ITコーディネータが考える「使えるICT」特別編

2018年のICT動向 —研究から実証・実現へ—

井門 良貴氏井門 良貴氏株式会社ウィルコ代表取締役。第1号ITコーディネータとして制度設立に関わる。東京大学法学部卒業。日本IBM在籍後、独立系コンサルタントとして活動。あらゆる業種の大企業から中小企業の経営改革に関わってきた。

2018年のICTの動向は、昨年に引き続きIoT※1、ビッグデータ※2、AI※3、ロボティクス※4が主要なテーマであり、大きな流れとしては、アイデアの段階からより実用的なフェーズに移行するものと思われます。昨年の経産省の展望でも「第4次産業革命」と呼ぶこの四つを重要なキーワードとして挙げましたが、ベンダーがこれら技術革新をより大規模に展開するための提携や合併などを繰り返したのが2017年の大きな業界傾向でした。

今年のICT動向を予想するにあたり、これらのトピックがどのように展開していくのか、ICTソリュ-ション、ICTガバナンスの双方から概説させていただきます。

1.ICTソリューション

❶ アプリケーション(適用業務)

2018年は、製造、販売、ロジスティクス、顧客管理、財務管理など一般的な業務アプリケーションのSaaS※5への移行がますます進むことになるでしょう。これには、業務単位(例えば顧客管理のみ)に特化したサービスとERP※6的な統合業務サービスの双方が存在します。とりあえず社内の名刺管理だけしたい企業は前者を、業務の統合やBPR※7を志向する会社は後者を選択することになります。

ここで活用される要素技術の中心はAIになるはずです。驚くほど多くのサービサー(提供事業者)がAIオプションの導入を急いでいます。これらの安価なサービスを活用することにより、特に中小企業にとって大きな問題である人手不足や働き方改革の解決の可能性がより大きくなると思われます。

IoTやAIなどの新技術の適用分野として特に注目されるのは、社会インフラ系の業務です。中でもエネルギー不足を解決するためのパワーグリッド(再生可能エネルギー)は、スマートメーターのようなIoT機器とビッグデータ抜きでは存在し得ません。AIの活用によるエネルギーバランスの維持も実用化の目途が立ちつつあります。また、熟練工の激減する中で、トンネル、道路、橋梁などの公共施設の老朽化に対応するためにドローンのようなロボット技術の活用が実証研究から実用段階に移行していくことになるでしょう。

❷ インフラ

2017年後半よりCPU(中央処理装置)やGPU(演算処理を行うビデオチップ)の性能の爆発的拡張が行なわれています。特にGPUは深層学習に直結する要素技術としてAIの実用化にインパクトを持ちます。

ただ、これは、自前の強力なサーバーを企業が保有することを意味するのではなく、IaaS※8やPaaS※9の環境強化によってインフラ環境の外部化を推進することになるでしょう。すべての企業にとって共通の課題である運用コストの低減と、大規模アプリケーションのクラウド環境による実現の両立が可能になるからです。パソコンの開発製造を行なう大規模ベンダーのビジネス統合が行われているのも、インフラのリテール展開が縮小する傾向を証明するものと考えられます。

2.ICTガバナンス

2017年は、ランサムウェア※10の猛威が吹き荒れた1年でした。セキュリティ対策に関してもAIの応用が進んでいますが2018年はこの傾向が強まるでしょう。

また、消費税の10%へのUPや元号変更の前年ということで、企業の業務システム上の大きな対応が必要になることも予想され、システム運用上の大きな対応が必要な2018年になりそうです。

以上のように、2018年も昨年から引き続きICTソリューションの導入が本格化するとともに、中小企業がICT経営をより手軽に活用できる環境、実現しやすい条件が整うといえます。「うちの会社の規模じゃ…」という言い訳がきかない時代になるのです。


  1. ※1 IoT:Internet of Thingsの略。さまざまな「モノ」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み。
  2. ※2 ビッグデータ(Big data):ICTの進展により生成・収集・蓄積などが可能になった多種多量のデータのこと。
  3. ※3 AI:Artificial Intelligenceの略。人工的にコンピューター上で人間と同様の知能を実現させようという基礎技術。
  4. ※4 ロボティクス:ロボット工学のことで、ロボットに関連したさまざまな科学研究の総称。
  5. ※5 SaaS:Software as a Serviceの略。必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるクラウドアプリケーション。
  6. ※6 ERP:Enterprise Resource Planningの略。企業経営の基本となる資源要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を適切に分配し有効活用する計画や考え方。
  7. ※7 BPR:Business Process Re-engineeringの略。企業活動の目標を達成するために、既存の業務、フロー、組織などを全面的に見直し、再設計すること。
  8. ※8 IaaS:Infrastructure as a Serviceの略。情報システムの稼動に必要な仮想サーバーをはじめとした機材やネットワークなどインフラをインターネット上のサービスとして提供する形態のこと。
  9. ※9 PaaS:Platform as a Serviceの略。ソフトウェアを構築および稼動させるための土台となるプラットフォームを、インターネット経由のサービスとして提供するサービス。
  10. ※10 ランサムウェア:感染したパソコンをロックしたりファイルを暗号化したりすることによって使用不能にしたのち、元に戻すことと引き換えに「身代金」を要求する不正プログラム。
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