ICTソリューション紹介

利用者本位のICTソリューションを導入し、既存事業者とサービスを差別化。業績拡大を実現

すでに成熟したと思われる産業でも、ICTの導入により競合他社に比べての優位性を高めることで、急成長する可能性は残されています。そうした事業者の一つ、創業から16年で全国に500を超える店舗網を築いたWASHハウス株式会社に、成長とICTとの関わりについて話を聞きました。

「利用率が低い業種」であれば、人口減少社会でも売上を維持

  • ▲代表取締役社長 児玉 康孝氏

    コインランドリーの企画、運営、管理を手がけるWASHハウス株式会社は、現在全国に直営店・フランチャイズチェーン店(FC店)を合わせ500を超える店舗を展開しています。

    「弊社は2001年、株式会社ケーディーエムとして設立され、翌年からコインランドリー店舗の出店を開始しました。2005年に現在の社名に変更、その後順調に事業を拡大し、2016年に東証マザーズ、福証Q-Boardに同時上場しています」(児玉氏)

    今後到来する少子高齢化社会、人口減少社会を念頭に事業分野を検討した児玉氏が、最終的に導き出した答えがコインランドリー事業でした。

「現在お客さまの利用率が高い業種であればあるほど、人口減で大きな影響を受けます。なぜならお客さま一人が使う金額が同一であると仮定すると、人口減がそのまま売上減に直結するからです。しかし利用率の低い業種は、その利用率を高めることで売上の維持、さらには拡大も可能です。弊社の起業当時、コインランドリーの利用率は3%と言われていました。これを6%にすれば人口が半減しても同じ規模の売上を維持できるのです」(児玉氏)

強力なライバルがいない業界に、全く新しいFC事業モデルで参入

さらに児玉氏がコインランドリー事業を有望視した理由はもう一つあります。それは現在、市場にいる競合他社の規模が小さく、またきちんと組織化されたFC店も存在していないことでした。

「コインランドリー事業は開業時に設備投資が必要で、その投資の6割から7割が償却資産となります。つまり1社で店舗網を広げていくと長期間にわたり発生する減価償却費が利益を圧迫します。そのため『キャッシュフロー上は黒字であるが決算上は赤字』という状態がずっと続き、事業継続が困難になります。それが多店舗展開できない大きな理由なのです。また、同じブランドを名乗るチェーン店的なものはありましたが、内実は同一の装置メーカーの製品を導入しているというだけで、個人商店の域を抜け出していなかったのです」(児玉氏)

こうして同社は、全く新しいFC事業モデルでコインランドリー事業に進出しました。

「先に述べた減価償却費の問題から、多店舗展開するにはFCというオフバランス化(貸借対照表に計上されない)が必須でした。しかし、従来のFC事業モデルでは本部と加盟店が対立するという構造的な欠陥があったため、それを解決するために、店舗管理、広告宣伝活動などはすべて本部が請け負う仕組みを採用しました。つまりFCオーナーの仕事をすべてWASHハウスが代行することで、一般のFCで起こりがちな『オーナーに能力がないから売上が伸びない』『本部の指導が悪いから売上が伸びない』という本部とオーナーの対立が起こらないFC事業を創出したのです」(児玉氏)

ビジネスモデル特許を取得した、機器の遠隔操作とウェブカメラで無人店のデメリットを解消

そして利用者に向けての大きな訴求点として取り入れたのが、ICTによるサポートでした。

「参入した当時、一般的なコインランドリー事業のユーザーサービスは、他業種の水準とはかけ離れたところにありました。店舗は無人で『機械が動かない、洗濯物が取り出せない』といったトラブルへの対応も『翌営業日に』が当たり前で、そもそもサービス業として求められるクオリティを満たしていなかったのです」(児玉氏)

同社はそうした“悪習”を断ち切るため、まず二つの仕組みを導入しました。

  • 「一つ目が遠隔操作できる機器の設置です。これはメーカーに要望を伝え、電話回線経由で再起動ができる機器を開発してもらいました。これで『料金を入れたのに動かない』というトラブルも、遠隔で機器を再起動し、課金した状態を設定しお客さまにご利用いただくことで解決できるようになりました。もう一つがインターネットを使ったウェブカメラの導入です。当時の回線はADSLで、ウェブカメラの画質も現在よりずっと低いものでしたが、それでも本部から各店舗の状況が確認できるようになりました」(児玉氏)

    そしてこれらのICTは、その後の技術の進展とともに、さらに中身を充実させています。

    今後到来する少子高齢化社会、人口減少社会を念頭に事業分野を検討した児玉氏が、最終的に導き出した答えがコインランドリー事業でした。

「現在は全店舗に双方向で音声通話も可能なウェブカメラシステムを導入し、ここ宮崎市の本部から一括管理しています。各店舗に複数台設置したウェブカメラは高精細なもので、洗濯表示タグを読みとることもできます。お客さまが困っている様子ならば、お声がけして直接お話しし、困りごとを解決できます。また夜間でも常に監理を続けることで、防犯効果もあります。つまりここ本部がお客さまに対応するための目となり、あたかも店舗にスタッフがいるかのようなサービスが実現できるのです。この組合せでビジネスモデル特許を取得しており、これは競合他社に比べ大きな優位点だと思います」(児玉氏)

本当にお客さまのためになるICTソリューションを選別導入 将来は海外展開も

最後に児玉氏に、今後のさらなるICT導入の意向、事業の将来像をうかがいました。

「弊社はこれまでに蓄積したデータにより、『この場所に出店すれば、どれくらいの売上が見込める』という確かなシミュレーションを可能としています。このデータを武器に、新たなオーナーの投資を促し、国内展開を進めていきたいと思います。また弊社のICTによるお客さまサポートは、ADSLによるウェブカメラから双方向のビデオ通信システムまで発展してきましたが、ICTと名がつくものであれば何でも導入してきたわけではありません。例えば『洗濯終了時のメール通知機能』を持つ機器もありますが、実際にはお客さまは『何分後に終わるか』を確認して機器の前を離れるわけですから、そうした機能にはこだわりませんでした。逆に機器の価格上昇、さらにはお客さまの個人情報を管理するコストなど、ムダな経費の原因になってしまうのです。今後もそうした姿勢を堅持し、お客さまの役に立つICTソリューションを見極め、導入していきたいと思います。そして近い将来には、海外への出店も視野に入れています。洗濯というのは世界中どこでも行われている人間の活動であり、発展途上国から先進国へ成長する途上の国々では大きな潜在的ニーズがあると思っているからです」(児玉氏)

WASHハウスのこうした取り組みと成長は、すでに成熟したと思われる産業へのICT導入に、大きなヒントとなるのではないでしょうか。

会社名 WASHハウス株式会社
設立 2001年(平成13年)11月28日
本社所在地 宮崎県宮崎市新栄町86番地1
代表取締役社長 児玉 康孝
資本金 9億9445万8千円(2018年9月末現在)
事業内容 遠隔管理型コインランドリー店舗の企画・開発・運営事業
URL https://www.wash-house.jp/

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