ICT導入事例 -有限会社まるみ麹本店-

自然の力に学びつつ おいしい麹や味噌造りにICTを活用

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有限会社まるみ麹本店では、親子2代で半世紀以上にわたって自然醸造により麹や味噌を造り続けてきました。同社ではICTを製品作りや通販の営業活動、さらに顧客とのコミュニケーション作りにも活用して着実に業績アップにつなげてきました。この努力の結果、平成28年度「おかやまIT経営力大賞」を受賞しています。

●導入の狙い:製造工程の情報化と品質管理の自動化、さらに営業面を強化。
●導入の効果:安定した自動温度管理を実現。顧客分析や販売促進にも効果が生まれた。

自動化とICTで成果を上げたまるみ麹本店

「自然でおいしい麹や味噌を造りたい」親子2代で極めた画期的な自然醸造法

▲代表取締役社長・山辺 啓三氏

▲代表取締役社長・山辺 啓三

岡山県総社市のまるみ麹本店は1950年に麹屋として創業、現在は味噌や甘酒など麹をベースとした醸造食品の製造・販売をしています。

同社の麹作り事業は、1970年代初頭に大きな転換がありました。高度成長の陰で起きた環境破壊の影響で土壌や地下水が汚染され、おいしい味噌が造れなくなったのです。そこで「自然の力」を借りながら環境汚染などで劣化した水を中和し不純物を排除した結果、水や米のおいしさが戻り、麹菌の活力も高まりました。先代が考案したこうした製法を洗練し、水や原材料の処理から発酵までの全工程に応用したのが、大学で食品化学を学んだ代表取締役社長の山辺 啓三氏です。

「工場敷地全体に炭の粉を敷き詰め、醸造蔵は壁も天井も炭で覆う『炭蔵』にし、電子イオンの発生装置も取り付けています。原材料の有害物質を除き、自然の持つ力を引き出すことで、安全でおいしい麹や味噌を造れるようになりました」(山辺氏)


ICTの活用で取り組んだ製造工程の情報化と品質管理の自動化

山辺氏はこの製法に自信を深め、味噌、醤油だけでなく、甘酒、もろみ、出汁、酢など製品のラインナップを充実させる一方で、原材料の調達から製造、販売についてもICTを駆使して改良を重ねました。

まず第1段階は製品作りの工程を情報化することから始めました。品質を決定する麹の発酵工程で一番重要なのが温湿度の管理です。これまでは先代が長年の経験と勘で麹の状態を見ながら判断し、そのつど換気ファンを調整してきましたが、これではほかの従業員が作業できず、麹の専門家からも「品質にバラつきが出る」と指摘されました。そこで山辺氏は温湿度センサーと換気装置を連動させるように自動化しました。結果、誰もが管理できるようになり、麹の品質も安定しました。この仕組みは現在、センサーが異常値を検知した場合には、メールで通知される仕組みに進化しています。また5年前からは夜間監視システムを導入し、防犯対策を講じています。

「自然でおいしい商品に自信が持てるようになり、少しでも多くのお客さまに届けたいという思いが年々強くなりました。時代が健康志向になり、無添加・自然醸造の伝統食品を見直す方々が増えていることも追い風になっています」(山辺氏)


営業面とコミュニケーション強化にICTを活用して目ざましい成果

▲原料の力を高める自然醸造法

▲原料の力を高める自然醸造法

同社の取り組みの第2段階は営業面の強化でした。事業の伸びとともに、販路も直販・卸売・通販など多様化してきたのですが、メールやFAX、電話などの注文や問い合わせに対して、迅速・的確な対応が求められました。しかし、さまざまな伝票類と過去の対応履歴を参照しながら対応するには、人手が必要でした。そこでCTI(電話をコンピューターに統合したシステム)を導入し、人手を抑えて購買履歴などを確認しながらスピーディーな顧客対応ができるようにしたのです。また、これらの販売・出荷及び在庫などのデータ管理とその分析も強化しました。リピート注文をしてくれる重要顧客に新製品情報のチラシを送付したり、季節や口コミなどで変化する売れ筋商品をタイムリーに把握したのです。こうしたデータの管理や分析は、2017年からクラウドに移行し、システム会社と一緒に開発したアプリケーションを使用しています。

そして第3段階は、顧客とのコミュニケーション強化でした。言い換えれば「ファン作り」です。ブログやFacebookの活用は当然のことですが、同社はさらに踏み込んで、3年前から麹の知識、購入者のブログや応用料理のレシピなどをまとめて「麹コミュニティ」というサイトを設けたのです。自社商品のPRだけという同業者が多い中で、味噌の効用や身近なレシピを紹介するだけでなく、顧客もブログやレシピで気軽に参加できるサイトは、「味噌や麹の魅力を広くアピールしたい」という同社の姿勢を表しています。

「自分たちのメッセージがお客さまに届いていない感じがしていたので、3年前にホームページの写真や文章をすべて差し替えました。またFacebookでは、お客さまが商品や見学会の感想を書き込むなど、双方向のやり取りが増え、味噌や麹の熱心なファンが生まれています」(山辺氏)


大きな可能性を持つ日本の伝統食品 ICTを道具に今後も挑戦を続けたい

▲人気の麹甘酒

▲人気の麹甘酒

製造工程の情報化、営業力強化、顧客とのコミュニケーションとICT活用を戦略的に進めてきた結果、この3年間で売上は25%増、特にインターネット販売は43%増という目ざましい成果が生まれました。

山辺氏は、広い人脈を活かして専門分野の研究を連携して深めるとともに、ICTの最新技術やインターネット、スマートフォンを上手に活用するようになった消費者の動向に目配りを怠っていません。

「最近では、大手メディアだけでなく口コミサイトなどでも『甘麹』のことが話題になることが多く、健康や美容に関心を持つ人からの注文が増えています」(山辺氏)

またICTについてはこう語ります。「ICTによって製品作りや営業面の強化、コミュニケーション強化が図れました。今後も人にやさしい製造現場作りや、日本の伝統食品を通じて健康作りに寄与したい私たちの想いを、広く人々に知ってもらえる道具としてICTは必需品です」(山辺氏)


会社概要
有限会社まるみ麹本店
会社名
有限会社まるみ麹本店
創業
1950年(昭和25年)
所在地
岡山県総社市美袋1825-3
資本金
300万円
代表取締役社長
山辺 啓三
事業内容
味噌、甘酒など麹加工食品の製造販売
URL
http://marumikouji.jp/
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