性にチャレンジし続けていることで生まれているようです。


※SaaS:サース、Software as a Serviceの略。必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるアプリケーション。


会社概要
ホテルグリーンチェーン(松月産業株式会社)
会社名
ホテルグリーンチェーン(松月産業株式会社)
設立
1967年(昭和42年)9月
所在地
宮城県仙台市青葉区中央2-6-8
資本金
4,000万円
代表取締役
今中 美恵
事業内容
不動産賃貸/売買業・ホテル業
URL
https://www.bh-green.co.jp/
↑
PAGE TOP