売上アップ大作戦(東京地下鉄株式会社)

丸ノ内線6駅に電子看板
音が流せて既存CMの転用も

東京地下鉄株式会社

2009年10月、東京地下鉄株式会社(以下、東京メトロ)が、丸ノ内線の6駅にデジタルサイネージ(電子看板)を設置しました。天井にはスピーカーが埋め込まれ、ホームで電車を待つ人は、自宅のテレビのようにCF(コマーシャルフィルム)の映像や音声を体感できます。デジタルサイネージ導入の背景、広告効果などについて、東京メトロの藤村広葉氏と、株式会社メトロ アド エージェンシーの藤村圭介氏にお話を伺いました。

藤村 広葉氏

(話を伺った人)
東京地下鉄株式会社
事業開発部 広告担当
藤村 広葉(ふじむら ひろは)

藤村 圭介氏

株式会社メトロ アド エージェンシー
媒体本部 媒体管理局 駅メディア第1部
藤村 圭介(ふじむら けいすけ)

東京地下鉄株式会社
Data
東京地下鉄株式会社
代表取締役社長:奥 義光
所在地:東京都台東区東上野3-19-6
社員数:8,519名(2012年3月31日現在)
事業内容:旅客鉄道事業の運営など

細かな時間帯別出稿や臨時出稿に対応

 「きょうのお花見情報 もうすぐ見頃(5~7分咲き)」。
 2012年春、地下鉄丸ノ内線の銀座駅ホーム。線路を挟んだ向かい側の壁。電車を待つ人の目線の先で、巨大モニターが桜の開花情報を映し出しています。続いて、某ビールメーカーの発泡酒のCMが流れ始めました。ホームの天井からは軽快なCMソングが流れてきます。転落事故防止用のホームドアには、桜と発泡酒のラッピングが施されています。ビールメーカーによるキャンペーンが実施されていたのです。
 ビールメーカーのCMは、デジタルサイネージで流されました。デジタルサイネージとは「電子看板」のこと。今では普及が進み、駅や空港のコンコース(広場)などでよく見られます。デジタルサイネージは表示内容を小まめに切り替えることが可能で、静止画だけでなくCMのような動画も配信できます。
 東京メトロでは2009年10月から、デジタルサイネージを丸ノ内線の6駅に導入。各駅12台で計72台にも上る一連のシステムを「丸ノ内線ステーションビジョン」と名付け、関連会社の株式会社メトロ アド エージェンシーが広告枠の販売を始めました。
 「中づりポスターの掲出は最短2日、電飾ボードは1カ月です。広告主様から『もっと細かな時間帯別の出稿や、キャンペーンに合わせた臨時的な出稿をしたい』という要望が寄せられていました」と導入の経緯について、東京メトロの藤村広葉氏は説明します。例えば、午前中にコーヒー、午後にお茶、夜はアルコール飲料の広告を流すといった飲料メーカーの時間帯別出稿のニーズにも応えられるのです。

防じんに優れた訴求力ある65インチの大型モニター

 設置場所については、いくつかの候補の中から最終的にはホームに決まりました。15秒の動画を最初から最後まで見てもらうには、人々が同じ位置で待つホームが適しています。
 デジタルサイネージは、電車の乗降口の真正面に設置。ホームから線路を挟んだ先ですが、サイズは65インチで視認性は充分です。地下水や粉塵に見舞われるなど、ハードな環境に耐えるデジタルサイネージの開発には苦労があったといいます。指向性スピーカーはデジタルサイネージ本体とは分け、ホームに並ぶ人の真上に設置しました。
 また、地下鉄でのデジタルサイネージ設置は初の試みとなり、行政の許可が必要でした。「動画に気を取られて線路に転落、という事故があってはいけません。国や都との話し合いの結果、全駅にホームドアが設置済みの丸ノ内線が候補となったのです」とメトロ アド エージェンシーの藤村圭介氏は振り返ります。
 その中でも、ホーム向かい側にすぐ壁がある島式ホーム(上り下りの2軌道の間にある細長い島状のホーム)の駅で、かつ乗換駅やビジネス街にある6駅(東京、銀座、赤坂見附、新宿三丁目、新宿、中野坂上)への設置を決めました。

リアルタイムの情報更新で指数連動型広告に可能性

1日に25万人が利用する銀座駅。デジタルサイネージはホームドアの真正面に設置されており、天井にはスピーカーも付いている。音の大きさは60デシベル。指向性スピーカーのため、真下だとよく聞こえる。
1日に25万人が利用する銀座駅。デジタルサイネージはホームドアの真正面に設置されており、天井にはスピーカーも付いている。音の大きさは60デシベル。指向性スピーカーのため、真下だとよく聞こえる。

列車の遅延情報などは、改札脇などに置く専用のディスプレーで告知する。広告専用のデジタルサイネージとは完全に切り分けて運用している。
列車の遅延情報などは、改札脇などに置く専用のディスプレーで告知する。広告専用のデジタルサイネージとは完全に切り分けて運用している。

 東京メトロでは、モーニング(6:00~12:00)、デイ(12:00~18:00)、ナイト(18:00~23:00)と1日を3区分し、各時間帯で15秒×16枠(4分間)の映像を繰り返し放映しています。電車が駅構内に入ってきてから出て行くまでの間の音声は休止です。
 広告主の評判は上々です。音が出るデジタルサイネージは交通広告初。テレビCMを打っている大手企業が、CM素材をそのまま使うケースが多いのが特徴です。広告主としては余計なコストが発生せず、テレビCMと駅広告で一貫したメッセージを消費者に訴えられるというメリットがあるからです。
 音声が出る媒体ということで、出稿企業は飲料メーカーの他、放送局やエンターテインメント業界に多いとのこと。新作ドラマの放映開始、新曲の発売、新作映画の封切りなどに合わせた告知です。
 天気予報などの公共情報に続けて自社CMを流したり、長編CFを流したりする広告主もいます。
 「暑いときには冷たい飲み物、寒いときにはホットドリンクのCMを流すという展開も可能です。指数連動広告と呼ばれるもので、熱中症指数、花粉指数、洗濯指数など応用範囲は広がります」と藤村広葉氏。「これまで交通広告とはご縁があまりなかった業界へもアプローチしやすくなる」と藤村圭介氏も期待感をにじませます。
 好調にスタートした丸ノ内線ステーションビジョンですが、東日本大震災後の省エネの風潮により、広告出稿量はやや減少を余儀なくされました。しかし震災から1年半が経過し、徐々に出稿量は持ち直しています。「まずは丸ノ内線ステーションビジョンの売上げを震災前の水準に戻すことです。更には他の駅、他の路線へも広げていきたいですね」と藤村圭介氏は将来展望を語ってくれました。

 

●東京地下鉄株式会社
 http://www.tokyometro.jp/

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