中小企業診断士から見たICT経営 Vol.52

クラウド型業務パッケージソフトという選択肢

渡邊 学氏 渡邊 学氏製造業に勤務し、品質管理・生産技術などを経て、中小製造業の工場長としてマネジメントに従事。自ら中小企業にて蓄積した実体験を活かし、企業密着型のコンサルティングを行う。

従来型業務パッケージソフトの問題点

販売管理や生産管理などの基幹業務システムにおいて、従来型の業務パッケージソフトでは、下記など様々な問題がありました。

  • サーバ導入等で多額の初期費用が発生する
  • 機器やシステムの操作に専門知識が必要である
  • 機器やアプリケーションに定期的な更新が必要になる

しかしこれらの問題は、クラウド型の業務パッケージソフトを使用することで解決できる可能性があります。

乗り換えの決断に迫られたA社の事例

A社は中小規模の製造業です。多くの部品は製品在庫を持つことで短納期対応をしています。

A社は販売管理・在庫管理・生産管理のために業務パッケージソフトを導入して運用していましたが、Windows XPのサポート終了に伴い、ある決断に迫られました。使用していた業務パッケージソフトは約10年前に導入したもので、Windows XPまでしか対応していなかったのです。

さらにサーバの保守期間が切れてしまい、サーバの買い替えも同時に迫られました。こうして、サーバの買い替え、アプリケーションの問題、そしてクライアントPCの入れ替えと、多額の費用が発生する事態になってしまったのです。

クラウド型業務パッケージソフトを検討

システムの入れ替えとなると、乗り換えコストが発生してしまいますが、目先に発生する機器費用と今後も定期的に発生する機器の入れ替えなどを視野に入れて、下記を比較して総合的に判断することにしました。

①現行ソフトのバージョンアップ
②低価格な他社製の既存型ソフト
③クラウド型ソフト

A社が導入候補にしたクラウド型業務パッケージソフトはイエロー・スパローズ株式会社が提供する、『クラウドシート』というソフトでした。

『クラウドシート』の概要とA社の判断

『クラウドシート』はExcelベースの業務パッケージソフトです。あらかじめ販売管理(見積書、納品書、請求書)と購買管理(発注書、受領書、検収書)を標準装備していてすぐに活用できるほか、従来使っているExcelファイルを簡単な操作で登録することが出来ます。

登録したデータはデータベース化され、通常のExcelと同じように分析やグラフ化が可能です。クラウド型ですので、サーバなどのインフラ整備は不要、システム運用のための専門スタッフも必要ありません。またデータベースはクラウドサーバに保管されていますので、ネット環境があるPCさえあれば、遠隔地や営業先からのアクセスも可能です。

結果的にA社は、部品点数の多さと受注形態の複雑さなどから、導入には至らず、「②低価格な他社製の既存型ソフト」を選択したそうです。しかしながら、検討に値するだけの魅力が、クラウドサービスにはあります。

▲クラウド型業務パッケージソフト


『クラウドシート』の導入事例

クラウドサービスである『クラウドシート』は、小~中規模の企業に適したシステムです。A社は導入を見送ることにしましたが、導入した他社の事例と、それぞれの企業における活用方法をご紹介します。

・商社(従業員10名)
従来Excelで利用していた伝票類をそのままシステムに置き換え、共有化と集計のスピードアップで業務を効率化。

・サービス業(従業員5名)
外出先で見積作成、営業日報入力、売上確認などが可能となり、外出先にいながらオフィスと変わらない仕事が出来るように。

・小売店(全国に70店舗のチェーン店)
店舗追加や店舗移設時のシステム追加が容易に。

・製造業(従業員50名)
営業部門が生産部門へ作業指示を発行することで情報統一が可能になるとともに納期短縮を実現。

上記のように、基幹システムはアイデア次第で、サブシステムとしても活用が可能です。

クラウド型ソフトの課題

これまでクラウド型ソフトのメリットを中心に書いてきましたが、当然ながらデメリットも存在します。

①ネットワーク障害や通信が不安定な場所ではシステムの運用が出来ない
 ②クラウド提供側の都合によるサービス停止の可能性
 ③トラブルによりデータ消失の恐れがある

特に③のデータ消失については、そういった事故の発生時に被害を最小限にとどめるためにも、データベースを自社にバックアップしておくなどの対策は必須です。

クラウドサービスを「とりあえず」使ってみる

クラウド型ソフトは、初期投資が無料、または限りなく低いことが魅力の一つです。「おためし無料期間」があるものも多くありますので、中小企業は、その機動力を活かして「とりあえず使ってみる」のも良いでしょう。

そしてもし業務改善につながりそうであれば、継続運用してみてはいかがでしょうか。

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